頸城の秋98 #1 1998.11/14 十日町→松代

三方峠

松代(菅刈)

室田

浦田

天水島

松之山温泉

松之山

五十子平

赤倉

東山

海老

名ヶ山

中手

高島

北鐙坂

十日町

今日の経路(赤表示)と既済経路(灰色表示)

十日町→(県道74・国道253)北鐙坂
→(県道49)高島
→(県道528)名ヶ山
→(県道427)海老
→(町道)東山
→(町道・県道427)五十子平
→(国道353)松之山
→(県道80)天水島
→(国道405)浦田
→(県道243)室野
→(国道403)池尻
→(国道253)松代(菅刈)


 7時の「あさひ」に乗って、十日町には8:56に着いてしまった。は、速すぎる…

 越後湯沢付近で天気は激晴、鋭い朝の太陽光線に目を細めながら喜んでいたら、途中からどんどん雲が増え曇りになってしまった。おまけにけっこう寒い。
 今日はここからいろいろと大回りして松代町まで行く。大学時代の研究室OB会「晩秋あるいは初冬の松代'98」に参加するためだ。ここには学校の施設があり、毎年我々はここでOB会を行う。
 OB会の集合時間が15時のため、それまでしか走れないのが制限事項ではある(遅れると、果てしなく飲まされる怖れがある)。

 十日町から松代周辺、更にその奥の頚城地方の特徴のある地形について簡単に触れておく。
 米どころ新潟県内でも有数の良質米の産地であるこの周辺は、標高差はそんなにない(200m弱から400m強くらいまで)が、すべて山と谷の連続する地形だ。およそ平地というものが少なく、山のてっぺんのほうまでびっしり丁寧に作られた棚田や、断続する小さな集落を縫うように、細い峠道がくねくねと続く。
 このため、地域間を結ぶ交通が非常に不便な時代が長く続き、毎年冬には豪雪により、完全に外部からの交通が遮断された状態だったらしい。まともに自動車が走れるような舗装道路が通ったのは、20年くらい前からだとも聞く。
 現在は、国道253号を初め、国道の拡幅工事や立派なトンネルができ、あるいは工事が進捗しつつある。また、集落間の道路も、ほとんど舗装が完成したといっていい。鉄道の北越急行も昨年開通し、飛び石のようではあるが駅もできた。
 しかしながら、道路の舗装はされたものの、棚田や昔ながらの農家が、小さな谷間に連続する風景のかなりの部分が、まだそのままだという(昔を知らないので)。観光客もほとんどいないことから、のどかで静かで美しい農村風景の宝庫となっている。
 というか、農村風景が好きな私のようなツーリストにとっては天国なのだ。
 そんなわけで、今回のテーマ(ていうか今回はテーマがある)は、もう徹底的に「晩秋の農村風景」なのだ。

 組み立てに時間がかかり、9:45薄曇りの十日町駅を出発。駅近くのセブンイレブンでおにぎりや水を仕入れ、国道253号の信濃川を渡る。国道はまず河岸段丘に上るため、すぐに登りとなる。調整池を横目に、ここで早くも脇道に進路を変えて北鐙坂の集落に入る。幅の広い国道253号を避け、農村風景を見るためだ。

 雲が消え、すっかり晴になっている。気温はやや肌寒いが、陽ざしが強いので空気がさわやかになっている。風も全く無い。天気予報どおりの最高の天気になりそうだ。
 北鐙坂入り口の小さな坂を登りつめ、早くも現れる木造の農家・田んぼ・この地方独特の田んぼ脇に連続して立てられた丸太・逆光の中白く輝くススキの穂、いかにもという雰囲気の農村風景に、早くも「来てよかった…」状態だ。

 信濃川沿い河岸段丘の南鐙坂・高島の集落を快調に抜け、登り坂が始まる。いよいよディープな頚城地方に分け入る。標高200m位の高島から300m前後の鉢までだらだらと、しかし決して楽ではない登りが続く。狭いが、比較的傾斜が緩やかなため見通しが効く谷の雑木林は、もうすっかり黄色くなっている。一方、谷の奥のほうまで延々と続く棚田は、もうすっかり穂が刈り取られて、しかし何故か水が張られて、ため池のようになっている。

 30分くらい登り、やがて前方のカーブの向こう側にちらっとみえる民家がそのまま何軒も連続し、かなり急な山の斜面に農村が展開するようになると谷のどん詰まり、鉢の集落だ。
 集落内もそこそこ急な坂道だが、小さな小学校やひなびたというよりひからびているような(失礼)商店、石垣の上の農家の庭・縁側などが5mくらいの道路の両側に展開する。集落の至るところから狼煙のように朝の白い煙があがっていたり、乳母車に野菜を乗っけたおばあさんとすれ違ったり、午前中のさわやかな太陽光線の中でかなり気分がいい。

 10:40、集落内を更に登り詰めると標識が現れ、直角に曲がると農家の間に「中手トンネル」の入り口が現れる。とても狭い。
 トンネル内は狭さと弧を描く天井・垂直に対立する両内壁面のため、何かパイプの中を通っているようだ。抜けたところが中手の集落で、また坂が始まる。結局標高400mくらいまで、すっかり秋たけなわという感じの集落を登り詰め、今度は棚田や中平の集落を下り始める。
 中平の集落を抜けると、幅員4mくらいの舗装道路は、杉林の中を緩い下りで通っていく。杉林といっても、斜面が切り立っているのであまりびっしりした林ではなく、規則正しく植えられた幹の向こうに、反対側の棚田が間近に見える。

 国道235号の旧道部分を経由し、緩い坂を登って下る。
 11:30、海老(かいろう)の集落の脇を通過する。道路は結構高い場所を通っているのだが、海老の集落は低い場所に展開している。少し坂を登ってから振り返ると!という展望が開ける。
 高低様々なレベルで散在する農家と畑や棚田・木々・奥のほうににょきにょきと頭を突き出す黄色や赤に色着いた丘・くねくねと谷間を縫って走る細い道。遠くには国道253号(多分)を自動車が走っているのも見える。
 今まで自分のいる谷しか見通せなかった(それはそれですばらしい風景だったのだが)が、雲一つ無い秋空の下、明るく照らされた見渡す風景に感心して、眺め入ってしまう。

 そのまま登り続ける。途中には「ほたるの里」などという看板があった。ほとんど反射的に、「蛍…蛍ー!蛍っしょー!」という田中邦衛のギャグ(違うか)を飛ばしながら、更に登って下って東山の集落に着く。地図どおりだと、このまま道は破線となり、谷を下りながら松之山町との境界を越え、同じ名前の東山という集落に入るはずだった。

 地図どおり、森の中の未舗装道路をゆっくりと下って行く。短い森を抜けると棚田が現れ、程無く道がどんどん狭くなり、やがて途切れてしまった。
 まあよくあることだ。5分ほど急坂を押しで引き返し、別の道を下るが、こちらもすぐ行き止まりになる。軽自動車っぽい轍に安心したのがいけなかったようではある。
 しかたないので東山まで引き返し、今度は集落の中のそれっぽい分岐を違う方向へ行ってみた。しかし、出会った農作業の帰り風のおばさん・息子・娘らしい軽トラに聞くと、「松之山の東山かい。海老まで戻んないとだめだねえ。こっちは道ないよ」と息子とおばさんが答えてくれた。娘は何故かにこにこしていた。

 その後、結局聞いた道まで2回、行って戻ってがあった。約45分以上のロスだ。標高的にも350m→500m→300mを往復したことになる。

 12:15、今度は大丈夫だろうと思いながら、幅2mくらいの砂利道にそれる。今まで通ってきた舗装道路の側面を、急な下りで降りていく。轍は安定しているようであり、路面の状態も良い。すぐに軽い登りになり、集落や少し開けた棚田・畑・あるいは林の中をクネクネと抜けて行く。この辺の道は、国土地理院1/50000「松之山温泉」では黒い単線で描かれており、ツーリングマップルでは道路が消えている。実際には、軽自動車がぎりぎりで通行可能、すれ違いは絶対無理という感じだ。
 緩い登りや下りがあり、農村の中を通りぬけていく。カーブがきつく柵なんて無いので、道を外れると即谷底に転落というような場所だらけだ。途中から、ダート(というよりこれが地道というやつか?)は舗装道路に変わり、だらだらした下り坂になる。しかし、ガードが無いのは変わらない。

 やがて松之山町へ入り、坪野、五十子平の集落から国道353号へ抜ける。まだ幅員4〜5m位の区間も多いが、いままでの細い道よりも、何だかさすがに格を感じる。一方で拡幅・工事は次第に進捗しているようだ。国道の坂道を更に登ると松之山の十字路に出る。
 13:15、標高は350mくらい。ここで国道353号から離れ、三方峠へと向かう。

 松之山の集落からしばらく緩い下りが続き、やがて新しい温泉施設(名前忘れた)の脇を通り、さらに松之山温泉の入り口も通過すると、道は緩い登りに変わる。このあたりから道路は西向きになり、13時台だというのにすっかり傾いた太陽を正面にしながら走る。
 ドラマチックな逆光で、これからの峠道に向けて気分が少し盛り上がる。

 天水越の集落に入り、津南からの国道405号と合流する。国道405号は車線というものが無い田舎道だ。周囲の山が今までよりも高くなっている分、天水越の集落は高原の集落という風情だ。斜面に展開する集落や棚田の風景には、日本の農村というよりも、どこか東南アジア風の雰囲気と、同時に他の集落と同じように、何か胸に込み上げるような懐かしさも感じる。
 昼すぎだからか、道路を歩いているお婆さんやおばさんが多い。こっちを見て「おやおや、大変だあ」なんて言っている。「こんにちは」とお互い挨拶しながらゆっくり登って行く。自転車だとこういうのがあり、とてもいい。もう坂が急になりはじめている。

 峠を登って行くと周囲は棚田・杉林・広葉樹林・カラマツと次第に変わってゆく。もちろん杉を除いてすっかり色付いている。谷を見降ろすと、もこもこっと隆起する山の斜面にびっしり重る棚田・田んぼの脇に植えられた木々・くねくねと急坂を登っている農道…見事な風景だ。
 道路の拡幅工事をやっている。小さなカーブでくねくねとつづれ折りを描く国道っぽくない三方峠越えも、いつかトンネル一発で抜けてしまう日が来るのかもしれない。
 14:05、三方峠に着く。峠の頂上は標高約660m位。片側には休耕田が下の方へ続いている。こんな高い場所まで使って、この地域では昔から農業が行われていたのだ。
 風が強くなってきた。15時の集合時間まで、あと1時間なくなってしまっている。峠の頂上は見通しも悪く、あまりうだうだせずに下ることにした。まあ無理に急いでもろくなことが無いので、時間が無くても結局は普通に速く走るだけなのだが。

 標高で160m程下って中立山の集落、少し登って更に下って標高520mくらいの浦田の集落を右に曲がり、湯之島から松代町の福島・奈良立と、ブレーキが心配なほどの激下りから次第に緩い下り坂に変ってゆく道を、一気に飛ばす。今日走ったコースは、登り坂や転落したら一発アウトの下り道ばかりのため、スピードを上げるのは今日は初めてで、けっこうすかっとする。
 14時台だというのに太陽光線がもうすっかり赤くなり、農村風景の茅葺屋根・柿の木・紅葉の木々を赤く照らしている。
 室野から国道253号に入り、14:55松代到着。標高は200m。全くわからないが、平均16kmとして、今日は80kmくらい走ったのかな?

 これだけ次から次へとのどかな風景が続くと、田舎町(失礼)の松代も、けっこう栄えているように見える(失礼)。

 さあ、今夜は斗いだ(酒は弱いもんで…)!

記 1998.11/17

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Last Update 2003.4/12
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