田中さんと IDEAL#92 Diagonal
2号車で使用中 疲れない座り心地で止められません

　田中さんという人は元私の会社の警備員さんで、リタイヤした元自転車屋さん。今野製作所のすぐそばに住んでいます。
　1997年10月、私が最初に自転車通勤した日、会社の敷地内や建物のそばに駐輪してはいけない決まりを、自分の職務に忠実に、ちょっと厳しく私に言ったことを気にして、｢しまい込んでてもしょうがないんだよ｣と、ただでデッドストックの高級･高額パーツを持ってきてくれました。それからも、ちょくちょく何かとパーツを持ってきてくれたのです。

　現役時代はカンパ･島野･ロードレーサー系だったようで、自分でもカンパスーパーレコードフルセットのロードを復活させないと、と言ってました。私が｢サンツアーがいい｣等と言おうものなら、｢サンツアーねえ…でもあんなの、前田工業なんだよ｣と、私には到底承伏しがたい理由でサンツアーをけなし、島野がなぜ一人勝ちしたかを滔々と説明してくれたりしました。
　ちなみに、いただいた物の一部をを挙げると、

などなど、他にもまだたくさんあります。

　それが、2000年5月、田中さんと遂にお別れの時が来ました。私の会社の警備会社が変わるのと同時に、田中さんも退職することにしたのです。

　ちょうどそれは私が2号車をオーダー中の時でした。そんな話も田中さんにはしていたので、
｢高地くん、ほしいパーツあったらリストくれ！｣
と言う田中さんにゴロニャンして、いろいろリストを提出しました。まあ、私も欲しいパーツが全部田中さんの手持ちにあるとは思えなくって、遠慮しないで欲しいパーツをそのまま全部書きました。で、田中さんが大きな紙袋に入れて持ってきてくれたパーツは、サンプレ6600もどきのデュラエースEX(FD/RDからブレーキ、ステムに至るまでほとんどフルセット)がメインでしたが、その中に希望ばっちりのサドル｢IDEAL#92 Diagonal Natural PreSoft｣があったのです。
　なんか旧タイプイデアルのデッドストックは、2〜3万で取り引きされる場合もあるようで、愛子のパパさんに聞いても｢#92 Diagonalですか。あれ少ないんですよねー｣とのこと。調子に乗って、手持ちのサイスポパーツカタログ94(何故か94年版だけ買って持っていた)を見たら、#92は｢女性用｣。確かに今1号車で使ってるイデアル#90よりも幅が少し広い。これを鳴島くんに知られ、｢そーか、おかまサドルと言うわけだな｣とか言われて、けっこうむかつきました。
　でも、2代目ランドナーの片倉シルク、3台目の初代ケルビムで13年間使ってた｢加島プロフェッショナル(ブルプロそっくり)｣と比べると、似たような形状です。むしろツーリングにはこういう尻の座りのいいサドルの方がいいのだ！と納得することにしました。それに#92Diagonalはれっきとした男性用サドルのようです。

　田中さんの最後のお仕事の日、設計部の友人とお花を渡しに(私はネクタイをプレゼントした)行ったら、まあ次から次へと何人も、OLさんから重役まで、挨拶の人が絶えませんでした。愛想が良くって人なつっこい性格が、いろいろな人に愛されていたんでしょう。うちの会社もまだまだ捨てたものではないな、とちょっと感動しました。

編 2003.5/21