四国Tour01 #6
2001.5/3 大洲→足摺岬

大洲→(県道234)平野
→(国道197)八幡浜
→(国道378)吉田
→(国道56)宇和島
→(県道269)無月
→(県道37)津島
→(県道287)嵐
→(国道56)宿毛
→(国道321)土佐清水
→(県道27)足摺岬
257km

土佐清水

弘見

宿毛

御荘

明浜

津島

宇和島

吉田

足摺岬

三瓶

八幡浜

大洲


 起きると、川の濁流は多少は収まりつつあったが、空は薄暗い。と言うより、黒く厚い雲が空に低く垂れ込めている。風も何となく強いようだった。「晴れ・降水確率10%」という予報の内容とはほど遠い。
 天気を心配しつつ、6:00、大洲郷土館YH発。

 今日は大洲から足摺岬へ行こうと思った。とは言え、単純に幹線国道だけ通るわけではなく、なるべく海辺の静かな道を通ろうと思っていた。海岸のくねくね道路への回り道をしながらちょっとずつ足を進め、タイムリミットが来たら直行コースに切り替えるという魂胆である。あまり大したアップダウンはないようなので、風次第だが、直行コースではけっこうペースに乗った移動ができると思った。
 ということで、まず、八幡浜から宇和海沿いの無数の漁村を結ぶ、国道378号へ進むことにした。吉田で国道56号に合流するまで、宇和海沿いの海岸では一番ボリュームのある区間だし、何と言ってもその後の寄り道を検討しやすい。それと、やはり行程は稼ぎたいので、単純に行って帰るだけであまり行程を進めてくれない由良半島のような道は、今回は止めようと思っていた。

 何と無くすすで汚れた国道56号で我慢して八幡浜まで行く。連休初日のためか、家族総出で乗り込んだワゴンや、いかにもそれっぽい車が多い。
 6:50、八幡浜通過。町中の建物は古びているが、20年ほど前まではそこらの東京の私鉄沿線よりも栄えていたような、一種独特の雰囲気がある。寄り道などするわけもなく、町外れの交差点で標識に従って国道378号へ。

 国道378号は、与作の海岸版だと思った。
 拡幅されている場所はあったが、基本的にほとんど1車線分の幅しか無く、入り組んだ地形にそのまま沿って海岸をあまり起伏無く結ぶので、頻繁なカーブがある。
 天気は曇りなので宇和海の色は冴えないが、近くや遠くの大小さまざまな島が静かな海に浮かび、入り組んだ湾の中などでは、海と言うよりも周囲が閉じられた湖のように見えた。その中を時々エンジン音を響かせ、漁船が横切ってゆく。宇和海の島々、半島の新緑は、どす黒い曇り空の下一部にガスがかかってはいたが、それでも海と相まってなかなか鮮やかだった。
 また、道路は漁村の民家や漁港の共用の作業空間にもなっていた。小さな湾沿いに続く漁村には、朝から元気に働く人の姿があった。道を歩くおばあさんが必ずこちらに目を合わせ、にこっと笑って挨拶してくれるのが嬉しい。漁村の一つ一つは小さいが、寂れているようには見えない。民家の作りはなかなか洒落ていて、今でこそ過疎と高齢化に悩む地域なのかもしれないが、昔は栄えていたことを想像させた。
 何とも切なくなるような潮の香りを海面間近の道路で味わいつつ、集落を抜けると、これにミカン畑の匂いが加わる。薄緑色のミカンの花もあちこちのミカン畑で見られた。またこれらミカン畑の出荷用に、畑の急斜面に小さなモノレールが設置されているのがあちこちで見られ、なかなか珍しい光景を作っていた。

 

 宇和海沿いの陸地はどれも非常に入り組んでおり、道路も岬から入って湾の深いところまで入り、地形に沿って急に曲がり、今度は今来た道を右側に眺めながら再び行く手の岬を目指す。このような繰り返しが何度あったかわからない。岬で少し標高が上がると、また小さな湾や宇和海の島の風景は変わる。
 一番心配していた風は、弱くないくらいの風が東南東に向かって吹くという、今日の移動方向を考えるとなかなか悪くない状態だった。しかし、心配していなかった空模様が何とも思わしくない。三瓶町、明浜町と半島を南へ回り込んだころ、山をうっすらと覆っていたガスっぽい雲が霧雨になった。またかよと思ったが、空は逆にどんどん明るくなっている。空が明るくなると、海が明るい緑色になってきた。新緑も何だかしっとりしている。

 10:20、吉田通過。とりあえず楽しい海岸通りが終わってしまい、しぶしぶ宇和島まで交通量の多い国道56号を使う。
 11:05、宇和島着。宇和島の駅前通りは巨大なフェニックスの並木がしばらく続く。新しく改築された駅がまたカラフルで、商店街の開けた感じも手伝って、いかにも南国という雰囲気だ。11:25、宇和島発。

 宇和島着がそう遅くなかったので、今度は県道269・37号で再び海岸線を行くことにした。同じ宇和海沿いの漁村風景だけあって、先の国道378号とほとんど道の雰囲気は変わらない。国道・県道というのは、、まるで管理者だけの問題のようである。
 空が次第に晴れてきた。明るい太陽光の下、宇和海の繊細な漁村風景は、本当に素晴らしい。内海のためかほとんど波の無い海はもはや完全にエメラルドグリーン、一方、山の柔らかな新緑の黄緑色は、雨上がりで少し強い風にはためいていた。漁村の集落では、飛び交うツバメとカモメが出迎えてくれた。  

 その後も津島で国道56号に戻ったが、すぐに再び県道287号で海岸沿いを選んだ。津島の手前辺りからは、なにか民家、木々や辺りの雰囲気にそこはかとない南国らしさが道の風景に漂い始めた。道ばたにソテツまで生えている。

 14:10、嵐着。ここからは宿毛まで国道56号である。
 国道56号もさすがに宇和島を過ぎると、交通量はぐっと少なくなっていた。どこかせわしない道ではあるものの、海岸沿いの高台の森の中、海岸線から奥まった平地の農村と、風景は決して悪いものではない。坂もカーブもさすがに幹線国道は緩やかで、この時間となってはありがたい。
 途中のドライブインで休憩して、15:40御荘着、16:25宿毛着。
 海岸から切り立った高台から国道が河口部の平地へ降りるこれらの町ごとに、南国らしい雰囲気はますます強くなっていった。それは低く詰まった木々、見知らぬ樹種などから感じる周囲の山の木々だったり、何とは無しの川沿いの農地の雰囲気だったりした。宿毛などでは木々の濃い緑色、ゆったりした川、それらを照らす光の感じからして、もう完全にすべてが南国であり、日本の風景の御荘とはまるで違っていた。国道56号から分岐して南へ向かう国道321号の向こうの丘は、何か見たことのない亜熱帯の雰囲気を漂わせていた。モンキアゲハという南に住むチョウを、生まれて初めて見た。また、森の中では何か聞いたことがないセミが鳴いていた。

 駅でサンライズの指定券をチェックしてから、16:40、宿毛発。ここからは国道656号を離れ、国道321号で土佐清水へと向かう。途中で大月方面に分岐して海岸線へ向かう道があるが、時間と先の行程を考えると、もはや余裕は全く無かった。
 高台をダイナミックに大きなカーブで突っ切る国道の緩い起伏を、ひたすら足摺岬へと急ぐ。何となく夕方っぽい涼しさを感じるようにはなっていたが、ウインドブレーカーを着なくても寒くないのは、さすがに南国である。

 高台から下りきると、道路は絶壁の下、太平洋の海岸際に張り付いていた。すっかり弱くなった夕方の赤い光の中で、静かに打ち寄せる波はあくまで力強く熱く、どこまでも拡がる水平線には限りなく広いという直感を感じた。午前中の穏やかで静かで湖のような宇和海とはまた全く違う。もう夕方も遅くなり、先へと気が急く道のりだったが、何か心に迫ってくるものがあった。

 土佐清水から、今回の旅行で恒例となっっている、宿への電話を入れる。でも、もうあと17kmしかない。最後だ、と思って気合いを入れる。
 空には月が明るく輝くようになっていた。

 18:50、土佐清水発。道に漂うカツオ工場のカツオのいい香りの中を、足摺岬へと向かう。
 足摺岬への最後の道では、半島に入ってからの坂を登り、拡幅された道路が終わって森の中の細い道の途中で、空が完全に暗くなった。南国特有の細い幹がびっしり詰まった森も、頭上のわずかな月明かりを完全に遮っていた。こういう真っ暗なシチュエーションで、先日のリム打ちパンクのような失敗は2度としたくない。ましてや対向自動車が怖い。速度を下げてゆっくりと進んだが、半島先端部の松尾の灯りが見えてきたときは本当に嬉しかった。
 19:45、足摺YH着。

記 2001.5/4

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Last Update 2003.3/16
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