糠平→(国道273号)三国峠
→(国道273号)糠平
約70km
新得
帯広
糠平
三国峠
標高500m以上の糠平は、さすがに朝から肌寒い。やっぱり天気予報通りで、早くも空は全体的に雲っぽい。まあ、うっすらと雲っぽい程度の晴だが、朝の天気予報では上川に強風・乾燥注意報、午後の降水確立40%。十勝は乾燥注意報、20%なので、今日は十勝で決まりだ。三国峠を往復し、行ければ然別湖へ行って新得に降りたい。それで150km位は走れるだろう。
三国峠は1986年、13年前に初めて北海道をツーリングした時以来である。前回は上川側の層雲峡から入り、上士幌側へ降りてきた。大雪湖から十勝三股、さらに糠平の手前までほとんどダートだったと思う。やたらと幅の広いダートだった記憶もある。昨日のバスの車窓から見えたのだが、細くて地形に沿ってくねっていた国道も、盛り土やトンネル、橋梁などの土木工事により、おそろしく整備されて全く変わっていた。三国峠も全線舗装され、冬季も通行可能になったと聞いているが、どのように変わっているかはわからない。
三国峠・糠平湖へようこそ!という風な観光案内なんかで、カーブを描きながら空中を駆ける軽やかな鉄骨トラス橋・はるか眼下に拡がる大樹海、という写真が必ず出てくる。この橋も以前からかなり渡ってみたいと思っていた。一体どういう橋なのだろう。YHの宿主さんに聞いてみたら、9合目より上にあるとのこと。
8:15、YH発。糠平の温泉街を抜けると、すぐに然別湖への道道85号線への分岐が見える。かなり急な坂である。しかし、こちら側の国道237号線は、糠平湖畔・その先もかなりだらだらとした坂を長い間進むことになる。川を挟んで向こう側の山が近づいてくる。山深い雰囲気ではあるが、その印象からは意外なほどだらだらと緩い勾配が続く。
建設業の業界誌で出ていたのだが、帯広から糠平、更に奥の十勝三股へ走っていた国鉄士幌線(既に廃止)は、建設時期の関係でコンクリートアーチ型橋梁などの大形構造物に見るべき美しいデザインのものが多いという。注意して見ていると、何本か橋梁の残骸や橋脚なんかが国道に隣接して残っている。
9:30、ゆっくりと走るうち、周囲は急に開け、白樺の森と笹の茂みの中から十勝三股の集落が出現する。集落といっても、数軒の民家とログ喫茶店が建っているだけの静かな盆地だ。昔、「と・か・ち・みつまたっ!」と叫んでビートたけしの「コマネチ!」のポーズを取るギャグが北海道の旅行者の中で行われていたのを思い出す。
ほとんど平坦に近い緩い登りだったのが、十勝三股を過ぎると、いよいよ峠道となる。それでも5%のあまり大したこと無い、だらだらした登り道といえる。空の薄曇りは変わらなかったが、太陽が射すようになっていた。
標高1000mを越えると、まもなく前述のアーチ橋、「松見大橋」が現れた。「そうか、松見大橋というのか」という感じで、今日三国峠へ来た大きな目的の一つがとにかく達成された。実際の松見大橋はS字を描いており、橋から下を見下ろすと50m〜100m位の高さはありそう(怖いのであまり真剣に見ていない)である。一方、眼前には、期待に違わぬ凄ざまじい大樹海が山々の間に拡がっている。途中には、十勝三股らしい盆地も見える。多分、糠平湖のちょっと手前くらいまで見えているのではないか。とにかく、
視界が全て大樹海と大雪山系なのだ。
しばらく息を飲んで、橋の上でどこまでも続く大樹海を眺めていた。
ふと後ろ側を見ると、山の斜面に沿って、旧道の痕跡が見える。写真がどこだかわからなかったわけだ。そうそう、あっちのクネクネ道なら少しは昔の記憶にある。国道の改修工事がかなり進んだようで、大規模なルート変更や橋梁新設が行われたことがよくわかった。
11:00、三国峠着。
峠の頂上には、やはり13年前には影も形も無かった「展望台」ができていた。昔の記憶では、上川側からトンネルを抜けると、いきなりそっけ無くダートの下りが始まっていたと思う。便所・お土産屋・そば屋なんかもある。士幌町産アイスクリームも売っていた。ここでYHに作ってもらったおにぎりを食べた。
標高約1100mの展望台はとにかく寒い。手袋代わりの軍手を脱ぐと、指先がたちまち冷える。思えば1000mを越えた辺りからやたらと寒かったのだが、登りが終わって急に寒さが身に堪え出した。今までの防寒着に加え、トレーナーをもう一枚動員する。
三国トンネルを抜け、上川町側へ行ってみた。天気が大丈夫そうなら、このまま旭川側へ行ってしまおうとも考えたのだが、トンネルを抜けた先はどんよりとした曇りだった。風も多少は強いような気がする。上川町側も、やはり完全舗装の見事な整備がされており、ダートだった13年前の面影はまるで無くなっていた。
上士幌町側へ戻ることにした。まあ順調に下れれば、12:00過ぎには糠平に着くだろうと、この時点では思っていた。
11:30、三国峠発。下り始めて、坂が緩くなる十勝三股の手前近くまで来ないうちに、かなり向かい風がキツいことに気が付いた。
普段だったら明かに何もしなくてもどんどん進んで無動力で30〜40km/h以上楽勝で出てしまうような下りで、どんどんスピードが落ちて15km/hくらいでしか進めないのだ。
これでは今日の予定がこなせないではないか!
標高が下がっても風は止まず、下りなのに登りとあまり変わらないようなペースでしか国道237号を下れなかった。13:10、糠平着。
大幅に遅れている。このままでは、標高差400m以上の激坂が続く然別湖へ寄らずに、上士幌経由で新得へ向かったとしても、今日の札幌発青森行き夜行「はまなす」に乗れなくなってしまう。特にこの風・天気予報では、先が思いやられる。
というか、列車に乗るまでに、やはり札幌でラーメン位は食べたい。塩分の消費が多いせいか、塩辛い汁を想像するだけで口の中によだれが出てくるのがわかる。帯広行きのバスの時間を見ると、14:48発のがある。自転車をたたんで荷造りして休憩して、これ以上の丁度いい時間も期待しにくいぐらいのばっちりな時間である。
等と思ってしまったら、もうお終いである。
悪い方向への考察と、2日連続なのでもうこの際どっちでもいいや、という軟弱な気持ちの推進力があり、輪行を決めてしまった。風が吹いて輪行なんて。すっかりヨゴレ系軟弱ツーリストである。
とは言っても、自転車を畳んでいるうちに、みるみるうちに雲は厚くなり、気温も冷えてきた。天気予報通りだ。風も次第につよくなり、そう間違った判断でもなかったような気はする。
この後、天候の悪化は更に進み、帯広→札幌の特急では、占冠〜南千歳でけっこう大粒の雨になっているのが見えた。
ということで、私のGWはこれで終わった。来れれば、次は夏休みにまた来たい。
記 1999.5/8
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Last Update 2002.12/17