平岡

仙流荘

黒河内

分杭峠

大河原

地蔵峠

しらびそ峠

しらびそ山荘

下栗山荘

上島

下市場

赤は本日の経路 灰色は過去経路

2002.4/20 「高遠の桜」アプローチ

平岡→(国道418)下市場
→(国道152)上島
→(村道・御池山林道)地蔵峠
→(国道152)黒河内
→(黒河内林道)仙流荘
96km

下栗山荘前 南アルプスを望む

 寝て起きると、飯田線は山間に突入していた。曇りではあるが、新緑の明るい黄緑色が瑞々しい。雨雲が通過した直後のようで、道路や草むらは濡れており、天気が心配になった。が、辛うじて雨は降っていないようではあった。
 20年前にも飯田線に乗ったことがあったが、その時と風景はほとんど変わっていないようなのが凄い。山間のローカル線なのに、飯田線は異常なほど駅間が短い。短い駅ごとに展開する沿線の里山風景がまた素晴らしい。一斉に咲いた山の花に鮮やかな新緑、雨に濡れて鬱蒼とした感じの山々や増水して勢いがいい川の流れ…短いトンネルや鉄橋、小さな無人駅が次々と入れ替わり現れる。電車が北上して山が深くなるごとに、沿線の山深い印象はますます強くなり、森や小さな里の間を電車は鉄道模型のようにくねくね抜けていった。
 佐久間を通過すると、沿線風景は更に山深くなった。

 途中、死にそうな顔をして、びしょぬれの自転車ウェアの人が乗り込んできた。Isoさんだった。何でも早朝走り始めたのが、途中で雨に降られ、通行止めに行く手を阻まれたとのこと。電車の中から見上げる空は次第に明るくなっているようではあったが、ちょっと先が思いやられる。が、去年通った秋葉街道が新緑で覆われるのを、絶対に見たい。そのために豊橋前泊までしたのだ。
 結局、そのまま市田まで行くというIsoさんを列車に残し、飯田線を降りた。

 8:50、平岡発。
 平岡の町はダムで拡がった川と山に挟まれ、国道とは思えない狭さの国道418沿いにびっしりと民家が軒を接して仲良く並ぶ。いかにも山間の町という雰囲気で、町なかをゆっくり走るのがとても楽しい。こんな町や、小さな里や湖沿いの細い道や、1日じゅう飯田線沿線のこんな風景をつないで走っても、とても楽しいのではないか。
 路面は雨が通過したばかりのように濡れていて、「頼むから今日は降らないでくれーっ!」と思った。
 短いトンネルを抜けると、いきなり道は更に狭く林道のようになった。頭上に被るように生い茂った新緑が瑞々しい。空も思いがけず急に明るくなってきたようだった。

下市場  

 遠山川の山間の河原沿いに、広くなったり狭くなったり、高度を上げて集落の中を抜けたりという道が続く。河原の白い石に、まだあまり茂っていない新緑の明るい緑が鮮やかで、何ともいい気分だ。集落に入ると、新緑の色と一気に開いた様々な山の花が出迎えてくれた。民家や木造の小学校、黒ずんだ集落の建物が、緑に覆い尽くされつつあった。
 谷は多少開けたり狭くなったり、足にも坂を感じるようになって間もなく下市場着。国道152と合流する。ここから、去年秋葉街道オフで通った道をほぼ逆行することになる。遠山の町中から、これから向かう急斜面の集落に、見事に重なったつづら折れがよく見えた。これからあそこへ向かうのだ。ボリュームがわかっているだけに、気が楽っちゃあ楽ではある。

 遠山郷の町を抜け遠山川を少し遡って、9:50、上島着。旧道と上島トンネルの合流地点が、しらびそ高原への登り口である。普通は鋼材で作るはずの橋のトラスまでコンクリートで造ってある古い橋に、見覚えがあった。

 登り口からはしばらく10%かそれ以上の激坂が杉林の中に続く。昨秋に下ったときには「登りたくねえなあ、こんな坂」とか思っていたはずだが。間もなく急斜面に開けた集落の中、細いつづら折れが見事なほど連続するのは、さっき遠山郷から見たとおりだ。集落・茶畑・杉林が入れ替わり現れ、相変わらず激坂が続くが、今日は遅くても誰に迷惑をかけるわけではない。
 畑や周りの林には新緑が溢れ、農家の庭先には桜や梅、芝桜にいろいろな草花が一斉に咲いている。道ばたの分岐や曲がり角など、楽しくてつい写真を撮ってしまう。自転車で登っていると、農家の方が声を掛けてきてくれて、そういうお話がまた楽しい。
 周囲が開けると、もう谷間からは300mぐらいは登っているようだった。右側の遠山川の谷間が真下に見下ろせ、さっきの遠山の町が小さく見えた。

下屋敷 下屋敷 ニューサイ写真 遠山方面を見下ろす 深い谷間

 下中根・上中根と相変わらず激坂が続き、御池山林道と合流。辺りの春爛漫の景色は、標高が上がると共に季節が逆行したのか、いつの間にか早春の景色に変わっていた。
 11:00、下栗山荘着。ここには展望台があり、もはや標高差500m程になっている遠山川の谷を挟んで、正面の間近な山々の壁や、その向こうの南アルプスを眺めることができる。周囲は急斜面の畑に農家が点在しており、開けた斜面の畑の中に、民家までの細い1本道が取り付いている。急斜面と農家、その向こうの空の中に南アルプスの黒い山肌と白い残雪が見えた。それはまるで写真でよく見かけるスイスの風景のようで、ツーリングマップルの「日本のチロル」というキャプションを思い出した。
 山荘には蕎麦屋が併設されていたが、あまりここでのんびりするわけにはいかない。水を飲んでおにぎりを食べながら、そそくさと出発。

ほんとにチロルみたい 集落を見下ろす 谷底が見えない急斜面

 そこから先は去年の秋の記憶通り、尾根道まで標高差500mぐらい、今までを更に上回る斜度のコンクリート舗装の激坂が続いた。標高が上がると空の雲は厚くなり、尾根道に出る頃には太陽が完全に姿を消し、急に気温が下がった。杉林はいつの間にかカラマツに変わり、木々も冬の装いである。
 標高差1000m以上もの遠山川の谷を挟んで、尾根の右側真正面間近とその奥に立ちはだかる南アルプスの山々は、もう見物としか言いようがない姿を見せてくれていた。正面の山々は間近にくっきり見えるが、遠くの方、残雪の高山は上の方が雲に覆われている。しかし、眼下の果てしなく深い谷、周囲の稜線を横に眺める空を駈けるような尾根道、これ程のダイナミックな風景の中を走れる喜び!

 激坂というほどではなかったが、開けた尾根道は、登り基調で山肌を忠実にトレースしながら長い間続いた。「あそこまで行くのか」と行く手を見上げ、その一番奥にたどり着いて山肌を回り込むと、また「あそこまで行くのか」というようなのが3回ぐらいあって、尾根道の坂が緩くなったころ、突然視界の中にしらびそ山荘が現れた。しらびそ峠はそこから下ったところにあるので、あれが今日の最高地点である。
 12:45、しらびそ山荘着。登りの発汗にも係わらず、大分身体が冷えている。山荘で昼食にすることにした。ちょっと高かったが、猪鍋がうまい。

 13:25、しらびそ山荘発。
 急下りで少し標高を下げ、今まで通ってきた東側尾根から西側尾根に移る。西側の山々は今まで眺めてきた東側と同じぐらいか、少し低い山が多い。今までの尾根道からの展望程ではないが、こっちの谷もかなり深く、眼下へ落ち込んでいる。谷を挟んで間近に見える山肌は、桜や新緑のいろいろな色が斑になっていて、
春らしく彩り鮮やかだ。
 カラマツ林の中、ちょっとの登り返しの他、ひたすら下りが続いた。地蔵峠を通過して、まだまだ下る。つづら折れが終わって青木川の河原に出て、ようやく斜度が少しは緩くなったものの、更に下りは続いた。開けた河原の砂利は白く、灌木帯の新緑とのコントラストが何とも高原の川らしい。河原沿いの林の細い道全体が、カラマツの新緑を通過した光に包まれていて、とても楽しい。
 谷間、畑、田圃の中を道は果てしなく下り続けた。さすがは標高差1250m、下りでがある。辺りの風景が、再び春一色の里という感じになり、間もなく14:20、大鹿村下市場着。
 今まで下ってきた青木川と、東側、南アルプスの奥から流れてくる小渋川の合流点で、秋葉街道で何度かみかけるコンクリート橋を渡る。右手の小渋川の谷が開けて、空の中に南アルプスの高山が立ちはだかっているのが見えた。秋葉街道らしさを実感できる瞬間だ。

大鹿村に降りてだいぶ拡がってきた青木川

 大鹿村の谷は、中央構造線上にできたそう広くない平地上にあり、両側は標高差1000m以下ぐらいの山に挟まれている。谷間は南北の直線上に続き、中央の落合に向かって川が流れ込む。適度な広さの平地の照り返しか、両側の山肌は意外な明るい印象があり、南アルプスの山から続く清らかさなのか、水も空気も何か透明な気がする。薄曇りよりもやや濃い曇りで、すかっとしない天気だったが、去年の秋に見た里の佇まいは相変わらずだ。桜や梅、いろいろな春の花に、新緑が彩りを添えていた。

大鹿村の集落 花一杯というほどではない

 町が終わり、再び鹿塩川沿いを遡り始める。谷が次第に狭くなり、畑や集落の間に森が目立ち始め、だらだら坂の先の方が急になっているのが見えてきた。
 だいぶ進んだころ、右側に、去年の秋にCASATIさんから教えてもらった神社が現れた。小さな広場に神社と碑、それに中程度の桜が1本。何とも程良い佇まいで、特に何か著名な名所ではないのだが、秋葉街道でのCASATIさんのお気に入りポイントなのだそうだ。先客の松本ナンバーが2台停まっていて、バランスの良い神社と桜の取り合わせを気に入っている人は少なくないのだと思った。
 ここでちょっと休憩。

地蔵峠へ向かう 神社で休憩 神社の桜

 16:20、分杭峠着。GAMIさんのHPの表紙にもなった、「高遠領」と書かれた丸太の道標を確認する。
 眼下を下ってゆく新緑の谷の先に、長谷村の拡がりが、大鹿村と同じように山に挟まれているのが見えた。開けた谷の景色に、今日の行程の終わりが実感される。薄い影ができるぐらいに雲の上からは薄日が射していて、周囲はまだまだ明るい。が、気温はそう高くない。景色はいいが、あまりだらだらする気分でもなかった。

 新緑の渓谷を下りに任せて進むと、峠から見下ろしたとおりに河原が拡がって里になり、一之瀬の町に到着。小学校の脇で下り防寒用のウインドブレーカーを脱いでいると、校庭の小学生が集まってきた。手を振って再び出発。

 新緑に包まれたような小黒沢林道を少し逆行し、17:00、仙流荘着。CASATIさんに会うと、真っ先に例の分杭峠の桜の話が出た。

 翌朝は黒河内林道を遡り、青柳から清里・川上村へと抜け、三国峠から西武秩父へ向かうつもりだった。
 しかし、せっかく早起きしたのに、雨が降ってきた。結局、宿のマイクロバス輪行で伊那市へ向かい、そのまま帰路に。

記 2002.4/25

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Last Update 2003.7/19
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