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赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路と航路 ルートラボ

五島列島Tour19#9 2019/5/5(日) 福江島-4 三井楽→福江-1 三井楽→岐宿町川原→惣津→水ノ浦→岐宿町岐宿→前小島→大坂峠→東浜町 66km ルートラボ

 明日は10日間の最終日。一応福江から五島福江空港まで走るは走るのだが、朝の10時発福江空港なので、最低でも9時には福江空港に着いておきたい。このため、1日走るのは今日が最後である。
 今日は午前中福江まで行ってから、午後は久賀島へ向かう。船の予定は福江13:35の木口汽船フェリーひさかで14:04久賀島の田ノ浦港着、帰りは田ノ浦発17:05から木口汽船シーガルで17:30福江着。
 久賀島では島内を一通り、3時間の久賀島ローラー作戦43.2km、獲得標高上り835m。手持ち時間にはやや不安がある。普通に走れば全然大丈夫なはずだが、淡々と脚だけ進める行程だと悔いが残るだろう。3時間を意識しながら行程を進めるぐらいで、何とか収まってほしい。要するに何か尺度があって判断できるというより、とにかく時間があればあるほど好ましいのだ。

 久賀島への13:35の前の便は、福江12:05の木口汽船シーガルで12:20田ノ浦着だ。フェリーひさかは小型フェリーで、自転車は乗ったまま乗船できる。シーガルはやや小型の船で、自転車は桟橋からの受け渡しになるものの、やはり予約などの手続き無しで積載可能とのこと。木口汽船、なかなか気が利いているね。久賀島での行程を優先するなら、できればこの12時の便に乗りたくなってきた。久賀島での行動時間が1.5倍になるのである。
 一方、福江島で三井楽から福江へ向かう予定コースには、福江島北東部海岸の、初日で通った県道162等が含まれている。そしてかなり遠回りでもある。内陸を国道384で福江へ行ってしまえば最短なのだが、コース前半の三井楽から河務まで国道384主体なので、北東海岸ののんびりした道が今日の福江島での大きな目玉のつもりだった。しかしここまで延べ7日。五島列島のいろいろな道を通ってきた状態で、今日もう一度初日のコースをなぞるという必然性が余り感じられくなっている。決して悪い道じゃないんだが、殆どが一度通った道と、初めて訪れる久賀島の優先度は、久賀島の方が高いんじゃないかという気がしてならない。天気予報は1日中晴れだし。
 それならそういうことにしよう。福江市街地まで基本的に国道384になってしまうが、ちょうど中間の大曲トンネル区間に、旧道っぽい大坂峠という道がある。少なくともトンネルよりは交通量は少ないだろう。低くて楽そうだし。途中岐宿半島で寄り道することになっているものの、ルートラボでチェックしたら所詮40km程度。7時半出発でまず12時には福江に着けるだろう。早めに着けば、福江のどこかのお店で昼食を食べられる。うん、今日はこれで行こう。

 朝食は7時から。昨夜の夕食に続き朝食も選りすぐりのメンバーで、大変美味しくボリューム充分。落ちついてたっぷりいただく事ができた。
 7:35、民宿西光荘発。まずは三井楽の町を掠め、まだ営業開始していない道の駅「遣唐使ふるさと館」を横目に国道384へ。
 三井楽漁港を囲む道への立寄りは、省略してしまう。いかにも港らしくて良い風景なのだが、ほんとに見える範囲での寄り道であり、これぐらいの大きな規模の港は今回もはや珍しくもない。それに空は晴れているものの、昨日の薄曇りが残っているのか全体的にうっすら霞っぽく、海の色の切れが今ひとつだ。昨日前半まで快晴が続いたため、こういう取捨選択ができるようになっているのだ。
 旧道経由で描いていたはずのGPSトラックも、旧道が90mぐらいの小さい丘越えになっているのを見て省略。この辺であまり頑張っても所詮は里の90m。

 岐宿町川原で、今度こそはGPSトラック通りに、白石浦から岬を回り込む惣津への寄り道へ。池のような白石浦の向こうの対岸は、惣津への寄り道の後に通る予定だ。GPSトラックに描いた国道384が、丘の中腹をトンネルで抜けているのが見える。その下の海岸際にへばりついて、旧道っぽい道が続いている。見る限り、国道384はトンネルで無駄に登ってトンネルで下っているのに、海岸際の道は静かでずっと平坦だ。拡幅国道が車の通行しか考えていないありがちなパターンだ。惣津の寄り道の後は、海岸際で行こう。

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 白石浦沿いの漁村、白石では、途中の八坂神社がなかなかの風格だった。五島列島では神社も風格たっぷりで、教会と同じく大切にされている様子が伺える。そういう、神社と教会が共存しているところが一つの見所なのではないかと思う。厳しい自然と向き合いつつ、信仰の厚い人々が協力して住んでいたように思われ、旅先の土地なのに何だかとても親しみやすく思えるのだ。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市岐宿町白石 白石浦 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 白石浦の先端から急に道幅は細くなり、入り組んだ山裾を登ったり下ったりして惣津に到着。人気の無いひっそりした道の終点、入り江奥の防波堤内側には、民家が数軒だけ建っていた。入り江には小さい漁船が1艘。道から車が来るより、海から漁船が訪れる方が多いのかもしれない。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市岐宿町惣津 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市岐宿町白石 白石浦 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 白石浦対岸の細道から国道384に合流し、岐宿半島の台地上、朝の畑ポタへ。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市岐宿町岐宿水ノ浦 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 地形図に描かれた岐宿半島の畑と田んぼの記号に理由無く魅かれて組んだトラックは、半島を時計回りに、GPSトラック無しではとても入らないようなけっこうな細道が防風林の間を進んでゆく。平地の畑は小値賀島や昨日通った三井楽っぽい風景にも思えるが、こちらはやや計画性を感じる直線区画である。用水管や街灯などもあり、機能的に整備された畑なのかもしれない。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市岐宿町岐宿 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 東岸では唐船之浦の湾が見渡せた。その頃には空の薄雲が完全に消え始め、日差しが海の色を濃く鮮やかに変え始めていた。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市岐宿町岐宿 唐船ノ浦を望む #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 岐宿港の、整った民家の低い屋根が並ぶ賑わいは、初日に唐船之浦から、何か商店があるかもしれないと羨んでいたその町だ。高い建物があったような気もするが、港の何かの施設だったのかもしれない。それにしてもここまで来るのに8日もかかってしまった。でも、あっという間だったな、等と感慨深い。
 国道384に戻って河務の手前で、初日には行かなかった前小島に立ち寄っておく。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市岐宿町河務前小島 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 とても小さい島に民家が数軒だけ。あとは森だが、一応独立した島で、長さ100m程度幅3〜4mの畦道のような橋が福江島本島との間を結んでいる。立ち寄ると言っても、どうせ橋の上で写真を撮っておくだけだ。しかし昨日の島山島と同じくここで立ち寄っておくと、行った島の数が1つ増えるのだ。福江島、中通島だってそれぞれ一島カウントだから、やはりその意義は大きい。

 河務から大曲まで、国道384は初日との重複区間となる。大曲で再び国道384から分岐して、大坂峠への細道へ。名前に反してたかだか標高110m、斜度は基本的にかなり緩く、ちょっと厳しくなる峠手前でもせいぜい6〜7%。道幅はそこそこ広いのに、とにかく車がいない道だ。ただ、道端にはやや高めの草が生い茂り、広葉樹が梢を伸ばして木陰が多い。普通こういう道だと熊が怖いのだが、幸い私は五島には熊はいないのを知っているのだ。茂みでがさっと大きな音を立てる鹿のお尻を、安心して他人事のように眺めることができる。
 路面にはトンボも帰ってきた。カワトンボに大型のイトトンボ、サナエトンボ、シオカラトンボ。赤トンボにオレンジ色のヤマブキトンボも多い。黒いナガサキアゲハ、同じく黒い羽に大きな白い紋が鮮やかなモンキアゲハもひらひら飛んでいて、もう1本南の猪掛峠を思い出す。

 峠から山肌を少し下って、山裾で国道384に合流すると、もう周囲に一気に民家が増えて福江市街の郊外っぽい雰囲気だ。そして見る見るうちに、道端にロードサイド大型店舗が並び始めた。今回のツーリングでは、有川近くでだけこういう風景を見かけた。福江の方が、当然の如くこういう店舗は多い。
 そのロードサイド店舗の中に、JAごとうの売店を見つけた。出発時大変世話になった母に、お土産で五島牛を送っておく。これが対面販売2割引とのことで、要するにお店で買うと安い、ということだ。
 私の前には1人、おばさんが今正に五島牛を買っていたところだった。
「東京へ送ったんですよ。孫が食べたいって言ってねえ」
そりゃあそうでしょう。あの霜降りを食べたら大好きになってしまう。
 送り終えて10:40。いい時間だ。

 10:55、福江着。大変いい時間だ。何がいいかというと、一昨日お昼に五島牛を食べた「望月」の営業開始は、多分10時か11時である。さっきJAごとうで五島牛を買ってしまったせいか、福江に下ってくる間、私の頭は望月の五島牛で一杯になってしまっていたのだ。しかも夜に望月で福江島最後の夕食を食べれば、あと2回も望月に来れるのだ。
 というわけで、11時に開店したばかりの望月へ。五島牛のステーキは今夜の晩餐に取っておき、五島豚のポークヒレカツ定食\1400をいただいた。当然のようにとても美味しくボリュームたっぷりで、大満足できた。
 この間、というよりあっという間にお客がぞろぞろやって来て、私のヒレカツ定食が来る頃には店内は一杯になってしまった。途中で用心のため、夜の席を確保するべくお願いすると、最後の一席を18時半から予約することができた。連休最終日の最後の一席、これも何かのお引き合いに違いない。午後もできるだけのことをして、夜の望月に望もう。

 11:40、福江ターミナル着。
 2日目にフェリーオーシャンの切符を買ったとき、切符売り場に木口汽船の窓口が見当たらないと思っていたら、木口汽船の切符は船内での発売するとのことだった。
 12:05のシーガル出発までまだ時間があるので、前回美味しくて気に入ってしまった浜崎かまぼこ店の売店でばらもん揚げの黒、いわしバーグ2串を行動食として仕入れておく。しかし一つだけと思って食べてみたら美味しすぎて、結局船内で半分を食べてしまった。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市浜町 福江ターミナル フェリーひさか #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 シーガルは黄色く塗られた船体にカモメのイラスト、ポップな「Seagull」ロゴが楽しげな船だ。日野皓正にHip Seagullという作品があった事を思い出す。桟橋からの乗り込みは特に通路など無く、人は桟橋と船を跨ぎ、自転車はちょっと持ち上げて係員さんに手渡しだ。どっちにしても船と桟橋の間は普通に跨げるぐらいで、自転車は係員さんがしっかり受け取ってくれる。ただやはり下が海ということで、一瞬だけドキドキする。
 船内は自転車を置く後部のピロティ部、中央の客席、そして船底の海中展望室に分かれていた。特に懐中展望室では、船が港に泊まっている間、魚が緑色の明るい海中から窓の周りに寄ってきて大変可愛らしい。カメラを向けるとさっと散ってゆく。向こうにもこちらがよく見えているのだ。

 出発すると速い速い。水しぶきは高く、船から続く白い水跡の形も鋭角の扇形になっている。これは高速船というやつじゃないのか。あっという間に福江の港、街が、そして鬼岳がどんどん遠ざかっていった。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島→久賀島 フェリーひさか #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
五島列島Tour19#9 2019/5/5(日) 久賀島 田ノ浦→田ノ浦 田ノ浦→五輪→久賀→深浦→田ノ浦 ルートラボ 40km

 12:25、久賀島田ノ浦港着。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市田ノ浦町田ノ浦 田ノ浦港フェリー桟橋 フェリーひさか到着 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 空は真っ青に晴れて、日差しが高く強い。やや暑くなってしまっている。空だけじゃなくて島の緑、岸の岩、白い砂浜に青緑と濃紺の海。全ての色彩が濃厚で鮮やかだ。港の静かな風景が更に魅力的になっている。
 帰りの船は17:10、往路と同じシーガルだ。余裕込みで久賀島の手持ち時間は4時間半、GPSトラックのコースは43km。余裕も充分だ。ただ、念には念を入れ、まずは一番遠くにある元五輪教会礼拝堂を最優先に、最初に訪れることにした。

 概略U字型の久賀島の中心は、田ノ浦からは山を越えたU字の凹みの一番奥、久賀湾沿いの久賀である。田ノ浦から久賀へは、田ノ浦から海岸沿いに少し南下した浜脇から県道167で島の背中を越えてゆく。登り始めの海岸には民家と自販機があった。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市田ノ浦町浜脇 県道167 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 自販機でコーヒーを飲んで、海岸袂の魅力的な船着き場で少し海を眺めてから、おもむろに登り開始。
 10%以上などもう珍しくもない。シーガルで一緒だったミニ教会ツアーっぽい団体さんが教会を見学中だった。こちらはこの際通過してしまう。教会の前はお客さんで一杯だし、いかにも鉄筋コンクリート造だし、元五輪教会礼拝堂最優先だし。
 峠部分は100m弱。下り始めるとすぐに谷間に降り、畑と田んぼが拡がって、もう少し下ると民家が現れ始めた。小学校前の信号は、久賀島唯一の信号である。通過しつつも忘れずに確認しておく。ここも「空から日本を見てみよう+」で知ったのだった。

 久賀湾東岸の県道167を北上してゆく。湾一番奥の山の懐に拡がる集落、大開を周回するトラックを引いてはいるものの、とりあえず旧五輪教会の後回しにしておく。見た感じだとのどかな農村風景が山をバックに続きそうで、心魅かれる。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市久賀町大関 県道167 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 今はとにかくまず旧五輪教会へ向かわねば。大開は帰りに落ちついて寄ればいい。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市久賀町 県道167 久賀湾を望む #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 久賀湾は山に囲まれた静かな内海だ。真上から日差しに照らされた明るい海の色と青い空、緑の山が印象的だ。途中の小さい丘越えの後、内幸泊から東岸の蕨へ向かう、久賀島の稜線を越える小さい峠へ。たかだか75mの登りだが、やはり斜度は10%超だった。
 下りはルートラボで選んだ、というより選べた実線の道へ。幅2m以下、荒れ気味のやや心許ないコンクリート舗装道が、茂みから山腹の畑を急降下。最後はいきなり漁村の裏道に着陸、民家裏手みたいな庭先みたいな土地利用の隙間のつながりみたいな空き地以上公道未満の細道を辿ってやっとまともな道に出た。この道、ルートラボでは一応新道とも県道167となってはいる。あまりの悪路に、下る途中で真っ青な海はちらっとしか見ていない。しかし五輪への道はあまり海岸に沿わず、内陸側の茂みへ続いてゆく。まあ、とりあえずまだ先へ進まねば。

 蕨で県道167は終わり、五輪への道は林道に変わった。
 畑から茂みの中へ、茂みから森へ、入り組んだ急斜面を巻きながら、急な登り下りがジェットコースターのように続いた。あまり延々と続く坂ではないものの、道が狭くて路面はやや荒れ気味、道の周囲はやや密に森が生い茂りブラインドコーナーだらけなので、登りも下りももう10km/h台ののろのろだ。
 でも路上は涼しい木陰の中だ。ところどころ周囲が開けて小さい畑が現れたり、濃い森の向こうに時々青く明るい海の色が見えたり、例によってトンボや蝶も多く、狭い路上空間とともに楽しい道だ。ただ、かなりののんびりペースのため、早崎を回り込むまで時間はやや長く感じられた。

 福見で道が一度海岸に降り、防波堤が切れた海岸に漁港が現れた。番屋に細いコンクリートの桟橋、岩場、明るい色の海に浮かぶ小さい漁船、遠くの岸辺。絵に描いたように鄙びた漁港である。海も森も空も、風景の色がお昼の高い陽差しでことごとく鮮やかで濃厚になっていたので、誘われるように細い桟橋の先端へ行って、青い海の真ん中にいる気分を味わってみたりもした。車だったらなかなかこういう所に立ち寄ったりはしないだろう。今日久賀島に来れて良かった、と思った。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市蕨町福見 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 つい長居してしまった。
 廃屋がやや目立つ福見の集落から五輪まで、登り返しがもう1回。ここでやや想定外の事態が発覚した。GPSトラックが、何と五輪まで描けていなくて福見の集落の中で止まっていたのだ。ということは、福見から五輪の往復は、計画の距離と標高差に含まれていないということだ。道がルートラボで拾えなかったのも気になる。車で通れない何かがあるのだ。それに地形図では、福見から五輪までが蕨から福見までと同じぐらい、いや、もう少し長いぐらい(結局たかだか3kmだった)、それに福見まで曲がりなりにも白道だった道が、福見から五輪までは単線のくねくね道に変わっていた。いかにこういう重要なことを何も知らずに、つまり五輪教会なんて知らずに計画していたかがよくわかる出来事だが、こうなったらもう先へ進んでしまえ。時間はまだあるし、天気だって申し分無い。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市蕨町福見 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 道は白道(幅員3〜5.5m)と単線(1.5〜3m)の違いぐらいに細くなったものの、幸いその後も路面と道の周りと線形はここまでとあまり変わらず、福見まで来てしまった身には淡々と感じられた。もう1回登り返した後、道は途中から短いダートに変わり、森の中の小さい駐車場に到着した。
 駐車場には「旧五輪教会堂まであと500m」と看板が立っていた。最後は徒歩なのだ、とこの時初めて知った。自転車を崖の斜面に立てかけ、フロントバッグだけ担いで遊歩道へ。つづら折れで遊歩道は海岸へ降り、やや幅の広い防波堤の上を歩いて小さい入り江に到達すると、入り江の向こうにやっと、やや古びた教会、その奥にやや風格が感じられる木造瓦葺きの建物が現れた。あれが目指す旧五輪教会礼拝堂に違いない。

 入り江の石浜をぐるっと回り、14:20、旧五輪教会礼拝堂着。
 私の到着とともに、手前の庫裏のような建物から、まるで新手のスタンド使いのように名札を着けた解説のお兄さんが出てきた。地元のNPOの方のようだ。お兄さんに従って、中へ入らせていただく。お話しを伺ううちに、この方は自転車乗りの方ということが判明した。
 内部には記憶があった。特にヴォールト天井に船大工の技術が応用されているという話が、事前予習した中でも印象に残っていた教会である。悲しいかな事前予習の段階ではどこがどこだかさっぱり記憶できなくて、今日この教会が現れるとは全く思っていなかったものの、やはりここまで来ることができて良かった。
 しかしそれ以上に、そういう技術を使って造られた空間自体が素晴らしいことが、とても嬉しく感動的だ。やはり建築は写真や映像じゃわからないと思い知らされるとともに、ずっとここまでやって来て、この空間に出会えたことの素晴らしさ。多分今回五島列島で訪れた教会の中で、一番来れて嬉しかった教会だと思う。

 時間を見ると、久賀島に着いてからそろそろ2時間半。何と手持ち時間が半分以上過ぎつつある。愕然とした。あれだけ余裕があると思っていたのに、日坂島での予定を全部予定をこなせない可能性が高い。思えば蕨から時間が掛かったからな。
 と思っていると、浜脇教会で追い抜いた教会ツアーの方が到着。さっきの駐車場に車を停められているようだ。浜脇教会以外にも回られているようで、やはり車は速い。教会ツアーには、私に説明して下さった方と同じNPOの方が着いて回られているとのこと。これからその方の解説が始まるところだし、そうでなくても礼拝堂の素晴らしい空間から去りがたいものの、久賀島での行程全体から考えるとかなり時間超過気味だ。解説開始のタイミングとともに、14:45、五輪教会発。
 入り江の向こうでもう一度、礼拝堂と入り江を振り返ってみる。まだ陽は高いものの陽差しはそろそろ赤みが混じり始めていて、彩りが増し始めた入り江が帰りを見送ってくれているような気になれた。明日の今頃はもう東京である。本当にここまで来て良かったと思う。

 帰路は福見、早崎、蕨と脚取りが早いように感じられた。しかし一方、17時までに予定コースの全部はもう回れないだろうとも思っていた。このため基本方針として、久賀湾西岸の深浦から浜泊、細石流までのピストン往復区間を、16時になった段階で折り返すことを決めておく。
 蕨からは再び県道167、往路と別の新道へ。新道と言っても幅4mちょっとの細道なのだった。久賀湾沿いもそのまま県道167で南下し、湾の西岸へ。往路に眺めた山裾懐の大開周回は、残念ながらもう省略せざるを得ない。
 久賀から海岸沿いを北上すると、道は途中の永里で幅が細くなり、海岸際から高度を上げて岸の森に続いた。時々東がんでさっき通った県道167が向こう岸に見えたりした。竹山から路面はコンクリート舗装に替わり、猪ノ木への分岐先で一旦岬越えとなる。もうこの辺りで、区切りの良い場所で折り返そうという気分になっていた。
 15:55、ちょうど深浦の集落に到着。16時まであと5分あるものの、5分進んでもうどうなるものでもない。ひっそりした集落の一番北、浜泊への、更に細道で激登りの登り返しの前で折り返すことにした。

 帰りは湾沿いの久賀ではなく、内陸の猪ノ木経由とした。コンクリート舗装にアスファルトを垂らしたような余り見かけない舗装の道を、山間の森から集落へ。盆地の縁を越え、久賀上手の田んぼの中で再び県道167に合流。田んぼがそろそろ夕方の赤い色に染まり始め、ウスバキトンボが飛び交っていた。
 再び浜脇へ急降下し、16:40過ぎ、田ノ浦港着。シーガル到着までもう少し時間があるので、この際田ノ浦の小さい湾を回り、港正面の道の先端まで往復しておく。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市田ノ浦町田ノ浦 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 16:50、田ノ浦港着。17:05のシーガル到着までもうあと15分。結局久賀島の予定は全部こなせなかった。しかし旧五輪礼拝堂と、五輪の美しい浜辺を訪れることができた。浜泊、細石流に訪れることができたら、更に感動は大きかったかもしれない。しかし、絶好調の晴れの日に久賀島を走れたこと、それだけでも満足できた(帰宅後、細石流の集落は1971年に集団移転済みと知り、やや残念な気持ちが少しは解消された)。
 などと充実した気分で、しばしシーガルを待つ。海が手前ではうっすら青く澄んでいて、遠くへ青い色が濃くなっている。陽射しは未だ東京での17時より高いものの、既に光は赤みを帯び、山と静かな海の色をますます濃く、景色に影を増やし、彫りを深くしていた。
 コンクリート防波堤から1mぐらいの高さにフジツボがびっしり着いているのに気が付いた。そう言えば、そこだけ石の色もちょっと黒ずんでいる。潮が昼に比べて更に引いたのだ。田ノ浦港のフェリー桟橋は浮桟橋なので、船の乗り降りには全く問題は無い事がありがたい。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市田ノ浦町田ノ浦 田ノ浦港フェリー桟橋 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 などとぼうっと考えているうち原チャリが1台、軽自動車が何台か、福江島へ渡る乗客を運んできて、あっというまに17時頃には桟橋の上が賑やかになった。
 シーガルが着くと、何と原チャリは係員さんと客の3人掛かりで全く普通に持ち上げられ、手渡しでシーガルに乗り込んだのだった。やるね、五島旅客船。

 17:10、田ノ浦港発。
 相変わらず空は晴れていた。しかしお昼と比べて光の色がもうすっかり真っ赤っかで、島も海も濃厚で鮮やかな色彩だ。

五島列島Tour19#8 2019/5/4(土) 福江島-4 三井楽郷→福江 長崎県五島市田ノ浦町田ノ浦 田ノ浦港フェリー桟橋 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 最後の夕方が、こんなに鮮やかな風景だなんて。もう五島列島も明日でお別れ、少し寂しいような気はするものの、目の前の風景と時間は意外に淡々と過ぎ、そんなに何か深刻にショックを受けているわけでもない。いつもその時はこういう時間が過ぎ、それでも旅は旅だったのだと、今回も後で思い出すのだろう。

 17:30、福江港着。船から桟橋へ自転車を受け取り、最後の船行程が無事終了した。陸を問題無く走れるということは何と有り難いことなんだろう。などと思いながら、初日も泊まった富久屋旅館へ。風呂に入って、さあ望月だ。まだ明日、福江空港までの行程が残ってはいても、これが最後の晩餐である。ここは満を持して五島牛ヒレステーキ200g、超レアでお願いした。そしてデザートに五島豚串カツ、生ビールを2杯で、もうすっかり上機嫌だ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成  RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成  RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

記 2019/6/16

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Last Update 2019/6/30
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