北海道Tour98 #15 1998.8/17 東鹿越→富良野

東鹿越→北落合
→麓郷
→ベベルイ
→八幡丘
→富良野
98km

富良野

八幡丘

ベベルイ

麓郷

西瓜峠

しらはぎ

樹海峠

北落合

落合

幾寅

東鹿越

今日の経路(拡大表示)今日の経路(赤表示)と今日までの経路(灰色表示)


 最終日だ。
 5:00に起きるとすでに雨はやんでおり、道路は早くも乾き出していた。なんだか朝日のような赤みを帯びた明るさでもあるようだった。
 今日は走れる。自転車を組み始めた。
 恥ずかしいことに最近まで知らなかったのだが、最近の自転車は5分くらいで組み立てを完了するらしい。自分のランドナーはフォークを抜く方式なので、普通でも20分くらいかかる。キャリアとサイドバッグを付けると、これが1時間くらいになってしまう。毎年のツーリングでこれが結構走行計画上のネックになる。
 それでも走りやすくて疲れないランドナーが好きだ。ランドナーに乗れるのだったら組み立て・解体時間も苦にならない。

 7:30、東鹿越発。
 かなやま湖畔の道路を走り出した。1日ぶりだが、ハンドルを握る腕とペダルを踏む足の感触がうれしい。
 かなやま湖は人造湖で空知川の途中にある山間の湖だ。ずっと空知川に沿って走る国道38号線は、かなやま湖の部分だけ山一つ北側をオーバーパスする。したがって、かなやま湖の周囲はかなやま湖目的の観光客以外あまり車両の通行はない。
 実際に7時半位だと幾寅の町に着くまでの数kmの間、数台の車が来ただけだった。今日は朝からウインドブレーカーなしで走っている。しかし、天気は早朝とは逆に雲は厚くなっているような気がする。

 幾寅から国道38号線に合流し、落合まで少しずつ標高を上げる。幾寅→落合→北落合→幾寅と三角形を一周するコースで走る予定だ。8:30落合着。北側、北落合の方角の山には無残にも霧がかかっている。空は白というかグレーというか、とにかく分厚そうな雲である。一方、南側のトマム方面にはなんと青空が見えており、山なんか太陽に照らされている。いいなあ。予定変更、という4文字が頭の中に浮かぶが、とにかく北落合へ行く。

 アプローチの道道を行くうち、どんどん寒くなるのでウインドブレーカーを着た。これでいつもと同じだ。まあこれも今年の夏らしいことだ。シラカバとブナに囲まれた直線道路が終わり、坂が急にきつくなった。更に登ると、カラマツの林が終わって北落合の風景がが見えてきた。
 北落合はやはりどんよりした雲に覆われていた。おまけにガスが出ており、見通しはよくない。ちなみに落合は標高410m、北落合の中央地区で530m。しかし、一番見晴らしがいい落合地区生産組合農場のどん詰まりで680m。天気がよかったら絶対に行くが、今日はあまり深入りしないでおく。次回の課題だ。

 10:00、北落合から谷間の道を下って、直接幾寅に着いた。幾寅の道の駅はすでに営業開始しており、ちょっと食料を補給する。ここではランドナー部隊がいた。といっても4台のうち1台はロードマン(みたいなの)、1台はロードレーサーに山用巨大バックパックを背負っていた。ロードマン級は基本的にはランドナーに分類してもいいのではないか、と思っていたが、フロントが2枚なので苦しいものがある、と言っていた。
 今度は国道38号を樹海峠へ向けて出発する。名前だけ聞くと山深そうでちょっとびびるが、幾寅からは標高差は100mちょい、坂も比較的緩くてちょっとギヤを落とせば何と言うことはない。樹海峠からは富良野方面の展望が見事だ。名前のとおり、近くからはるか遠くまで延々と続く山並みに広がる樹海を見ることができる。

 峠を超えると、富良野側の山にはガスがかかっており、何も見えなかった。結局最後までこれか、とがっかりしながら坂を下る。
 ところが、下ったあたりはそう捨てたものでもないくらいに薄明るい空模様だ。緩い下りに便乗し、快調に国道を飛ばす。国道38号はけっこう前に日高経由の国道274号が完成し、確実に交通量が減った。国道なので大型車もとおるが、ぎりぎり許容範囲内で自転車が通れる。日高方面の国道274号は逆にものすごい交通量で、日勝峠とか峠から延々と続く山間部の道が地図上ではあるが、自転車では絶対に通りたくない道の一つだ。
 西達布地区に入る。ここでは集落の名前に「のぎく」「すみれ」「かえで」「からまつ」など、植物の名前をひらがなで付けている。通りすがりの者としては、楽しい気分にさせられる。西達布地区に入ったらすぐに今度は麓郷に向かうため、西瓜峠の林道に向かう。しばらく舗装道路を走っているうち、青空が見え、やがてダート区間に入ったころには太陽が照り出していた。周囲はソバ畑である。ソバの花は天候には関係ないようで、白い小さな花がどこでも満開だ。

 12:00、麓郷着。
 晴になった。夏らしい濃い色の空、大きな雲が浮かんでいる。今回のツアーでは久しぶりの晴らしい晴だ。麓郷の田舎道をゆっくりと走る。どうも富良野周辺、とりわけ麓郷だけ晴れているようだ。
 曇っていそうな美瑛は止めにしようか、等と思う。
 麓郷はTVドラマの「北の国から」ですごく有名だ。幾寅の道の駅でも、便乗してさだまさしのあのテーマ曲がかかっていた。しかし、ドラマのオープニングをはじめ、随所で映し出されるあの丘や森の風景がすべて麓郷の街から近くにあるかというと、そうではない。エリア的には麓郷だが、あれはけっこう広い範囲で収録していると思われ、麓郷の街は基本的には平べったい場所に展開しており…(しまった、純が入ってる)。
 「北の国から」はTVドラマとして好きだが、麓郷に来るのは基本的に風景が好きなためだ。すっくと富士山状に「山の王道」という感じでそびえる前富良野岳・大麓山を背景にする田園風景が好きなのだ。
 それに、麓郷には「北の国から」ゆかりの場所がいくらでもあるが、自転車ではそのすべてを回っているとそれだけで時間を食ってしまうので、今回は小野田食堂の「大麓そば」を食べて北の国から関連はお終いとする(つもりだった)。
 小野田食堂は麓郷の交差点にある食堂で、ドラマでは地元の居酒屋という設定で登場人物がある時はしみじみと、ある時はおお騒ぎで酒を飲んでいる。店内にはドラマ関係者やら一般民間人の色紙が同列で飾られていて、いかにもそれっぽい雰囲気だ。

 12:50、麓郷発。
 本日第2の目的地、ベベルイ基線を目指す。なんだそりゃ、という感じの名前だが、「ベベルイ」は地名、「基線」は道路の名前だ。北海道では基本的に集落の地形に応じて直行グリッドで道路が作られていて、「基線(基準線のことか)」「1号線」「2号線」というような名前の付けられ方がされているのだ。
 このベベルイ基線は麓郷から上富良野までを強引に直線で結ぶ道路だ。「北の国から」を全く知らなかった90年(私はTVをあまり見ない)にこの道を通って、当時は石ころだらけだったこの道でパンクはするは後輪ハブの軸が折れるわ、とんでもない目にあった。しかし、山裾の森と畑の部分の接線であるこの道の風景はずっと気になっていた。6月に友人の結婚式で札幌を訪れ、足を伸ばして美瑛からレンタルバイクでここを再訪し、麓郷側約1/3が舗装されていたこと、ダート部分は見違えるほど整備されていたことを知った。まあそうだろうと思って行ったのだが…。
 そんなわけで、上富良野側からのアプローチのとんでもない厳しさはあるが、美瑛方面から麓郷へのメインルートとなるポテンシャルを秘めた道路だと思う。地図を見て興味を持たれたら試されたい。

 ベベルイ基線を上富良野の街が見下ろせる場所まで来たとき、ようやくどうやら美瑛が晴れていないことに気がついた。すでに13:30を回ろうとしている。このまま下って曇り空の下を走り、美馬牛あたりで自転車をばらして終わり、というストーリーが可能だが、このまま富良野方面へ逆行し、ベベルイ基線から見下ろせる農村地帯を走ってもいい。こちらはまだ走ったことのない道だし、上富良野から美馬牛へ急いでもどうせ知っている風景だ。
 予定を変更し、美瑛はやめた。布礼別・八幡丘を経由し、富良野へ降りる。
 通ったことがないからこっちにしたのだが、蓋を開けてみれば、このコースは「北の国から」関連箇所てんこ盛りのコースでもある。文章の趣旨と外れるのであまり細かい言及は避けるが、まず何と言っても7月放映の「98時代」で草太兄ちゃんが亡くなった場所、それから草太兄ちゃんの家、れいちゃんの家・納屋のあった場所、そして中ノ沢分校(宇宙人の涼子先生が住んでいた)。

 空には大きな雲が結構早いペースで動いている。見下ろす丘や畑、山の表面を日なたと影がゆっくりと動いている。ベベルイ基線から見て気になっていた風景だったが、こっちへ来てよかった。右には大きく前富良野岳・大麓山、左には遠く芦別岳関係の山々。周囲は広がる丘と麦・ジャガイモ・トウキビなどの畑、点在する農家、時々生えている木々。丘の端っこは森になっている。
 まあ、ここで晴れてくれたので今年の夏はよしとしよう。12・3℃の9月末並みの気温だって9月末に旅行できたと思えばいいじゃないか。何にしても東京の一番暑い時期は避けられたわけだし。

 富良野へ向かうことにした。いよいよファイナルラップだ。
 布礼別から八幡丘へは少しずつ標高が下がるが、まだ基本的には同じ台地上である。基本的に先は急いでいるが、草太兄ちゃんのフェニックス牧場、中ノ沢分校を横目でチェックしながら進む。中ノ沢分校ではライダーが記念写真をとっていた。あ、おれも…と一瞬思って、やっぱり先へ行く。中ノ沢分校は集会場になっているとのことだが、維持状態がいいようだ。
 八幡丘から道が大きく下り始めると、すぐにダートになる。れいちゃんはこんな急坂のダートを毎日ママチャリで通っていたのか、すげー。一気に下り道になるが、ダートなので速度を押さえて急降下。見ると、上の方で道路工事をやっている。今の麓郷へのメインルートは布部からの道だが、富良野市外からは距離的にはこっちの道の方が近い。数年後にはこちらがメインルートとして脚光を浴びることになるのだろう。
 富良野盆地に降り、駅近くまで一直線道路だ。追い風である。最後の最後で快晴・追い風のベストコンディションだ。

 15:00、富良野着。自転車をばらし始める。駅前には、延々と「北の国から」のテーマソングとご丁寧に時々純の朗読まで流れていた。「拝啓、恵子ちゃん」「父さん、ぼくは、ぼくは…」とか。おまけに駅そば屋まで「圭子ちゃんの店」とか書いてある。
 16:28発の特急「田園休暇ふらの4号」が目標なので、楽勝だ。おととい自転車をばらした時にも思ったが、アルミバフ仕上げのハブ表面には汚れが定着し、錆になりかかっている。そうでなくてもチェーンからフレームからリムからもう泥だらけで、リヤのフリーなんかもう黒色にしか見えない。
 よく乗ったものだ。掃除が大変そうだ。

記 1998.8/18

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Last Update 2003.2/4
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