赤は本日の経路 濃い灰色は過去の経路

2000.10/8
魚野川水平歩道・秋山林道 #1

野反湖→渋沢ダム
(以下#2)→(魚野川水平歩道)切明→(秋山林道)前倉
→(農道)結東→(農道)中子→(農道)宮野原→(県道286)逆巻
→(国道117)森宮野原
   53km

魚野川水平歩道 延々続く空中の細道

 5:00、まだ夜は明けていない。火器でお湯を沸かし、ラーメンと昨夜もらっておいたおにぎりを腹に詰め込む。窓の外がいかにも寒そうだったので、昨日着た服も総動員して薄いシャツやらなんやらを何枚も重ね着し、最後にウインドブレーカーを着込む。
 外に出ると、夜明けの空気が信じ難いほど冷たい。はっきりとは言えないが感覚としては東京の2月くらいか。まあ理屈で考えればこの季節の標高1500m強、まともな気温では済まないはずではある。手袋を持ってこなかったのをちょっと悔やんだが、この先気温が上がるのに期待するしかない。多分大丈夫だろう。

 6:00、野反湖ロッジ発。野反湖の湖面から湯気が立ち上っている。周囲の空気よりも水温の方が高いためか。しかし、さすがに道路脇の水たまりの水面は凍ってはいない。
 野反湖畔の白砂山登山口の駐車場の奥から、自転車を押して笹原の中へ入る。

出発してすぐ山道に 野反湖から地蔵峠・大倉坂経由で渋沢ダムへ 赤は本日の経路
6時を過ぎて空が一気に明るくなってきた

 すぐに道が緩く下りだした。ブナやらシラカバやらの広葉樹林に突入して間もなく沢音が聞こえてきた。ハンノキ沢だ。
 沢には橋が架かっていない。歩幅よりも多少広い間隔で多少大きめの石が沢から頭を出しているだけだ。注意しながら少し靴を濡らしつつも渡りきって、すっかり明るくなった空を見上げる。空自体は明るいが、どうやら今日は曇りだ。昨日の晴天を考えるとちょっと残念な気もするが、雨もしつこい風も無いようなので、まあこれくらいは上等なのだろう。

ハンノキ沢 靴がちょっとぬれるぐらいの水量 この辺りで既に道間違い 振り返ると曇り空の下に野反湖

 林の中を登り続けるとやや開けた笹原が現れ、木々の向こうには魚野川対岸の岩菅山の山腹が現れた。立ちはだかる山の姿が、自分の今現在の標高を意識させる。野反湖外周の森とそう標高は変わらないはずなのに、岩菅山の正面辺りから下の方は黄色や赤の紅葉に彩られている。野反湖を過ぎて気候が変わったということなのだろうか。
 間もなく笹原に木々がまばらに立つ地蔵峠を過ぎ、開けた下り道になった。緩やかな箇所は少しは乗って下れたが、すぐにタイトターンの急下りが始まる。こうなるともう私は乗車できない。
 道を覆う低い草や落ち葉が朝露に濡れていて、じとっと湿り気味だ。真っ黒に錆びた標識のような札が立っていたが、分岐する道路などどこを見ても無い。あれがガイドブックに載っていた白砂山登山道への標識か。しかし、いかんせん分岐する道が無い。錆びた札が全く読めないこともあり、あまり深く考えずに押したり乗ったりでどんどん下る。
 ふと沢の音に気付く。地蔵峠の次の北沢だろう。すぐに明瞭な大きい沢の音が近づき、沢に沿って急に曲がり込んだ道が手すり付の岩場になった。と、道が岩場の先の沢の堰で終わっているのが見えた。堰には東京電力管理施設の旨が表示してある。
 しまった、道を間違えた…時計を見たら、丁度7:00。

岩菅山 下草の笹が高い道 木々は比較的空いている 場所によっては紅葉進行中 もう2週間後ぐらいが見頃だったかも

 気持ちが焦ると身体が熱くなる。やってしまった。早く戻らないと。でもどこまで戻るのか。地蔵峠まで戻らなければならないかもしれない。いや、地蔵峠には分岐はなかったはずだ。この沢が地蔵峠の次に現れるはずの北沢であることは間違いないと思われる。とすると、問題はどこで道を間違えたかだ。落ち着け。
 すぐに来た道を引き返す。けっこういい気になって快調に下った急下りを、押し・担ぎ併用で汗だくで登る。焦りながら、こんな山奥まで東京電力がいろいろと施設を作って管理していることに少し驚いていた。思えば丁寧に整備されたこの山道も、東京電力が管理用に整備しているのだろう(そういえば所々に、何かの置場のような屋根付の物を、切明までの道の所々に見ることができた)。

 ようやく坂が落ち着いた笹原の中、例のパスハンの彼が休んでいた。彼もここまで来てどうも道を間違ったことに気が付いたとのこと。
 地図を見ながらちょっと考えたが、結局もう少し戻った場所で笹藪の足下に、白砂山登山道分岐の看板が倒れていて、細い登り道が確かに右の藪の中へ続いていた。東電施設への道の方が広かったため、細い曲がり道と看板に気が付かなかったのだ。さっきの錆びた札は、登山道とは全然無関係のようだ。
 パスハンの彼は「ゆっくり行きますから」とか言って、後ろの方を歩いている。こういう人の「ゆっくり」が一番あやしいんだよなあ、とか思いながら先へ進んだ。

またまた振り返ると次第に小さくなってゆく野反湖が 対岸の岩菅山を眺めつつ進む 進むにつれ紅葉が進行 谷の奥の空気は冷たいのだろう

 登りが少し続いたところで急下りが始まり、すぐに北沢が現れた。さっきよりだいぶ上流のようだ。今度は沢の向こうに確かに道が続いている。
 渡り石が離れていてどう渡ろうか迷ったが、注意深く石を選び、えいっと飛び越えた。渡ったところでリュックからペットボトルを出し、水を飲む。安心したせいか、ひんやり冷えた水がうまい。
 ここからの200m程の登りがこのコース最大の登りだという話だ。山サイ研ガイドブックの「担ぎながら休む感覚」という言葉を思い出し、ゆっくりのんびりと登る。登り始めは木立の中の担ぎ急登りで、その後は押したり担いだりと、まあ苦しさも楽しいくらいの登りが続いた。

 登り詰める手前、例によって周囲が笹原になり、展望が開けた。
 谷の向こう、左側正面には紅葉した岩菅山に裏岩菅山、前方のやや赤くガレた岩肌が露出してるのは、地図によると烏帽子山か。ふと後ろを振り返ると、まだ意外と近くに水面近くに白くもやが溜まった野反湖が見下ろせた。苦労している割にはあまり進んでいないということだろう。しかし、がっかりするよりも眺めに満足していた。こういう風景が、登りの苦労をねぎらってくれる。

西大倉山の背へ 相変わらず眺めは良好 標高差600m激下り中 ほとんど乗車できず 木々の間に渋沢ダムが見えてきた

 その後しばらく続いた「半分くらいは乗車できるはず」の下りは、テク不足で3割以下の乗車率だった。
 9:00、開けた藪の中のイタドリ沢を通過する。高い位置で空を覆っていた雲の中でぼんやり丸かった太陽が、何となく鋭くなっていた。いい傾向だ。そうでなくても早朝から較べるとだんだん気温が上がっていたので、ウインドブレーカーの下を2枚脱いでリュックにしまう。しばらく休んでも、例のパスハンの彼はやってこない。首からぶら下げていたAF一眼で写真を撮り撮り進んでいるようだ。
 今度はいわゆる西大倉山の肩を目指し、再び登り出す。樹木がやや多目の笹藪を地図から読める標高差の2倍ぐらいは登り続けた。木立の向こうに白い空の光が見えているのに、なかなか登り切らない。地図で読める標高差の先入観があって、もう終わるもう終わると思ってもなかなか登りが終わらない。気分的に疲れる登りだ。

 やがて、笹原の中の曲がった向こう、唐突に道が下りになっているのが見えた。時計を見ると9:30。
 標高差約600m以上の下りが始まった。上級者なら80%以上乗車可能だというこの下りも、私は95%くらい押しと担ぎで通した。なかなか疲れる長い下り道だった。
 急斜面の森の木の葉の向こうに何か白い物が見えたと思ったら、どうやらそれは渋沢ダムだった。下っても下ってもダムはなかなか近づかなかったが、まあそれでも次第にダムが大きくはっきりと見えるようになり、やがて急斜面が緩くなって森を抜けると、少し開けた広場が現れた。プレハブのような小屋が何軒か建っている。広場には何か工事機材が置かれ、ロープで通路が囲われていた。

下りきって渋沢間近 大倉坂から魚野川水平歩道経由で切明、秋山林道へ 赤は本日の経路
渋沢ダムから魚野川下流方面を望む

記 2000.10/12

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Last Update 2005.1/8
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