丸山千枚田→(県道765)板屋
→(県道780)日足
→(県道44)小麦
→(県道45)篭
→(県道43)川口
→(県道38)上地
→(国道371)高富
→(国道42)潮岬西入口
→(県道41)潮岬
→(県道41・国道42)串本
116km
小川
潮岬
串本
川口
坂足
篭
小麦
滝本
小口
日足
板屋
丸山
今朝も曇りだ。それどころか、気が付くと小雨が降り出した。6:00のニュースで降水確率は10%/10%。和歌山県南部は晴れである。何かを間違えている。
早出をすると無理を言って、早く作ってもらった朝食のお米に鰺の干物がうまい。さすがは千枚田。いや、千枚田のお米ではないかもしれないが、今回のツーリングでは山間の農村によく田圃を見かける。農作物としては主要作物と言えるのではないか。昨日の運ちゃんも言っていた。他はお茶だそうだ。
今日は東京に帰らないといけない。行程としては今日本州最南端の潮岬まで行ければ、紀伊半島縦断コースとしてまとまりはいい。通りたい道もあった。熊野川から山間の渓谷だけを通って潮岬の付け根の串本近くへ南下する、県道44・45・43に目を付けていた。地図で見て、絶対に楽しそうだという確信があった。
しかし、昨日のミスで、自分の読みに自信が無くなっていた。
悩んだが、地図で見た感じの細道の魅力には抗し難いものがあった。串本か手前の古座に15:00過ぎに着ければ、新大阪19時ぐらいの新幹線に乗ることはできる。それをタイムリミットと決めた。遅れそうだったら那智勝浦や古座へショートカットするしかない。いくら何でも古座には15時には着くだろう。
朝食を食べる間に、雨が一応やんだ。天気を心配しながら、7:10、丸山千枚田荘発。板屋まで昨日と同じ道を下る。昨日田植えが終わったのか、泥水から黄緑色の稲の苗が、細く弱々しく顔を出していた。秋にはきっと垂れ下がるほど穂が実るのだろう。
板屋の町外れから県道780で山の裾野へ少し登り、熊野川へ向かう。例によって杉林の中のけっこうな激坂が続く。雨の合間のように路面はしっとりと濡れていて、何だか先が思いやられた。
8:10、日足着。昨日も通った熊野川町役場の前を通る。昨日も通った…と町役場の近くまで来て、今まで全く気が付いていなかったことにふと気が付いた。昨夜の電話にツーリングマップルがあるに違いないのだ。
果たして、思った通りにツーリングマップルと再会できた。等高線が荒いのでメイン地図は何が何でも絶対に国土地理院1/5万だと思うが、いろいろな文字情報が載っているツーリングマップルは、サブ地図としてなかなか重宝しているのだ。
次第に狭くなる赤木川の谷を、ほとんどフラットな県道44で遡り、8:30、小口着。見込みより30分ほど稼いでいる。朝のこの段階で30分稼いでいる、ということはなかなか幸先がいい。まあこれからが山の区間なのだが。
小口を出ると、県道44は小口川を遡る。いきなり山深い雰囲気になり、狭い道・切り立った山・透明な渓流という、今回のツーリングでのおきまりのパターンが続く。が、道の狭さ・迫る岩山・渓流の透明度など、今回のツーリングでも最高レベルの渓谷だった。
山の鳥の声が響く道を進んでゆくと、石ころの河原を猿が何匹か逃げてゆくのも見えた。鬱蒼とした杉林や新緑の森の中、渓流沿いの道は何度も蛇行した。幅3mぐらいしかない直角カーブの片側が切り立った岩山で、反対はガードレールが無く、道の縁の5mぐらい下が青々とした淵になっている、なんてちょっと怖い場所もあった。路面が濡れているので、スリップして落ちると一発でツーリング終了である。
突然激坂が始まった。まあこの辺では当たり前のパターンで、またかという感じではある。小口川の谷間から、断続する鎌塚の集落の中をぐいぐい登ってゆく。登り切って稜線を越えてから、何故か再び下って小口川と合流。10:20、滝本着。山間のちょっとした平地に田圃や畑がひろがる滝本でも、やはり田植えが真っ盛りである。滝本は同じ小口川沿いに拡がる集落だが、なぜか小口川沿いには破線の山道があるだけで、県道は一度わざわざ山を登って下るのだ。
滝本の先から再び激坂登りとなる。
見上げる山の中腹に法面補強のモルタルが見えた。「あそこまで行くぞ」という気が失せるぐらいかなり上の方に見えるのだが、やはり激坂を登るうちにあっさりそこを通過した。それどころか、登り続けるうちにその箇所を遙かに見下ろすぐらいの場所まで登ってしまっていた。
峠道から見渡す新緑の山々は、そう高くはないが起伏が激しく、山々に拡がる樹海はどこまでも深い。
尾根を回り込むと登りが緩くなり、すぐに杉林に突入した。
杉林の中、小麦・樫原と、まるで単純にダブルトラックの山道を舗装したのではないかと言うぐらい細い道が、中腹の等高線に沿った緩い登りで延々と続く。感覚としてはまさにハイキング道ぐらいの山道に近いが、時々現れる県道標識でこの道が県道であることが思い出される。路面はすでにもう乾いていたが、幅2.5mぐらいの路面状態はぼろぼろ継ぎはぎアスファルトで、中央には杉の枯れ葉も溜まっており、スリップがこわい。
道の脇には時々唐突に杉林が開けて一軒屋が現れる。昔から林業を営んできた家なのか、まさか猟師の家なのか。山の斜面自体は急なので、杉林の向こうにちらちら空とこの辺の山並みが見渡せる。そうかと思うと斜面が緩い部分なのか、鬱蒼とした杉林の中の箇所もあって、地図で見て想像していたとおりのとても楽しい道だ。
道が下りだし、間もなく前方が突然開け、分岐の標識が見えた。11:10、篭着。那智勝浦へ向かう県道44・45と別れ、今度は県道43に乗って南下する。再び入り組んだ等高線に沿った、杉林やら広葉樹林の細道が続く。昨日よりも南に下ったからか、広葉樹林に何か南っぽい木々が増えてきていた。
相変わらず多少荒れ気味の細い道が、山間の農村、杉林、山の中腹と続く。杉林の中では道の脇からタヌキが走り出し、少しの間併走して、また林の中へ消えていった。
山腹斜面の道の後、激下りがあってから、蛇行する渓流の緩い下り道になったのはいつも通り。結局串本手前の国道42に合流したのは12:50だった。
いろいろ心配したが、天気もそう悪くならずにトラブルも無く、順調なペースで着けたのが有り難かった。
今までよりも圧倒的に車の多い国道42で、素晴らしかった県道の細道の余韻に浸りながら考えた。潮岬への道も多分似たようなものだろう。それにあの静かで清らかな細道の印象を大切にしたい。本州最南端?ちょっと違いすぎる。もういいじゃないか、何もこの上最南端なんて場所に行かなくても。その分1本早い列車で帰れるし。それに何か、急に空の雲がどす黒くなってきた。
前方に大きく見えてきた潮岬の陸地の緑を眺めつつ、もはや潮岬へ行く必然性は考えられなかった。しかし、単なる惰性と「せっかくここまで来たんだし、しかも時間も無い訳じゃないし」という貧乏性だけで、結局、あれれー曲がっちゃうよー、と言う感じで、潮岬への交差点を曲がってしまった。
去年足摺岬でも見かけた、もろに熱帯風の、枝が細く絡み合った茂みのような森の中を抜け、13:15、潮岬着。
結論を言えば、来て良かった。岬が海になる部分はでかいごつごつした岩場になっていて、それは今まで通ってきた紀伊半島の険しい岩山が、海と接する部分そのものだった。それに、粘り気というか塩分が濃いというか、打ち寄せる太平洋の迫力は格別だ。
13:45、串本着。14:30のスーパーくろしおに間に合って、新大阪からのぞみで一気に東京へ。
記 2002.5/1
Last Update 2003.7/23