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km

赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路と航路
ルートラボ

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 小値賀島-2 前方郷→笛吹港 前方郷→笛吹港 8km ルートラボ>https://yahoo.jp/L84DRX

 早朝の港を眺めに外に出てみた。朝陽はもう完全に昇っていて空は明るく、薄いオレンジ色から薄い青へ変わりつつある。山影は未だ濃いものの海面が明るくなっている空を反射し始めている。気温は相変わらず肌寒さを感じるぐらい。
 港には釣り人が数人既に出動していた。漁船も軽トラもそろそろ出動し始めていて、意外に賑やかだ。毎日聞く漁船のエンジン音にももう慣れたのか、ごく普通の生活音に聞こえるようになっている。港そのものはあまり眺め込んでも別に新たな展開がある訳じゃないし、冷えそうなのであまり長居せずに宿に戻った。その後も時々外を眺めに出る度、朝陽は海面や停泊する漁船、道路や民家の照らす範囲がどんどん拡がって、湾全体が明るくなっていった。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 小値賀島-2 前方郷→笛吹港 長崎県北松浦郡小値賀町前方郷 民宿愛宕前より前方港を望む #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 今日は昨日確定した通り、津和崎丸で9時に笛吹港発で宇久島へ向かう。宇久島の次はやはり津和崎丸で中通島に向かう。中通島では津和崎先端部の最北部の道はできれば経由しておきたい。そのためには、津和崎にはできれば13時に着けると安心だ。これならもしかしたら奈摩西側の半島も経由できるかもしれない。13時に津和崎に着くためには、宇久島を12時半に出発しておきたい。
 という具合に、出発前に比べて、全体的に進行が前倒し指向になっている。一方で、先を急いで見るべきものを疎かにするとが無いように気を付けねば。やっと来れた五島列島なのだから。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 昨夜の夕食に引き続き、朝食も全体的に優しく味わい深い薄味だ。野菜が多いのも嬉しい。魚は鯵の干物、これも上品な味わい深い汐の味だ。民宿愛宕、漁港前の心に残る宿だった。

 7:35、前方郷民宿愛宕発。昨日既に今日予定していたコースの多くを通ってしまったので、もう笛吹港に向かってしまうことにする。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 小値賀島-2 前方郷→笛吹港 長崎県北松浦郡小値賀町前方郷 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 風がやや肌寒いが、むしろ身体がきりっと快適である。木場、中村郷と、昨日まだ通っていない予定GPSトラックを辿ったり外してみたり。畑や草、森の緑が、朝の赤い光に照らされて、鮮やかで明るく深い色だ。

 最後は中村郷の山裾手前、谷間の草原から急降下。文教地区の1本道の下手に合流して笛吹港へ。港町の細道を辿ってゆくと、「空から日本を見てみよう+」でくもじいの名刺を印刷した活版印刷所の前を通ることができて、大変嬉しかった。8:20、笛吹港着。

 昨日確認しておいた漁協前のスーパーで、パン3個とカップ麺を仕入れた。朝食直後だが、スーパー前でカップ麺は平らげておく。朝食はご飯をお代わりしたほど充分食べたが、宇久島で効率良く動かなければならない。パンも宇久島と中通島での補給食になるだろう。
 軽トラが時々行き来するのを眺めてカップ麺を食べつつ、全体的に小値賀島は里なのだと思った。福江島の平地より里っぽい。中通島とは正反対の地形である。どっちが好きという話ではなく、両方いい。ところでパンの製造元を見ると、中通島の有川だった。有川で作られたパンを小値賀島で買って、自分はどこで食べるのだろう。結局中通島に帰ってからだったりして。

 津和崎丸の船長さんに昨夜言われたとおり、昨日降り立った埠頭で待っていると、8時55分前に突然海上に点が現れ、意外なスピードでどんどん大きくなって、津和崎丸が桟橋に横付けした。想像通り、やや大きな漁船ぐらいのイメージである。
 幼児1名と引率のおじいさん、その他男性1名が降りた後、まず自転車を手渡しで船の前部に積み、太いロープでくくりつけ、9:00ちょうど笛吹港発。

■■■2019/6/8 ■■■http://takachi.no-ip.com/ ■■■高地 大輔 五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 宇久島 平→平 平→小浜→神浦→本飯良→平原草原→大久保草原→大久保→太田江→野方→平 26km ルートラボ>https://yahoo.jp/WvrDpC

 宇久島までは20分。最初は船底の客室にいようと思ったが、景色が見えないのと靴を脱ぐのが面倒だったので、入口部分に立って首を出しているうち、いつの間にか助手席にお邪魔することに。
 穏やかな今日の海を、波をかき分けて津和崎丸はぐんぐん、意外な速さで進む。昨日通った小値賀空港や野崎島やその他小島が、近くや遠くを過ぎてゆく。雨の日の輪行バスでも思うことだが、動力というものは凄い。力強さは大変心強く、一方で船底の下はもう海水なのだ、とも思う。
 晴れているので海の色は濃厚で印象的な紺色、浅瀬では鮮やかな明るい水色だ。船が波を切ると白いしぶきが拡がってゆく。陸地の島々の緑も岩の色も、濃厚で鮮やかで明るい、何と言えばいいのかわからないような印象的な色だ。これを見ものと言わずに何と言おう。

 宇久島13時半発だったのを、12時半〜13時に時間を早めるお願いについても、午前中のお客さん次第でうまくいけば12時半頃には宇久島の平港に来ていただけるかもしれないとのこと。連休だけあって今日は津和崎丸も予約が一杯、フル稼働なので、実際にお昼のいつ頃に平港に来ていただけるか、12時に電話して確認することになった。こちらもスケジュール管理しながら、宇久島での時間をこなすことになる。まあでも、3時間で41kmならまず大丈夫だろうとも思う。

 9:20、平発。小値賀島と同じく、時計回りでまずは南岸を西へ。
 港から台地上へ、たかだか40mぐらいの丘なのだが、宇久島でも坂の斜度は相変わらず10%基調のようである。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 宇久島 長崎県佐世保市宇久町下山 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 蒲浦で漁港に降り、再び台地上へ。その後も下山、福浦、鬼塚と台地と丘の登り下り、畑と森が断続した。
 宇久島の地形は、基本的には隣の小値賀島と似ているのだが、違うのは低地と台地上の標高差が小値賀島の2倍くらいなことだ。まあ20m以内と40〜60mぐらい、というぐらいの違いなのであまり大したことはないものの、小値賀島の後だからか、宇久島の方が登り下りがしんどいことは確かだ。

 神浦の上手で道沿いに学校が現れた。いや、学校ではなく元小学校とのこと。「空から日本を見てみよう+」で、2016年に廃校になると紹介されていた学校だ。RC3階建ての校舎はなかなか立派で未だに小綺麗である。
 海岸まで降りて、堤防内側のコンクリート舗装を通って漁村の中へ。今日は海も空も軽やかで鮮やかな明るい色だ。のんびりと、車が来ない道をてれてれ惰性で進むのが気分が良い。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 宇久島 長崎県佐世保市宇久町神浦 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 本飯良では田んぼと浅瀬の湾が堤防で隔てられていて、再び堤防内側の通路を道に出るまで進んでゆく。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 宇久島 長崎県佐世保市宇久町古里 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 海も緑も鮮やか、風は爽やかで車も来ない。想定ペースに全然乗ってないのがやや気がかりだが、お構いなしにますます海の色と開放感に脚が停まってばかりいる。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 宇久島 長崎県佐世保市宇久町古里 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 堤防から見えていた砂浜、汐出海水浴場へも、この際立ち寄ってみた。白い砂浜の照り返しがまぶしく、海が明るい水色で透明度が高い。海上には寺島が大きく浮かんでいる。あんな島へ渡ってしまったら、もう1日海でも眺めてのんびりするしか無いんだろうな。
 基本的に素晴らしい砂浜の風景なのだが、昨日の小値賀島と同じく、合成樹脂系の漂着ゴミが目立つ。海が美しくても、観光地度が低いと掃除する人すらいなくて、海岸はこうなってしまうのだろうと思った。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 宇久島 長崎県佐世保市宇久町本飯良汐出浜 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 砂浜から道路へ戻り、森の中に12〜3%ぐらいの坂から島南西部の断崖上へ。宇久島でのコース最高標高はせいぜい100mちょっとで小値賀島のコースと変わらないのに、計画獲得標高値が小値賀島の2倍ぐらいあることを、そろそろ身体で実感し始めていた。
 断崖上を島の西岸へ回り込んでゆくと、突如周囲に草原が拡がった。「空から日本を眺めてみよう+」で紹介されていた「草原平原」である。ここは楽しみにしていた。

 名前通りの草原平原である。草が綺麗に苅り揃えられているのはゴルフ場だから。とはいえ料金無料とのこと、確かに入場管理に相当するような施設は何もない。草原平原は放牧場でもあり、ゴルフ場に本当に牛が放牧されていた。五島列島では、ミネラルを含んだ海風が牧草を育て、五島牛が美味しくなるらしい。牧草地がゴルフ場だと、流れ弾に当たったら牛でもたまらなく痛いだろう。幸い今日の所は、ゴルフ客は1組だけだった。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 宇久島 長崎県佐世保市宇久町平原草原 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 海を見渡す草原と松林の境に続いていた細道が、GPSトラックが内陸の車道へ向かう分岐から、茂みの向こうへ降りてゆくのが見えた。海岸方面へ更に細くなって、やや寂しげな雰囲気を漂っている。あっちは確かルートラボで拾えなかったのと確か行き止まりだったので、空撮では舗装っぽかったが内陸へ向かうことにしたんだった。
 ここまで時間を食い気味なので、ここは手堅くトラック通りに内陸へ登る道へ。しかし海側には時々、さっきの細道が草原の中に、舗装のまま続いてゆくのが見えた。道幅は軽トラがすれ違うのも難しそうな雰囲気だ。あれがルートラボでトラックを拾えなかった理由だろう。でも、あの細道は眺めが良いに違いない。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 宇久島 長崎県佐世保市宇久町大久保 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 と思っていたら具合良くGPSトラックが少し先で道の外側、海岸方面へ分岐していた。しかし分岐に着いてみると、その道はかなり豪快に海岸へ直滑降しているのだった。そして眼下の海岸には、黒い岩場から丘の上の草原へかなり細い道が下って登っている。あれが計画時に地図で見ていた大久保平原だ。車が何台か細道をのろのろ走っているので、景色は良いのだろう。
 せっかく県道で70mまで登ったのに、また海岸だ。繰り返される里と海岸の繰り返しに、そろそろうんざりし始めていた。それに時刻はもう11:00。平からここまで1時間半、平に戻って12時半発とすると、残りあと1時間半。あんな所をいちいち登って下っていたら、宇久島東岸コースを相当カットすることになるに違いない。人生には選択と集中が必要である。大久保平原は止めだ。こっちだって眺めがいいじゃないか。
 と、大久保平原をショートカットすることにして、30m以上、ピーク手前まで登ってはみた。その間ずっと悩んでいた。ここで先へ進んでもまたこの後、似たような状況が現れて急ぐことになる可能性は高い。少なくとも、今この凄い風景を前に中途半端なことをすると、後でずっと後悔する。
 というわけで引き返し、GPSトラック通りに細道へ。眺めたとおりに下る下る。つんのめりそうなので降りて押そうかと思う程、かなり急なコンクリート舗装下りが続いた。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 宇久島 長崎県佐世保市宇久町大久保草原 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 結論から言えば、大久保平原には行って良かった。やはり宇久島で一番心に残った場所となった。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 宇久島 長崎県佐世保市宇久町大久保草原 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 道は一度ほんとに海岸まで下った。不自然なほど真っ黒い大きな岩に石ころ、まさに風にそよぐ草原、明るく鮮やで透明でいて濃紺の、凄い色の海を眺めることができた。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 宇久島 長崎県佐世保市宇久町大久保草原 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 しかし岩場に近づくと、やはり海の色彩とは完全に無関係の、漂着ゴミがかなり溜まっていた。梱包材の発泡スチロール、ペットボトル、ビニール、浮き等々。黒い石の間、自然の風景とは無関係な材質はますます目立っていたのだった。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 宇久島 長崎県佐世保市宇久町大久保草原 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 54歳にもなると、予想外の展開による大きな気持ちの変化になかなか気付きにくい。自分が何を感じていたか、何度か思い出してずっと後で始めてわかるのだ。この時はちょっと悲しく、楽しんでばかりでいいのか、という気持ちになったかもしれない。行く手の反対側、岩場の陰の砂浜には小型乗用車が1台停まっていた。確実にそちらは更に絶景なのだと思われたものの、家族連れっぽい先客への遠慮、先の行程への焦りもあり、そのままトラック通りに大久保平原を去ることにした。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 宇久島 長崎県佐世保市宇久町大久保 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 再び登り返して県道160に合流。もう選択と集中の巻き巻きリストラ進行で島東側内陸の回り道は省略し、島北部の太田江の漁港に降りてみた。真っ青な空の真上から入り江を強い日差しが照らしていて、真っ青な港にぷかぷか浮かんだ白い漁船、錆びて崩壊寸前のガードレールが静けさを盛り上げていた。
 何だかこの風景で、宇久島での行程に満足できる気分になった。これだけ寂れた、枯れた漁港はなかなか見られるもんじゃない。そしてもう1度宇久島に来れるなら、今度は1日かけよう。でもその日は今日みたいな晴れとは限らない。晴れでも雨でも、今日の旅は今日しかできないのだ。ならば今日、晴れの中通島で予定通りに行動を進めて楽しんでしまえばいい。平港に戻って中通島へ向かおう。

 県道160に戻ってから、松尾で畑の裏道へ。丘の台地で地形を日和見しながら南下し、最後は平へ急降下。
 一応1周はしたものの、終盤の島の東岸はやや打ち切りっぽい宇久島訪問ではあった。まあしかし、満足はできた。晴れの日に宇久島を観ようと思ったら1日必要だ、ということもよくわかった。
 12:00、平着。もうすっかり日差しが高く、照り返しが暑い。五島列島に来てから初めて暑さが感じられている。津和崎丸は12時半に平に来て下さるとのこと。理想的だ。午後も順調ペースで行程を進めてゆきたい。
 さっきから腹が減り始めていた。目に付いた買物主婦っぽい方に教えていただき、「あられ茶房」で五島牛ローストビーフ弁当を入手することができた。

 12時半前、湾の中に突然点が現れ、あっという間に大きくなって津和崎丸が到着。船が桟橋に近づいて驚いた。船の高さが、桟橋の高さより明らかに1m以上低くなっている。海面が低くなったのだ。僅か3時間の間にこれだけ潮が引くとは。
 これじゃ船には怖くて乗れない。想定外の事態だ。と思ったら、しかし桟橋にはところどころ60cmぐらいの幅の階段が、下に降りているのだった。そして津和崎丸は上手に階段脇に船を着けて下さった。考えてみれば、こういうことは日常以上の当たり前の話なのだろう。
 60cm幅の階段の外側が海なのは怖ろしいものの、やはり思い直すと山サイではこんなのごく普通の話でもある。恐る恐る担ぎで階段を降り、自転車手渡し完了。

 12:35、平港発。
 朝の乗船時に引き続き、海も島の緑も岩もものすごい色濃度だ。鮮やかというより色自体が濃いというか、それでも色は明るく、眩しくすらある。津和崎丸がかき分ける白いしぶきは気分が良いが、海水も見るからに粘度が高そうだ。というかそれは塩分含有量の現れであり、そういう見た目の印象より、船先端で潮風を叩き付けられている自転車が悲鳴を上げているのは確かなことだった。頼む、2号車よ、辛抱してくれ。津和崎までもう少しだからね。
 等と思っていると、船長さんは途中船のエンジンを緩め、野崎島の中腹に建つ神島神社を教えて下さった。ごろごろの岩浜に鳥居が、かなり切り立った森の中腹に確かに屋根が、そして象徴的な高い岩場が見えた。
 しばし海上にぷかぷか浮かんでいると、今日も黄砂の影響で少し遠くの島々がまるで霞みでもかかり始めているように霞んでいることに気が付いた。そう言えば午前中から目がパチパチしていたのも、黄砂のせいかも知れない。船長さんは黄砂と呼ばずにPM2.5と呼び、顔をしかめておられた。

■■■2019/6/8 ■■■http://takachi.no-ip.com/ ■■■高地 大輔  RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成  RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成  RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成 五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 中通島-4 津和崎郷→今里郷 津和崎→津和崎灯台→津和崎→小串→似首→奈摩→青方→今里 49km ルートラボ>https://yahoo.jp/d8s5hG

 13:00、津和崎港着。
 山裾に張り付く小さな漁港に、真上からお昼の日差しが照りつけていた。南側には、これから南下してゆく予定の県道218が、海岸から立ち上がる山腹ををどんどん登ってゆくのがずっと見通せた。確か100m以上ぐらいまで一気に登るはずだ。
 この時間なら、南へ向かう前に津和崎灯台の周回部分を通り、中通島最北端の車道を訪問しておきたい。灯台に立ち寄っていいかもしれない。ただ、登り返しは100m超。この後奈摩から中通島西岸の林道に足を延ばすため、なるべく余裕を確保しておきたくもある。

 津和崎港は桟橋の階段が平港より広い。担ぎ上げるのにちょっとはらはらするのも数秒。無事上陸後、船長さんは手を振って、すぐさま次の仕事へ向かっていった。
 船長さんと会話していた顔なじみらしきおばさんが声を掛けてくれた。
「津和崎灯台には行かないのか。昨日は灯台を掃除しに行ったときに大阪から来た女性サイクリストと話した。頭ヶ島から走って来ていたらしい(すなわち私が頭ヶ島ですれ違った女性ロード乗りの方と思われる)。どうせ自転車ならせいぜい10分で登っちゃうでしょう。」
 10分か、なかなか鋭いところを突いてくるね。只者じゃない。じゃあ、行かないわけには行かないようだな。

 というわけで、津和崎の民家の間から北に向かって分岐する道へ。斜面の木立の中からちらちら青い海の色が見えたり時々海が見渡せたり、やや開けて周りが集落に変わった後、約10分(約の多い方)で稜線に到達。
 そのまま周回区間へ。「灯台へ3分」の小さい看板と2〜3台分の駐車場の前を通過し、もう少し先で舗装路と分岐。灯台周回区間となった。あまり下りたくないが多少下って何かの公園入口の前を過ぎ、再び20%ぐらいの登りを経て、駐車場へ帰ってきた。20%の登りは厳しかったものの、後方の海と間近な野崎島、やや遠い小値賀島を振り返るのは、坂の途中で立ち止まる口実に充分だった。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 中通島-4 津和崎郷→今里郷 長崎県南松浦郡上五島町津和崎郷池尾 津和崎鼻 津和崎灯台周回道路 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 周回区間のノルマはとりあえず果たしたものの、ここまで来たら灯台へも立ち寄らねば。徒歩3分なら遠いわけでもなさそうだし。駐車場に停めておく自転車に鍵を掛けなくても、ここで自転車を盗ってゆく物好きはいないだろうな。

 森の中をまあ3分ぐらい。灯台の下手がさっき周回区間で通過した公園の一番上手のようだ。灯台の周りは森が少しだけ開けていて、北側の海と野崎島を望む位置にパーゴラ状のあずまやとベンチがあった。公園側から登ってきたらしい方もいた。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 中通島-4 津和崎郷→今里郷 長崎県南松浦郡上五島町津和崎郷池尾 津和崎鼻 津和崎灯台前 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 野崎島がすぐ近く、多少黄砂に霞みながらもよく見わたせる。小値賀島も、さっきまでいた宇久島も見える。これからもう夕方には中通島の中程まで南下してしまうのだ。さらば小値賀島、宇久島よ。

 13:45、津和崎港を通過し、いよいよ南下開始。
 県道218は青い海を見下ろしながら、米山の集落の中を登り続けた。道は比較的広く安定しているものの、山肌がかなり急斜面なので、道の際に近づいて海を見下ろすのが怖ろしい。にも拘わらず、道沿いには民家や畑がびっしり貼り付いている。日差しは真っ青な空の真上から照りつけ、森からは鳥の声が響き、空中には黒いアゲハやクマバチが飛んでいる。照り返しが強く、道を登っていると汗をかく。ただ木陰も多く、海風のせいか大変涼しく快適だ。
 米山教会は一見して建設年が新しそうだったので、この際通過してしまう。この頃になると教会はもうあまり珍しくなくなって、比較的新しそうなら割愛するようになっていた。

 米山の南端から、県道218の高度は中通島東岸の中腹〜稜線近く、標高100m前後で安定した。
 怖い程切り立った斜面、青い海と青い空、森の緑。目に入る眺めがことごとく濃厚な色で鮮やかで、強い日差しが一杯だ。遠景は霞み気味ではあるものの、これだけ日差しが強いと海と空の青が薄く水色になってゆくやや急な色の変化が目新しく見える。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 中通島-4 津和崎郷→今里郷 長崎県南松浦郡上五島町津和崎郷 県道218 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 遠くの断崖にも見下ろす入り江にも、大きな岩の塊が立ち上がっている。斜めや縦に地層らしい筋が入っているのが更に逞しい。海上にはぽつんと小さい島が霞んでいる。小さいながらも切り立つ岩、生い茂る木々の勢いは、見るからに人の営みを拒む無人島である。
 走りながら風景に見入っているとつい道を飛び出してしまいそうだ。怖ろしくて道の端を近寄りたくない。脚を停めても、道の端に居るとなんだか腰から下が不安定におぼつかない気がする。それぐらいに切り立った斜面である。
 なかなかの絶景中、稜線には送電線が彼方へ続き、風力発電も所々に建っている。また、道の周囲は山の中腹ながら、意外な頻度で集落が断続している。ここは生活の場なのだ。

 一本松で、県道218は東岸から稜線を越えて西岸へ移った。地形図には稜線手前の分岐から、赤波江教会がある赤波江の集落へ直接行けそうな道が描かれていた。しかしこの道は途中が破線となっていて、ルートラボでは拾えず、更に空撮では完全に森が覆い尽くしていた。
 現地では、分岐のやや手前から、地形図で破線になっている辺りがかなり切り立った斜面の森になっているのが見えた。あそこに道があるとは思えない。分岐ではやや細い道が分岐はしていたものの、そのまま西岸へ向かうことにした。
 東岸から西岸へ移ると、風景の表情が少し変わった。いや、切り立った斜面の森と断崖、青く静かな海はあまり変わらないのだが、海上の遠景に続く断崖と島々の眺め、光線の方向、海流によるものか波の感じが変わり、風景の表情が何だか変わるように思えるのかもしれない。

 東岸からしばらく位置は安定しているものの、景色が素晴らしいのと何だか高さが怖ろしく、20km台前半以上で走る気にはならない。しかしのろのろながらとても楽しく、やはり20kmともなると位置は確実に少しづつ進んでいた。
 真浦では海岸へ降りる分岐を通過。計画時には、ローラー作戦で海岸も稜線越えも、ピストン区間は全部行こう、等と考えていたのに。島ノ首ではさっき直接アプローチを断念した赤波江教会への分岐が現れたものの、既に私は教会への興味が薄れていて、目の前の激坂を80m登って稜線を越えて向こう側へ降りる気にはなれなかった。一応スマホで赤波江教会の写真や建設年なども調べて、比較的新しい教会であることも確認しておく。
 江袋でも海岸へ豪快に下ってゆく分岐を通過。もうなりふり構わないリストラツーリングである。まあ、今ここまで来れているなら、一昨日行けなかった奈摩西側の半島の林道に脚を伸ばせるかもしれない。林道訪問に懸けてみたい、という大義名分があるにはある。

 高峰で県道218は再び東岸へ。地形図に描かれていたとおり、つづら折れで切り立つ斜面を登ってゆく道が遠くから見えていた。しかし近づいてみると、あっさりトンネルが登場。もちろんここは有り難くトンネルで抜けてしまう。東岸で変な通行止めが現れるかもしれないのだ。とともにトンネルが現れ始めたことで、曲がりなりにも確実に位置が南下して中通島の中央部に近づいていることが実感できた。
 再び東岸へ出ると、西岸へ出る前より日が傾いていて山が日差しを遮り、穂鉈の岩場や山の襞にも影が増えているせいか、風景全体の色彩が多少穏やかに変わりつつあった。小さな半島半島の袂に続き始めている漁村を地図で確認すると、立串である。何、もう立串なのか。それならもう一つ先の小さい岬の凹み辺りは、一昨日朝までいた小串の集落だ。もう浦桑、青方も近いのだ。一杯省略したし、もう14時過ぎだしな。

 大串から南、中通島には東西両岸に道が通るようになる。東岸は一昨日までいた小串から一昨日通った道だ。西岸は大串以降長大トンネルに大きな曲線、見るからに拡幅済みの幹線県道なのだが、東岸はもう2回通っているし、この後西岸の林道に向かうなら西岸一択だ。それに所詮はまだ大串とか奈摩とか、幹線道路でものんびりした感じなのだろう。

 県道218は大串の山側をバイパスして県道32に合流、再び稜線へ向かってゆく。地形図から想像していたほど下らないのは斜面が急だからだろう。今の私には有り難い。
 最高地点は120m、手持ち地形図「立串」で未だ国民宿舎の表示があるホテルマルゲリータを眺めて西岸の下り区間へ。この辺にも一杯立ち寄り候補の道があったものの、現地へ来てみるとどこもかしこも急斜面の激坂である。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 中通島-4 津和崎郷→今里郷 長崎県南松浦郡上五島町曽根郷 県道32 白草峠 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 さすがは新道区間、もはや殆ど登り返しが無く、安定した斜度で海岸の奈摩まで下り続けた。約1kmの青砂ヶ浦トンネルを抜けると、奈摩の漁村が見え始めた。漁村は意外に広く、青方で買った揚げ物のお店は多分見つかりそうにない。まあいいや。今は林道優先だ。

 手頃な自販機を探すのにちょっと行き来した後、16:05、奈摩発。
 中学校脇の細道がアプローチである。登り30m程はやや厳しいものの、取付から森に入ってからは緩やかな登りが続くのは、この時間ありがたい。
 林道は奈摩湾内の東岸を北上してゆく。森の中には時々隠し畑のような畑が現れた。緩やかに、しかし尾根と谷を巻きながらどんどん登ってゆき、いつの間にか岬を巻いて西岸に出ていたようだった。木漏れ日が目に見えて明るくなっていた。
 190m辺りで高度はしばし安定した。基本的には森の中の道から、時々海と行く手の斜面や海岸部の断崖が見渡せ、その度に日差しが少しづつ傾き、赤みが増していることがよくわかった。

 道が下り始めて、分岐が登場。「新上五島町清掃工場」という表示もある。昨日太古から眺めた海岸の清掃工場には、ここから下るのだ。もう青方も近いはず。
 その後は軽めのアップダウンを繰り返しつつ高度を下げ、船崎の漁港を経由し、対岸の半島岸の石油備蓄基地を眺めつつ青方湾の海岸に着陸。こちらも向こう側も、青方湾は全体的に人の営みで賑やかであり、青方に戻って来た気分になった。

 17:30、青方通過。やや腹が減っているものの、もう宿到着は近い。この際農産物販売所や漁協も通過、フェリー埠頭分岐を過ぎ、跡継トンネルを抜けるともう今里湾だった。一昨日雨の中で眺めた、湾を横切る鯉幟が懐かしい。
 今里大橋を渡って対岸の集落へ。街ではなく集落の雰囲気が漂う、落ち着ける民家の佇まいが嬉しい。今夜はここで泊まれるのだ。

 17:45、今里郷の一番奥「農家民宿片山」着。宿の前、一見川か湖のような水辺は実は海である。岸辺の石垣がいかにも漁村らしい。

五島列島Tour19#6 2019/5/2(木) 中通島-4 津和崎郷→今里郷 長崎県南松浦郡上五島町今里郷 農家民宿かたやま前 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 夕食は一見素朴ながらその実洗練された珠玉のラインナップで、大変美味しい。皿うどんもボリュームたっぷりだった。

 毎日希望をもってThetaVをUSBに接続していたのだが、今日は何と充電機能が復活していた!PC接続は未だにできていないものの、これで何とか最終日まで360°写真を撮れそうだ。

 明日はいよいよ福江島に戻る日だ。船の時刻は13:50土井ノ浦の五島旅客船ニューたいよう、その前が10時半若松港の五島旅客船フェリーオーシャン。どちらにしても若松島発だ。このため中通島南部を訪れて、最後に若松島に渡る、というのが基本となる。
 出発前に組んだ予定は、中通島西岸の国道384を南下する計画だった。途中行き止まりコースをこなしながら、南岸をぐるっと回って若通島へ向かっても、13:50土井ノ浦なら間に合うだろうと思っていた。
 この計画の小さな問題は、その後の福江島だ。14:40に到着し、明日の宿、福江島西端の玉之浦まで42km、3時間強。夕食予定時刻の18時までには行けるだろう。しかし、ややぴったりすぎるような気もする。もう少し余裕があると嬉しいな、とも思う。
 そもそもそれ以前に中通島で、西岸の国道384自体、雨だった4/29に通ってしまっていた。雨だった悪印象は割り引いても、明日向かうべきはむしろ4/29に諦めた東岸なのではないか。と思っていたら、宿がある今里郷から東岸へ直接、しかもあまり登ること無く抜けられるという、まるで今の私のためにあるような道を発見してしまったのだった。
 そこでルートラボで検討し、   ・東岸から時計回りで中通り島南部を周回   ・若松島に抜ける というコースで何とか辻褄が合った。どうせ土井ノ浦13:50に間に合えばいいのだから、若松港10時半は間に合えば間に合わせればいい。

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記 2019/6/8

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Last Update 2019/6/30
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