2002/10/12 朝日スーパー林道
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鶴岡→(県道350・国道112・県道383)朝日
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県境付近の舗装区間はそう続かずに、道は再びダートとなった。
ブナ森の谷底へ降りきって三面川に沿った区間になっても、まだ緩い下りが延々と続いた。
三面川と林道は付かず離れずという感じで、森の中を進んでゆく。時々透明な流れがすぐ脇に流れていたかと思うと、ちょっと離れてブナ森の奥に行ってしまう。流れは太くなるに連れ、次第に谷深くになり、林道との落差は大きくなっていった。
長い間続いたダートが猿田野営場の手前で再び舗装になると、間もなくだらだらの登り返しが始まった。
青々としたブナの中、何度か凸部を回り込んだところで、見下ろす谷の広がりの中、蛇行する三面川と、その先の水面が広くなって立ち枯れの木が何本か立っているのが見えた。やっと猿田貯水池に着いた、と思った。
貯水池はそう広くないが、山腹へ登り返しているので見晴らしは悪くない。彫りの深い切り立った対岸が、入り組んだ岸の線通りにくねくねと奥の谷へ入り込む。入り組んだ山の奥の方へ向かう湖、木々の生い茂った切り立った山々、荒々しい岩場。山深い風景に奥只見湖をちょっと思い出す。
これから後、朝陽スーパー林道を進んだ三面ダム方面は、その先は里に降りてしまうことになる。ここは朝日スーパー林道を進まずに、山間の道の続く蕨峠方面へ行くことに断然決めた。
猿田ダムを横目に道は急降下し、一度完全に谷底に降りた。猿田ダム辺りから続いている岩山はそう高くないが、切り立ったむき出しの岩が何とも荒々しい。
地図に載っていない奥三面ダムと、そちら方面への標識に注意して進むが、奥三面ダムの関連施設が現れてからなかなか分岐が現れない。迷ったか、とちょっと心配になってきたところで、「小国方面」の青い道路標識が現れた。
通行止めは見あたらない。心配していた小国方面の通行止めは無いようだ。
切り立った岩山のつづら折れを登らされ、11:50、奥三面ダム着。
ダムはなかなか巨大で、貯水池も入り組んだ谷の形通りに奥へと続いている。外周には立派な道がほぼ水平に、やはり貯水池の奥の方へと続いていた。途中には「三面メモリアルパーク」という広場があった。トイレも水場も無い、単なるあずまやがあるだけの狭い広場だったが、何人かの方がシートを広げてお昼を食べていた。説明書きには水没した三面の集落のことが書いてあり、住民の方は平成12年に全員村上市へ集団移転したという。わざわざこんな山奥までお昼を食べに来ているのは、多分もと住民の方なのだろうと思う。
さっきの猿田貯水池は概略東西に伸びていたが、こっちの奥三面貯水池は南北になかなか長細い。南北だけではなく、東の朝日連峰登山口のある谷の方にも切れ込んでいる箇所がある。のぞき込むと、静かな湖面に立ち枯れの木々、背景の山、なかなか浮き世場慣れした風景だ。
興味を持ってちょっと道を逸れて、登山口方面の道に入り込んでみた。静かな湖面に映る青空、山の姿が何とも言えず浮き世離れした印象がある。さっきまで通ってきた朝日スーパー林道から見た山々、あんな山から流れてきた水がこの貯水池になっているのだ、などと思う。
貯水池の一番奥、末沢で対岸が近づき、澄んだ湖水の中から、くねくねとつづら折れを描いて旧道が登ってきた。広く立派な貯水池外周道は、旧道と合流するといきなり狭くなり、そのまま山の森に突入。蕨峠への登りが始まった。
道は途中で多少荒れ気味のダートに変わり、しばらくぐいぐいっと森の中を登っていった。多少坂が緩やかになった辺りで、木々の向こうに朝日連峰や周囲の山々の稜線がちらっと見渡せた。ちらっとではあったが、前後の比較的閉じた森の道からは、意外な拡がりがある。
森の中に続くダートをしばらく下り、道がカーブの連続から直線主体になり、谷へ降りて畑が見え始めたところで再び舗装道路が始まった。と同時に林の向こうの周囲が急に開け、入折戸の集落の拡がりが現れた。朝日スーパー林道の山形側以来、何だか久しぶりに思える集落の営みだ。
14:20、小国着。あれだけ鶴岡を早く出発したので当たり前なのだが、それでもあれだけ写真を撮ったり何かとゆっくりしたりしたのに、この時間に小国に着けた。今日は飯豊山の麓まで行けばいいだけなので、時間的にまだ余裕がある。ちょうどお昼過ぎ、どこかに入って遅い昼食でも食べようか、或いはコンビニで休むか。店の無さそうな県道261から幹線国道の国道113へ向かいながら、まあ国道へ出て最初に目に入った店に向かうことになるのだろうと思った。
結局その通りに国道113に突き当たった所で目に入ったドライブインで米沢牛ステーキ定食を食べ、15:00、小国発。
交通量が多く、今までの静かな山の中の道とは大違いの国道113を、ちょっとの間我慢。国道から県道260の谷に入ると、道が一気に細くなった。
再び車のいない静かな道を、生き返った気分で南下する。国道近くは高い杉林の間を進む道だが、間もなく次第に道の両側が開け、山里の集落の間の道になる。
下新田・玉川・片貝と小さな集落、田圃や畑、コオロギやカンタンの鳴く茂みの間、緩やかな登り基調の道をのんびりと進む。秋のツーリングの常で、もう西の空はなんだか赤みを帯びている。それにも増して、15時を過ぎたばかりだと言うのに、周囲の山々に遮られ、既に谷間は日差しが当たらなくなっていた。気温も早くも下がり始めていて、昼間あれだけ晴れていて気温も高かったのに、何だか肌寒い。
一つ一つの集落が次第に小さくなり、次第に対岸の山には岩肌が目立つようになってきた。道が岩山の一つを回り込むと、いきなり飯豊連邦の2000m級の尾根の塊が姿を現した。今まで行く手の山々に隠れていたのが急に現れたのだろう。壁のように目の前に立ちはだかる山々は、稜線からの薄いオレンジ色を帯びた斜光線の逆光の中で青い影になっている。その赤みだけでなく、頂上付近は真っ赤に紅葉しているようだ。
最後の集落、長者原は、飯豊山からの谷と泡ノ湯温泉からの谷がぶつかる場所だ。小中学校に商店が数軒あり、小中学校の前で道が分岐し、それぞれの谷を遡って続いてゆく。
国民宿舎梅花皮荘を過ぎると、ごつごつした岩山が迫る、アップダウンの道になった。地図では全く読みとれない、けっこう急なアップダウンを何度か登って下って、16:30、飯豊山荘着。
あれだけうだうだしても、鶴岡を早朝に出発できたおかげで、明るい内に飯豊温泉まで余裕でたどり着くことができた。逆に言うと、「ムーンライト越後」から乗り継ぎで9時前に鶴岡に着くパターンでは、ちょっと余裕のない行程になっていたかもしれない。
昼の間に建物に入り込むのか、やたらと部屋の中にたくさんいるカメムシに閉口しつつ、畳の上に地図を広げて明日のコースを確認する。
明日は小国の小さな峠をいくつか越え、会津盆地側に抜けてから、できれば両親の住む新潟県の村松町へと向かう予定だ。五枚沢林道で喜多方に降り、ラーメンでも食べてから行けるところまで行って、磐越西線で輪行すればいいと思っていた。或いは村松まで自走できるかもしれない。
ところが、五枚沢林道を下ったところで喜多方ではなく反対側の西会津方面の山間の集落へ向かう方が、ツーリング的にはずっと面白そうなことに気が付いた。これで喜多方にも寄れれば完璧なのだが、残念ながら私の脚力だとちょっと無理だろう。ラーメンかツーリングか。そういう選択も重要だが、そもそも何時頃福島県に入れるか、なのだろう。
何にしても、朝は早めに出発しなくては、と思った。
記 2002/10/25
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Last Update 2021/9/23