塩山→(国道411)裂石 |
峠から森の尾根を少し進み、黄金沢尾根への分岐にある小屋の遺構で大休止することにした。草の上に腰掛けてお湯を沸かし、必殺のインスタントラーメンやパックのドリップコーヒーを食べたり飲んだりするのは実に楽しい。雲で一杯だった空の中も、少しずつ明るくなっている。昼寝してから出発するのも悪くないかもしれない。
等と甘い希望を抱いていると、ちょうどコーヒーを沸かし始める辺りから再び雲が押し寄せて、風が無いのが幸いではあるぐらいに周囲は薄暗く寒くなってきた。そそくさと火器を畳み、12:30、石丸峠発。二つに分かれた行く手、正面の森の中へと下ってゆく牛の寝方面へ向かう。
しばらく木の根がぼこぼこしたり岩が多かったりするので、さっさと降りて自転車を押す。時々担ぎを要する場所もあるが、所々で乗って下れたりもする。
つづら折れで森の中を急降下すると、やがて斜度が一段落し、のんびりと乗車して下れる尾根道が森の中に続く。その後、このパターンが2回ほど続いた。尾根道の区間は次第に長くなり、斜度も緩くなって、のんびりリラックスして下れるようになった。
大菩薩入山禁止という噂が幸いしてと言うべきか、静かな薄暗い森の尾根道には今日は誰もいない。道自体も過去の訪問の中で一番安定しているように思えた。かさかさと適度に柔らかい土の音が楽しい。
下ると共に雲も薄くなってきたようで、所々で木漏れ陽が森の中に射してきていた。広葉樹林主体の森は、途中でブナ主体の森になったりもした。秋になってもまだ新緑のような青みの強い葉、青みがかった木漏れ陽に照らされた道は何とも言い難いほど素晴らしい。
と思っていると、ふと紅葉しかけた枝を見つけたりもする。
だいぶ下った辺り、ちょうど中間地点というか、尾根周りの木々が伐採されているため、急に50mぐらい開ける場所がある。その広場のような尾根に、細い道が1本手前の森から行く手の森へと吸い込まれるように続く。まるで空の中にいるような気分が楽しく、いつもここで休憩することにしている。
ここの正面には大月から登る大峠が見える。この大峠の松姫峠側は、鬱蒼とした森の中の岩場に張り付く激下りでとても雰囲気がいい。しかし、大崩落でもう長いこと通行止めになっている。
大峠には、何年か前に乗鞍練習会兼ツーリング会というのがあって、何回か連れていってもらったことがある。夏の暑い登りだったが、標高の高い大峠には涼しい風が吹いていて、天国のようだった。正面の雲っぽい空の逆光の中、凹んだシルエットの大峠を眺めながら、そんなことをしばらく思い出していた。
尾根道はそこから更にしばらく続いた。多少アップダウンを伴う山道をひたすら進む。
小菅村へ直接下る分岐を過ぎ、大マテイ山への押しが終わり、記憶通り道とそれ以外の斜面がが判別しにくくなる辺りや植林の杉の区間を過ぎると、間もなく下の方からエンジン音が聞こえてきた。いよいよ国道139が近づいてきたのだ。
15:05、ようやく松姫峠着。山道が終わり、ここからようやく普通の道路になる。
バイクがたむろする峠にはあまり長居せずに、とっとと下り始める。標高差約600mはボリューム的にも視覚的にもなかなか下りでがある。開けた斜面をダイナミックに巻きながら、見下ろしていた遠くの山々がやがて正面に降り、それらを見上げるようになると、ようやく小菅村の集落が見えてきた。
15:30、村営小菅温泉着。小菅村から奥多摩までいつも約1時間掛かるので、風呂に入る時間は30分しかない。しかしのぼせやすい体質の私は、5分も風呂に入るともう一杯一杯になってしまうのだ。そういうわけで温泉自体は普通に浸かって30分で全然問題無い。しかし、なかなか美味しそうな蕎麦や川魚料理を食べる時間までは無いのがつらいところではある。
16:00、小菅温泉発。山の間を下って行くと、奥多摩湖に出た。多少交通量は多いが、奥多摩まで後少し。
奥多摩湖を通過し、道が下り始めダムを見上げる少し先辺りから、奥多摩むかし道へと入る。※参考
これがっ!奥多摩むかし道だっ!
取付で谷底の多摩川まで一気に下り、その後は多摩川に比較的近い高さでとろとろと下る。頭上に大きく張り出した木々、苔生した岩の壁、狭い道に張り付く小さな集落。交通量もほとんど無く、上の方を走る殺風景な国道411とは全く異なる表情の道だ。というより、15年以上前の国道411、丹波山村辺りの風景を思い出させてくれる。こっちは小河内ダム建設以前の青梅街道、あっちも同じく拡幅前の青梅街道なので、ある程度道の雰囲気が似るのは当然のことなのだろう。
境で国道411に合流、一気に下って17:00、奥多摩着。この季節、17時ともなればもうすっかり夕方で、輪行中に周囲は次第に薄暗くなっていった。
記 2003.10/2
Last Update 2003.10/9