2017/5/6 四国Tour17#6
下長谷→高山-1

下長谷→平井→平野→横平 (以上#5-1)
(以下#5-2) →岩松 (以上#5-2)
(以下#5-3) →宇和島 (以上#5-3)
(以下#5-4) →吉田→中浦 (以上#5-4)
(以下#5-5) →明浜→高山  140km  ルートラボ

ニューサイ写真 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 昨夜あれだけ星が出ていたのに、夜が明けてみるとなかなか明るくならないほど雲が低く垂れ込めていた。しかも、折角の田舎の朝なので外を軽くお散歩しようと出かけてみたら、雨まで降り始めた。
 今日の天気予報は三原で7時から晴れ。宿毛は9時から、宇和島は1日じゅう晴れの予報である。ほんとか、信じるぞ、とは思っても、これだけ毎日当日の朝予報に裏切られていると、流石の私も何が起こってもあまり驚かない気分だ。

 

 朝食中、雨は普通に本降りに変わった。三原の天気予報も現状を勘案したのか、いきなり朝のうち雨、10時頃から1日曇りに変わっていた。宿毛はそれでも9時から晴れのまま、宇和島は午後から晴れの予報だ。まあそれぐらい時間が経っていて、ここ三原から離れたら、確かに三原の現状はどうあれ、何とも言えないとは思える。
 朝食後、雨が弱まるのを待っていても雨が弱まる気配は全く無い。というか、宿毛へ出たら晴れるというパターンなのかもしれない、天気予報の通りなら。それならいくら待ってもあまり意味は無いだろう。どっちにしても、出発は早い方がいいのだ。

 今朝も雨具を着て、7:25、下長谷「農家民宿 くろうさぎ」発。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 県道21から昨日通らなかった町道の来栖野トンネルを経由、三原市街の先から地形図にもGPSにも載っていない新しい道へ。

 町外れの交差点は、実は宿毛方面へのかなり緩い峠である。のみならず、一応土佐清水・足摺岬を先端とする半島の東岸、西岸への分水嶺的な場所となっている。

 町中からはほとんど登らず、とても峠という気がしない峠部分の先では、しかしながら峠だけあって、突如平野部の平井へ約200mの下りが始まる。

 初っぱなの森の後、一旦下り斜度は落ち着き、中筋川ダムによる貯水池「ホタル湖」が登場。

 小さい湖ながら、落ち込んだダム湖の周囲には旧道がくねくねしているのが、湖上の陸地を飛石のように橋で横切って行くこちらの道からよく見える。また、新道には湖上で意外に細い道が合流している。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 小ネタ的見所のひとつひとつは興味深いものの、さすがに出発直後だし、まだこの辺でのんびりするわけには行かない。それに雨も降っている。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 ダムから先の下りは、地図上での距離に比べてやや長く感じられた。その分、いきなり平野が開けて突如平井に到着。標高の割には彫りが深い地形なのかもしれない。

 ようやく雨は上がったものの、雲はかなり低く空気は湿っぽく、晴れにはまだ程遠い。宿毛はすぐ近くなので、この辺りは9時頃、いきなり低い雲が切れて晴れ始めるのかもしれない。しかしこれから向かう県道4の谷間は標高は低いものの、海沿い平地の宿毛に比べて晴れ始めるのは遅れるかもしれない。何しろ、三原を出てからここまで晴れる兆しが全く無い。まあ何がどうでも、今のところ雨が上がっている。このまま進み続けるのに、何の変更理由も無い。

 中筋川の土手から畑の裏手みたいな道を、例によって裏道GPSトラックで繋いでいつの間にか通過。8:05、平井から県道353へ。

 軽い丘越えの後、隣の谷間の平野で県道4に合流。ここから今日前半の山間コースだ。

 早速谷間が狭くなってきたと思ったら、下坂本で空気中の湿気が細かい霧に替わった。

 細かい霧はけっこう密度が濃い。そして未だに路面は乾くことは無く、雲も低くて暗い。9時から晴れの天気予報通りに晴れ始める兆しはまだ全く無い。

 坂本からはダム新道への登りとなる。標高は100m未満なのに一気に辺りは山深くなった。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 例によって私の地形図では坂本ダムが建設中だが、もう完全にダムは完成後ある程度の時間が経過していて、県道4もダム湖外周の幅広新道に切り替わっている。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 山肌が切り立って入り組み、深く落ち込んだ貯水池とで作られた上下奥行に掘りが深い空間はダイナミックな変化と共に見応えがあり、ところどころで脚が停まる。対岸に見える旧道っぽくて林道っぽい細道は静かそうで、晴れていればあっちの道も良かったな、等と思う。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 しかし天気の現状は、さっき麓で漂い始めた霧粒がますます大きくなり、坂本ダムを過ぎた辺りから雨と呼んで全く差し支えないものに変わり、更に湖岸を奥に進むにつれてけっこうな本降りの雨となっていた。

 

 こちらも晴れるはずという希望的観測があり、次第に強くなった雨に、完全に雨具を着るタイミングを逃してしまっていた。しかし雨具を着るのに都合がいいような、施設っぽい建物や民家、湖岸っぽい展望あずまやや適切な木陰も全く現れなかった。気温の高さと登り基調の道と化繊の衣服により、辛うじて体温が下がること無く助かっていた。


 

 9:30、横平でやっと無人ガソリンスタンドが登場。雨宿りにかなり具合のいい屋根もある。ここでようやく雨具を着ることができた。
 落ちついてからスマホで天気予報を再チェック。さあ、本当に今日はこの後晴れるのかな。と、やはり例によって天気予報は朝の状態から悪化していて、宿毛は雨後曇り、宇和島は曇り後昼から晴れに変わっていた。今ここは宿毛の山間で、天気は明らかに朝より悪化しているし、雨後曇りなんて生やさしいものではなさそうだ。山間だから天気が悪いのか。それならあり得る話だ。
 今朝の三原では考えてもいなかったが、もしこのまま雨が続くとすると、この先県道4の谷間から分岐する山間の県道286〜県道46の訪問は諦めるほうがいい。つまり3日連続の下方修正になってしまう。
 それに、県道286〜県道46へ向かわずにこのまま県道4継続で岩松へ向かうと、中駄馬〜岩松が丸々2011年の経路と重複してしまう。過去経路との重複自体は私のツーリングでいつものことなのだが、今日はその後、宇和海区間がほとんど2001年のコースの再訪となるため、せめて岩松で重複しないよう、県道286〜県道46のコースを加えたというのに。まあ前回の宇和海は16年前。去年とかの訪問ではないので、新鮮味自体はそれほど損なわれないかもしれないが。

 横平で坂本貯水池区間が終わり、道は谷底へ降り始めた。上日平で川原に続いていた道は谷間が狭くなると共に森に突入、ぐっと狭くなって対向1車線に。

 森の入口には「かんぺいロード」という看板が立っていた。ほんとに間寛平なのか、と思ったら似顔絵まで描かれている。何かのいわれがあるに違いない。寛平ちゃんか、おれも好きだよ、等とも思う。しかし雨は相変わらず本降り、あまり1箇所に立ち止まる気はしない。

 渓谷の広葉樹林は、斜度は緩いものの山側の岩場が荒々しく露出して野趣溢れる雰囲気だ。道が細いためか、車はあまり来ない。

 森の中にも相変わらず雨が降り続いていたものの、新緑が喜んでいるように鮮やかだ。

 晴れの日の木漏れ日はきっと素晴らしいのだろう、と思う。いい渓谷だ。

 渓谷が終わると再び谷間が少し拡がって、井の谷、中出井と小さな集落が登場。道は中出井から拡幅工事が上流側へと始まっていて、上出井から拡幅済み区間となった。しかし坂本貯水池以降の登りの緩さは相変わらずだ。場所自体はもう結構な山間である。

 犬除では向かうはずだった県道286の分岐が遂に登場。分岐してゆく県道286は林道かと思う程かなりの細道だ。その県道286が向かって行く谷間は、もう100mぐらい上が雲の中。かなり簡単に諦めが付いた。

 中駄馬からは2011の再訪区間。その時向かった大峠林道が分岐してゆくのが感慨深い。素掘りの豪快なトンネルだった大峠トンネルと、道全体、特に黒尊側での身体を染めてしまうような山深さを思い出す。今は大峠トンネルは落石のおそれがあって通行止めらしい。そして、黒尊から登り返す黒尊スーパー林道も、今のところゲートから先が通行止めのようだ。旅先の道も出来事も、一期一会だと思わされることが多い今日この頃だ。

 御内は年賀状に写真を使ったほどの、2011年四国ツーリングのハイライト。雨上がりの朝の農村風景が印象的だった。しかし今日は薄暗い空の下、かつて写真を撮った場所も通過してから振り返って気がつく始末で、なんだか気分は冴えない再訪だ。気持ちを切り替えて今日は今日の旅をしなさい、というツーリングの神様のお達しかもしれない。
 岩松までもう12km。県道4で平野・岩松間は44kmなので、もうかなり岩松に近づいている。しかしこの道全体のピークは、御内の岩松側の端にある。集落の端っこがまるでお皿の縁のように、宿毛からここまで延々と緩い谷を遡ってきた中筋川と、ここから先一気に岩松へと下ってゆく岩松川の分水嶺となっているのだ。峠部分の標高はわずか280m。こkまで谷間自体は切り立った山に囲まれていただけに、珍しい道である。四国は地名も地形も奥が深い。

 道が下り始めると、周りは集落から森に替わった。しかし急な斜度はすぐ7%程度に落ちつき、田んぼが狭い谷底の道端に続き始めた。御内までの登りがあまりに緩かったためか、こんな下りでも結構急に見える。いや、確か2011年の朝の登りは結構しんどかったはずだ。

 下っても下っても、谷の幅はあまり拡がらない。やっと下りが緩くなって谷間が拡がり始めた上芋地谷で標高30m台。まだそう広くない谷間の、それにしちゃ広い岩松川が、山々に挟まれた谷の中でどこか悠然とした表情を醸している。海そのものは手前の山に遮られてまだ見えないのに、谷間の標高がもう海岸に近いせいか、まるで川が落ちついた池みたいなのだ。いつもながら、というよりこの川を眺めるのが3度目で、岩松の谷間全体の風景を、岩松川が特徴付けていることにやっと気が付いた。

 11時過ぎでもう宇和島市の海岸沿いなのに、晴れそうな気配は全く無い。天気予報は昼以降晴れなんじゃなかったのか。

 県道が平地に降りきった段階で県道4を降りて裏道へ。11:15、岩松着。

 岩松という町は陸地に深く入り込んだ狭い北灘湾に面している。鉄道は通っていないものの、宇和島から宿毛までの町としては中の大ぐらいの規模だ。

 裏道で市街地を通過していると、2011年に泊まった三好旅館が登場。改めて眺める旅館は、なかなか堂々と由緒正しい。いかにも町の宿っぽい構えである。そして町中の細道とは言え、順当に旧道っぽい道に面している。思えばなかなかいい宿だった。


 岩松川を渡って宇和海沿いの県道37へ。

 津島では県道沿いの「南楽園」という観光施設の看板や、道の両側にスポーツ関係・学校関連施設が目立つ。歩道部分にもトロピカルな樹木が並木状に植えられ、全体的にバブル期のリゾート地っぽい雰囲気が漂っている。前回2001年には南楽園近くのアメリカンロードサイド的なカフェテリアでアメリカンな軽食を食べ、それが宇和島以南の宇和海沿岸に続く県道37のやや弱い印象を、ちょっと裁けた印象にすり替えていた。
 もうお昼前。これから宇和島まで、宇和海の海岸沿いで食事できそうな店は記憶に無い。前回の訪問から16年経っているので、もしかしたらその後コンビニぐらいはできているかもしれないが、今は昼食のタイミングには悪くない。しかし、県道37沿いに以前立ち寄ったような軽食施設は見つからない。私的に津島の印象はアメリカンな軽食(もちろん実態とは全く違います)なので、軽食そのものの喫緊の必然性とは別に何か肩すかしを喰った気分だ。
 しかしここで何か探さなくても、この先の宇和海沿いには小さい漁村が延々と断続する。どこかでじゃこ天ぐらいは食べられるだろう。そもそも宇和海再訪の大きな目的の一つが、揚げたてのじゃこ天を地元漁村で食べることなのだから。
 というわけで南楽園近くでは缶コーヒー休憩程度でお茶を濁すことにした。自転車を停めたついでに天気予報を見直すと、宇和島の晴れは15時からに変わっていた。15時に宇和島に行ったら結局雨が降り始めるのかもしれない。まあ、毎日の事だ。

 南楽園の先で軽く半島を越えると、景色は津島外れの何でもかんでも南国リゾート風から落ちついた小漁村へと完全に、一気に入れ替わった。

 宇和海の入り組んだリアス式海岸に、県道37は続いてゆく。道沿いには漁村が断続し、小さな湾毎に漁港がある。

 内海には波が無く、小さな漁船がおびただしく浮かぶ狭い空間も手伝い、池のように静かな親しみやすさが感じられる。時間帯によっては漁船がことごとく出撃し、さぞかし賑やかなのだろう。

 小さな漁村の一つ一つは古びてはいるが全く寂れていない。そして海岸ぎりぎりに続く道と小さな漁村の小さく密集した民家、道ぎりぎりまで迫る海面とびっしり並ぶ小さな漁船や海上の船小屋(のような小屋)は一体の生活空間を作っていた。

 漁村のひとつ、国永で、「大山かまぼこ店」というお店を発見。お昼時で仕事が一段落しているような静かな雰囲気を醸しているお店構えに、これは絶対じゃこ天を売っているお店だろうと思った。残念ながらお店自体は閉まっていたものの、対面の生協売店に目当ての大山かまぼこ店製じゃこ天が売っていた。
 2001年の宇和海訪問時に、八幡浜〜明浜のどこかで食べたじゃこ天が忘れられず、その後いろいろな場所でじゃこ天を探しては食べてみたものの、その時を越える味には会えていなかった。そのため、宇和海の漁村で食べるじゃこ天には大きな期待があったのだ。6枚も買ってしまった大山かまぼこ店のじゃこ天は、果たして独特の豊かな塩味に揚げたて特有のぷりぷり食感が期待を裏切らない絶品だった。ただ、これに味を占めてその後も併せて合計13枚ものじゃこ天を食べた結果、夕食時にはやや胸焼け気味になってしまった。

 漁村が切れると、海岸から立ち上がる山が道に迫り始めた。山肌は夏みかん系の畑で一杯だ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 空は相変わらず薄暗いものの海は島のような山を映し、そうでなくても入り組んだ海岸線を舐めるように辿るために、ほぼ常に前方か海側に陸地が見える。

 基本的に海岸際に続く道には、あまりアップダウンは無い。しかしやはり時々半島越えはあった。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 前回の記憶と言ってももう16年前。それに何度か現れた坂はせいぜい40m、最大でも80m弱ぐらい。地形をよく眺めて等高線を数えないと把握しづらいぐらいなのだった。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 宇和島までの間、終始天気は冴えなかった。更に宇和島に近づくと、空はやや暗くなってきたような気がした。

 もしかしたら、まさかの雨の宇和海になるかもしれない。そうなったら宇和島から伊予吉田へ各停でも使うか。しかし、今日ここまで輪行解体無しでずっと来ているためか、フロントバッグ+サドルバッグだけの軽装でも、なんだか輪行作業そのものが非常に面倒臭く思えた。それに空は暗く水滴はぱらつくことはあっても、雨具が必要になるような雨は結局降らなかった。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 居心地が良い内海の道でも、この天気では事前にルートラボのトラックを準備していた半島ピストンに向かう気はしない。それに時々写真を撮る度に時間を費やしたお陰で、結局半島への分岐ではことごとくそのまま宇和島を目指すことになった。まあ分岐から道が結構登っているのも見えたし。

 14:20、宇和島道の駅「きなんせ広場」着。

 

 敷地を贅沢に使い、やや慌ただしい国道56から奥まった立地としている道の駅だ。しかしその入口はが分散していて、更に駐車場が建物の敷地と分かれているためか、直感的に建物に入りづらい面がある。しかも、オープンカフェ的場所が裏手に設けられている。国道56から離して建てた意図は賛同できるものの、ひたすら配置が気になって、更にきょろきょろ人気の無い場所をうろつくあやしいおやじにも気を取られ、あまり落ち着けない休憩となった。


 14:50、宇和島発。やや寂れた町から山沿いの落ちついた旧市街を経由して県道274へ。ここから明浜までしばらく未済経路となる。

 市街地を抜けたところでやっと日が射してきた。と思ったら、急に空の雲が一気にどこかへ飛んでいってしまい、ちょっとした丘越えで汗が噴き出るほど。これを待っていたのだ。

 空の青さ、蜜柑畑の緑に、丘越え途中で思わず脚が停まる。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 ちょうど15時。やっと天気予報が当たってくれたのだ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 丘の向こうの吉田側、海岸へ降りる森の途中では、宇和海と吉田の町を見渡すことができた。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8  パノラマ合成

 細道の木陰に木漏れ日が差し、見渡す海の色は晴れた空を映して明るく青く、湾の向こうの山も明るく照らされ、全体的に風景が軽やかで陰影豊かだ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 吉田の町が谷を登ってゆくのも、海岸沿いに漁村が続いてゆくのもよく見える。人の営みで、明るい眺めが更に明るく感じられた。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 眺めと居心地の良さに、しばし脚が停まる。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 吉田は漁業関係施設やホテルなどが多い。吉田湾に沿った町の栄えっぷりはややノスタルジックな味わいで、岩松から宇和海を辿ってきた身には程良く賑やかだ。宇和島は栄えすぎていて、高速道路やロードサイド店舗の大きすぎて人間生活っぽくない空間感覚、港湾施設の錆や色褪せたペンキがハードボイルドすぎて都会っぽすぎる。それらは間違い無く人間生活に必要な物なのだが、具体的な人の生活というより何か都会という大きな生き物の体臭とか垢みたいなものというか、旅の中では浮いた風景だったな、と吉田の明るい港の風景を前に思わされる。

 吉田港の一番奥で折り返すように県道314へ。道の海側が開け、狭く奥まった湾や建物がびっしり並んだ対岸の営みがよく見える。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 気が付くと、もはや空には雲がほとんど無くなっていた。こうなると色彩はひたすら明るく軽やかだ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
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 赤みを帯びた光が尚更鮮やかで、そろそろ夕方の潮風が涼しく感じられる。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 現れては過ぎてゆく漁村は、民家の壁にしても建具にしても、古びてはいるが精密でよく手入れされている。単に風景が美しいというより元気な漁村というか、民家の板壁や家の脇に置かれた網、そんなものののひとつひとつに人々の営みや暮らしが身近に感じられる。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
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 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 岬先端の大良までいくらも無いものの、そこまで脚を延ばすのはためらわれた。いや、単に次から次へと入れ替わる地形と風景にすっかり夢中になっていて、脚を先に進める方を選んだだけの話かもしれない。とにかく何となく気が急いて、次の明浜湾に向かうことにした。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 中浦で県道273へ分岐、40m弱の半島越えと内陸部の蜜柑畑を経由。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 筋で再び海岸の市道へ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8  

 漁村を縫って市道は明浜湾の奥へ向かってゆく。さすがに市道だけあり、道幅はかなり細い。湾に面した海岸線の道で、ここまで細い道は今まで通ったことが無い程だ。道幅なりに漁村は小さく、小さい集落なりに漁船も小さい。その漁船はびっしり道に接するように浮かんでいた。道が細いからか、道の空間が海面にとても近いような気分になる。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 集落が途切れると岸辺の森が道に迫ってきた。そして海の向こうに、明浜湾対岸の明浜の漁村がよく見える。空も海も真っ青で、緑が鮮やかだ。しばらく風景に眺め入っていたいが、もう17時。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 外海へ向かう道の正面に、太陽が眩しい。風景が鮮やかに輝いて見えるのは、日差しが横から強く当たっていて、光の色が赤みがかっているからだ。本格的に夕方になってきた、ということだ。

 地図で明浜から今日の宿がある高山までの距離を再確認しておくと、意外に距離がある。淡々と進めば夕食に遅れる心配は全く無いものの、淡々と進む必要はある。

 畔屋から、海岸の道は国道378となった。相変わらず小綺麗な木造住宅が目立つ町中は賑やかで、ここまでの宇和海に見ることができなかった町の風格も感じられるのは流石に国道の面目躍如だ。
 ここから再び2001年に訪れた区間の再訪であり、16年前でもはやイメージしか残っていない、一番印象的だった宇和海のイメージと、目の前の風景がぴったり合った。そしてこの道はずっと八幡浜へ続いているのだ、という気分になった。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 17:15、白浦着。もう夕方がどんどん進む時間帯である。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
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 与村井、深浦、俵津、狩浜と漁村が断続した後、最後は岸壁の70m登りへ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 少し高度が上がると、外海方面に浮かぶ半島や小島の影が見え始めた。豊後水道の向こうの九州本島もうっすらと見えるような気がする。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 青から夕方のオレンジに変わりつつある空の曖昧な色、曖昧な色を照らす海の色、大分涼しくなってきた海の風。もう全部いい。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
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 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成
 

 朝からいろいろと諦めることが多かった今日の行程だったが、最後の2時間ぐらいで全部、今日までの雨続きも含めて挽回してしまった。この時間に、夕食まで時間に余裕を持った気持ちで訪れることができて良かったと、心から思う。そして小綺麗な民家、集落の元気な生活感は、今回のツーリングで見かけた農村と共通していて、本州の私が訪れる多くの農村では過疎化に飲まれて消えつつある日本の暮らしそのものだったように思えた。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 18:10、高山「民宿 故郷」着。
 地図で見てわかってはいたが、湾の砂浜に面して、大変に素晴らしい立地である。湾にはキャンプ場に温浴施設にこの宿しかない。そしてこの場所、元は炭鉱だったらしい。この宿については民宿とは名乗っているものの、レジャー施設の一員的な宿なのかもしれない。

 

 「夕食はお風呂の後でもいいですよ」とのことで風呂に入ろうとすると、風呂は徒歩5分の温浴施設を利用するとのこと。風呂が別の場所とは聞いていないが、まあよくあることだ。むしろこの素晴らしい立地で四国最後の夜を過ごせることが有り難い。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 夕食は、事前に聞いていたとおりにゴージャスなものだった。特に郷土料理との「日向めし」。鯛の切り身刺身と出汁とろろが掛かった卵かけご飯がその実態で、普通盛りで大変にボリュームがある食べ物だった。

記 2017/7/4

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Last Update 2017/7/5
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