北海道Tour17秋#14
2017/9/17・18
開陽・網走120km夜の乗用車輪行
&女満別空港針のむしろ

  針のむしろの心の支え RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 寝入る前にメールだけチェックしておこうと思って良かった。
 メールのリストに、「欠航のお知らせ」という文字を発見。何ですって!
 開いてみると、折り返し便の確保の都合で、中標津発羽田行きが明日は欠航になったとのこと。折り返し便が運休か、その手があったか。メールの時刻は19:06。だいぶ前だ。温泉から帰る途中だろう。安心していてすっかり出遅れた。それにしても欠航の決定が早すぎるんじゃないのか。他にどうやって帰ればいいんだ。
 等々一度に考えが湧いてきて、全体としては頭がいっぱいになってしまって笑うしかない。絶望的なのか何とかなるのか絶望的なのか、いや、諦めてはいけないのかそんなのキレイ事なのか。
 何しろ人生52年北海道旅行34年、初めての事態である。

 こういうときは話を広げるに限る。広間へ戻ると、「お帰りなさい」と皆さんが迎えてくれた。
 まずは明日の中標津便欠航をお知らせする。京都のお客さんにはまだ明後日の欠航の連絡は来ていないらしい。台風18号は、明日の夜には完全に北海道は通過していそうだ。それなら明日飛行機が全道で欠航しようが、明後日は台風一過で問題無く動かすのだろう。
 明日は釧路便ももちろん全部欠航だ。そして1日会社を休む前提で調べた明後日以降の中標津便も釧路便も、何と見事に4日先まで満席だった。普段は休日だろうが何だろうがガラガラなのに、そして平日便なのに。きっと明日乗る予定だったお客さんが殺到しているのだ。
 千歳空港便も、さっきのニュース通りに調べた全ての便が明日は欠航だ。ひょっとして飛行機じゃ帰れないんじゃないのか、と思い始めた。一番飛行機が飛びそうな道東の一番東でこの始末。明日はきっと全道で飛行機が全滅なのだ。そういう前提で動くべきだろう。事態の深刻さがだんだん理解できてきた。まずい、まずいぞ、これは。

乗換地点 欠航した
当初予定
札幌夜行
バス案
釧路始発
バス案
中標津空港発
 
14:35

ANA
378便


























16:25
中標津発

北都交通・阿寒バス 

釧路BT着
札幌駅前着
22:40

北都交通


6:20
6:20

阿寒バス

8:20
 
釧路発

JR根室本線他 


南千歳着
札幌着
11:24

スーパー
おおぞら6

15:07
 
札幌発
南千歳発

JR室蘭・函館本線他 


新函館北斗着
6:53


スーパー
北斗4

10:22
 
15:17

スーパー
北斗16

18:09
新函館北斗発

JR北海道新幹線 


東京着
10:49

はやぶさ
18

15:04
18:36

はやぶさ
42

23:04
 
羽田空港着

 まず、さっきまで私と逆の立場だった京都のお客さんが、中標津発の夜行バスで札幌へ出てはどうかというアイデアを下さり、そんなものがあるのかと目を白黒させる私に替わり、時刻まで調べて下さった。22:40中標津発、札幌6:20着。朝のスーパー北斗で函館に向かい、昼前に新幹線にさえ乗れれば夕方には東京に着けるとすぐに思った。ちょうどその頃台風は函館辺りを通過するようだが、とりあえず接続はそうなる。明日切符を買うなら、特急と新幹線は自由席立ちっぱなしになるだろう。そんなの全然構わない。東京に帰ることができるのだ。30年前、いや20数年ぐらい前まで、東京から全鉄道で、しかも全自由席で、根室だろうが稚内だろうが到達していた頃を思えば、現在は北海道新幹線開通により到達時刻が比較にならないほど短縮しているのである。久しぶりにスーパー北斗にも乗れる。昔ほど速くなくて振子停止中だが、いや、今よりずっと遅いキハ183系をチューンし、検査期間まで短縮してスピードUPしていた頃から、私は北斗の熱い走りにけっこうしびれていたのだ。とにかく、今から中標津を出発すれば、鉄道で明日じゅうに東京に着くことができるということが、新鮮で斬新である。
 もう20時半過ぎ。中標津市街は10km先だが、22時40分に確実に着くにはタクシー輪行すればいい。石川さんも、「じゃあ中標津まで送りますよ」と仰ってくださっている。よし、これで行けるぞ。行くぞ。行かねば。

 しかし私が有頂天になっている間に、素速く京都のお客さんが調べてくださった、夜行バス運行事業者の北都交通札幌営業所では、
「この時間はもう予約は受け付けていない。実際に空いているかどうかは根室営業所か地元じゃないとわからない」
とのことだった。根室営業所に電話してみると、バスの予約は既に満席。もしかしてキャンセルなどというものがあればと思って中標津の乗車券販売元に電話しても、キャンセルは出ていないと言われた。
 ならば明日朝一のバスで中標津を出発したらどうか。6時台の阿寒バスに乗れば、釧路バスターミナル着は8:20だ。検索ソフトで調べると、やや乗り継ぎ連絡は悪く、11:24の釧路発札幌行きスーパーおおぞら6で15:07南千歳着。新函館北斗着は18時過ぎ着、北海道新幹線で東京着は23時台。途中台風でスーパー北斗が遅れたとしても、新青森にさえ明日中に着いておけば、翌朝始発の新幹線で東京着は9時台。東京に着いてからスーツとシャツが置いてある都内某所の実家に駆け込めば、お昼前には出勤可能だ。体調崩してとか何とか、遅刻を言い訳すれば、首の皮一枚で何とか辻褄は合う。

 しかし、ここで気が付いた。近年のJR北海道は、諸般の事情で天災に対して慎重だ。今回みたいな規模の大型台風なら、早めに全面運休となるだろう。乗り継ぎ可能な時刻に札幌まで辿り着けたとしても、函館には辿り着けない可能性は極めて高い。一度札幌に行ってしまったら、明日はもう千歳空港は全運休だし、明後日以降の飛行機の予約が取れるかどうかはわからない。最悪、札幌で2〜3日足止めを食らうかもしれない。それなのに、未だ宿すら確保できていない。
 この段階で20:50。ちょうど大河ドラマ後に再び始まった台風のニュースで、明日のJR北海道の運休区間が発表になった。案の上、運休は想像以上に山ほどあって、道央〜道南はほぼ全滅。少なくとも朝6時以降、室蘭本線の苫小牧・室蘭間が運休だから、札幌から鉄道では帰ることはできない。
 帰還の道は閉ざされた。2004年だったか、往路に大雨で北斗星が停まった時思い出す。今回の方が事態はずっと深刻だ。そして天気予報精度はあの頃と比べものに無いほど上がっている。ということは、明日東京には帰れなくなったということである。

乗換地点 欠航した
当初予定
札幌夜行
バス案
釧路始発
バス案
予約できた
女満別空港便
中標津空港発
女満別空港発
 
14:35


ANA
378便


























16:25
 
18:30

ANA
4780便


























20:10
中標津発

北都交通・阿寒バス 

釧路BT着
札幌駅前着
22:40

北都交通


6:20
6:20

阿寒バス

8:20
 
釧路発

JR根室本線他 


南千歳着
札幌着
11:24

スーパー
おおぞら6

15:07
 
札幌発
南千歳発

JR室蘭・函館本線他 


新函館北斗着
6:53


スーパー
北斗4

10:22
 
15:17

スーパー
北斗16

18:09
新函館北斗発

JR北海道新幹線 


東京着
10:49

はやぶさ
18

15:04
18:36

はやぶさ
42

23:04
 
羽田空港着

 ここでまたもや、京都のお客さんが
「あー、女満別空港便1席だけ空いてますよ」
と教えてくれた!ほんとか!
「今すぐ押さえてください」
などとついお願いしてしまうほど焦ったものの、すぐさま自分のスマホで予約。焦ったために時間が掛かりつつも、18:30発羽田20:10着が1席だけ残っていたのを確保できた。念のため他に紋別空港や帯広空港便を調べても、全部埋まっているか欠航だった。
 今思い出しても、何故道東、いや、道内で唯一飛んだ女満別空港の便が空いていたのか不思議なほどの奇跡的な出来事であり、そして明日じゅうに帰れる道が繋がった瞬間だった。帰れるどころか、常識的な時間に家に着いてちゃんと家で寝て、明後日は無事に出勤できるのである。
 女満別便の運行にしても、天候次第で欠航や引き返しとなる前提だし、中標津便の株優もまだ解放していないのでばか高い正規料金購入である。でも、いくら掛かってもいい。少なくとも現段階で繋がっている、唯一の東京への道なのだ。欠航した中標津便の予約と株優は、明日女満別空港で何とかなるだろう。
 天気予報を見ると、女満別空港は日中でも降水量は一桁。中標津の予報より遙かに少ない。時間別予報も奇跡的に安定している。オホーツク海の気圧が偉いのか、又は大雪の壁は高く厚く、台風ぐらい屁でもないのか。さすがは冬に流氷が押し寄せるだけのことはある。
 女満別発は明日18:30。中標津からなら自走したって着ける。いや、雨と強風の中自走は無理だが、とりあえずこれでひと安心だと思った。ところが、この時石川さんが
「じゃ、これから網走まで送りますよ」
と仰った。えっ、と耳を疑ったものの、
「明日は、台風に備えて交通機関は全て止まると考えるべきです」
と言われてその場の全員が納得。さすがは地元の方、そしてプロのドライバー、鋭い。というより、台風の度にこういう事態は何度も経験されているのだろう。
 もう21時。それでもこの季節なら、網走のビジホぐらい空いているだろう。ここでまた京都のお客さんが先回りして、東横イン空いてるみたいですよ、と調べて下さっていた。東横インなら私は会員だ。網走駅近くの宿として、ここ以上の選択は無い。
「網走まで車なら2時間です。24時までに着きますって言って下さい」
 こんなアドバイスが石川さんと京都のお客さんからポンポン出てきて、いくら感謝してもし足りない。
 その後は速攻で自転車を解体し、21:20、民宿地平線発。かなり慌ただしく、前代未聞、夜の網走120km乗用車輪行が始まったのだった。

 

 開陽から道道150で養老牛経由、清里峠越えで緑へ。経路は全て既知の道、道道150はさっき通ったばかりだし、清里峠だって夏に通ったばかり。後半は幹線道路主体で、知ってるつもりでも前回通ったのはもう15年以上前、という道ばかりだ。でも、どこもまるでつい最近通ったような気もする。どの道にしても、前回はこんな秋の夜に、しかも車に乗って通ることになるとは思ってもみなかった。
 周囲は完全に真っ暗だ。道は広く路面も線形も安定していて、ヘッドライトに照らされた道端の茂みや道路端の標識や電柱が、暗闇を次から次へと去ってゆく。森か牧草地か、それ以外は開けている場所なのか谷間なのかは、見ているだけじゃさっぱりわからない。でも北海道の道、あそこを通過したから今こんな感じの地形のはずなどと思い出しながら、助手席でやや受動的に暗闇を眺めているのは退屈ではなかった。BGMは井上陽水カバー曲集の抜粋版で、中でも「嵐を呼ぶ男」が格好良い。そうでなくても知った曲が再び登場する毎、時間の経過を意識させてくれた。網走へ着くまで4周ぐらい聴いたような気もする。
 清里峠越えは登りがだらだら長く、夏に来ているのにどういうわけか自転車でのろのろ登るより距離があるように思えた。下りは更にだらだらと長く。やっと緑の集落に着いたときにはもう網走に着いたような安心感すら覚えた。しかし現実にはまだ半分未満。
 小清水では石川さんが「この町、風景の雰囲気が好きなんですよ〜」とのこと。確か私がこの町に来たのは2009年。とにかく日差しが厳しく干上がりそうになってセイコーマートで休憩したことと、集落以上市街未満の程良い規模の町並みが記憶に残っている。
 海岸沿いの国道238へ出て、藻琴、鱒浦、もうすぐ網走だと思いながら、前回来たのいつだっけと考えてみたら、何と2001年だった。

 23:15、網走着。私を東横インに送り届け、石川さんは再び開陽へ2時間の道程へと出発していった。
 まさか網走で寝ることになるとは、朝には全く想像だにしなかった。事態の把握が甘すぎたと言えば甘すぎた。そして何人もの方のお世話になって、首の皮一枚で明日東京へ帰る道が繋がったことは驚くべきことであり、奇跡的である。このお気持ちに報いるためには、とにかく少しでも確実に事を進める必要がある。飛行機は18:30発だが、空港にはもう7時台の空港行きで朝のうちに着いておくことにする。

 

 翌朝。5時頃まだ路面は乾いていて、風が強くて雲が暗く重く低く動きが速いだけだったのが、6時半頃から雨が降り始め、7時には早くも雨が強まってきた。やはり朝の内に女満別空港に着いておくのが正解なのかもしれない。
 7:40、網走発。空港行きは各停の路線バスだ。網走、呼人、女満別までは国道35、ここも前回列車で通ったのは思い出せないほど前のこと(1995年っぽい)だが、風景は意外な程に馴染み深い。それでいて、国道35は以前より確実に幅広で路面も平滑、道を眺めている分には2017年そのものだ。
 空港に着くまでにややヒステリックに大雨が降り、女満別手前でまた弱まった。その間、冬のSL撮影で有名な呼人旅館を道沿いに探してみたり、いや、もう大分前に無くなっているのを確認したじゃないか、などと思い出したり。最近の雨の輪行は、内的妄想と目の前の既知の風景と断片的な、しかし意外とはっきりした記憶がやや流されるままにごちゃ混ぜになって時が過ぎてゆく。自転車に乗っているときにはこういう感覚は無い。バスや鉄道など、公共交通機関に乗っているときだけの感覚なので、本当は自転車で移動したかったのにーという残念さが、受動的な気持ちにさせるのかもしれないし、これが50台の旅なのかもしれない。

 

 8:10、女満別空港着。
 JALの始発、9:20羽田便は運行決定らしく、ちょうど手荷物受け取りが始まったところ。当初からこの始発便で帰る予定だった人々が、予定通り帰れるという安心感の、晴れやかな雰囲気が羨ましい。
 ANAアプリで嫌と言うほどチェックはしていたものの、18:30やその前の羽田便は未だに天候調査中だった。千歳空港便は早々と全面的に欠航となっていた。より遠くに向かう羽田便が欠航になっていないのはやや奇妙な印象だが、それが飛行機の運航というものだろう。

 ANAカウンターは9時からオープンとのこと。飛行機の時間まで時間は腐るほどあるが、まず昨夜から手続きしていなかった中標津便の解約と、普通料金による予約を株優に変更してもらう必要がある。天候による欠航とは言え、中標津便が欠航にならなかったらこんなことにはなっていないのだ。見せてもらおうか、天下のANAのサービスとやらを。LCCとは違うのだよ!というところを。

 9時になって取扱を始めたカウンターでは、出発便のキャンセル待ちも始まった。なるほど、そう言えば一昔前は遊ぶだけ遊んでキャンセル待ちで帰る人は多かったな。今日の天気をみてから、旅行を取りやめるお客さんもきっといるだろう。などと思いながら、中標津便解約、普通料金予約の株優変更とともに、とりあえずダメ元で13時便のキャンセル待ちもお願いしておく。まだ朝早いので、私がANAカウンター最初の客であり、当然キャンセル待ちも1番だった。

発着地点 空港で
押さえた便
欠航した
当初予定
昨夜予約
できた便
中標津空港発
女満別空港発
 
 
全日空
 
 
羽田空港着
 
13:40

ANA
4778便


15:25
14:35


ANA
378便


16:25
 
18:30

ANA
4780便


20:10

 株優手続きに時間と手間が掛かることは、以前千歳空港でお手数を掛けたことがあるので知ってはいた。じたばたしても始まらない。ところがすぐに
「あのー、13:40が1席空きました」
と係の方が教えて下さった。迷う訳も無く、
「押さえて下さい」
と即答、いや懇願。取れた!株優購入はそちらでお願いし、18:30便は普通運賃のまま予約を押さえたままにしておくことにした。13:40便もやはり天候調査中なので、まだ何があるかわからない。13:40便が欠航したら、次は18:30便で帰らねばならないのだ。何時だろうが確実に飛んでくれるなら、正規料金どころかいくら出してもいいんだよ。

 13:40便については、10:30頃に欠航かどうかの決定があるとのことだった。そうか、その時に決まるんだな。胸が潰れるような思いで出発カウンター近くのベンチで待機していると、10時半少し前に
「まだ天候調査中、次の決定は13時頃」
というアナウンスがあった。この時点では、今の放送がどういうタイミングのどういう意味なのかは私にはわからなかった。ただ、前後2本の千歳空港が早々と欠航になっているのが気を揉ませていた。やはり千歳空港自体が全滅なのであり、羽田への便は動くかもしれないという状況から考えると、道内で飛行機が飛ぶ空港はここ女満別だけなのかもしれなかった。

 次第に雨と風が強まり始めていた。1階のベンチが寒くてたまらなくなってきたので、2階待合ロビーで時を過ごすことにした。
 2階ロビーでは、オリンピックのアジア予選が絶好調だった女子カーリングLS北見メンバー全員のサイン入りストーンが展示されていて感心した。そうか、そう言えば北見や常呂へは女満別空港が一番近いんだな。でも、今日は常呂も強風なのだろう。
 ロビーのTVでは、台風が襲来する前から大雨大風になっている道南各所の中継映像が流れていた。台風が遠くても風が強まっている。この状態だと、函館本線など動く訳が無いことが視覚的に納得できる。昨夜中標津からのバスが満席で本当に助かった、と思った。

2018年2月以降まさかこんなに人気が出るとは RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 空港内には時々、
「13:40発羽田行きエア・ドゥ78便全日空4778共同運航便について、女満別空港の天候不良により着陸できない場合は欠航となりますことご了承下さい」
とアナウンスがあり、その度不安で胸が潰れる思いがした。しかもこの間風と雨がどんどん強まり、11時過ぎから外構の樹木が遠目に揺れているのがわかるほど風が強まってきた。これは万事休すかもしれない。
 しかし、一抹の望みはあった。ANAのホームページによると、
「積雪や悪天候による、折り返しや周辺空港到着などの条件付き運行の場合で、実際に引き返すのは通年で5%程度。その多くは冬に滑走路が凍結して着陸できない場合である」
とのこと。
 また、未だに天候調査中ということは、網走からの出発が未定であるということで、運行が未定であるとともに欠航も未定であるということだ。つまり、折り返し便はもう羽田を出発していて、こちらで着陸しない可能性は5%と考えていいのかもしれない。東京は全く問題無く晴れであり、女満別空港行きの便はそういう5%の可能性込みで羽田を出発しているはず。これなら行けると踏んでいるのだ。
 というのはカウンターで説明してもらった訳でも何でもなく、希望的観測だらけの想像だ。しかし千歳便が終日全滅なのに、羽田便は未だ出発未定なのである。希望的観測ぐらいしたくもなる、というものだ。

 運行自体は未定のまま、11:30には手荷物預りが始まった。もちろん何のためらいも無く、自転車とサドルバッグを預けてしまう。12:30には身体チェックを通って搭乗待合室へ。搭乗待合室には乗客が集まっていた。次第に出発確度が高まっているという感覚は無い。何も手足が出せない状況下、乗客達は出発への既成事実を、作れるものは片っ端から作っているというだけの話だ。
 「折り返し13:40発となる羽田便は、羽田空港で搭乗待ちで15分遅れたため、到着は13:20になります」というアナウンスがあった。ここでやっとわかった。さっきの10時半のアナウンスは、羽田空港での運航決定であり、次の13時の決定は、折り返し便の女満別空港到着段階なのだ。つまり、折り返し便が女満別空港に着陸できれば、女満別空港発の便もほぼ運航決定とみていいのだろう。着陸できない確率は5%だから、着陸できる可能性は95%。13:40便はほぼ運行するものと考えていいのかもしれない。しかし、これは全て想像でもある。まだ何があるかはわからない。

 一方、13時前からまだ大雨で強風が吹き荒れる滑走路に係員が姿を現し、13時10分過ぎにはコンテナ運搬車が現れた。

 あれは何だ。着陸と折り返しを前提とした準備作業にしか見えない。急に雨も止んだ。風は強いが、行けるのかもしれない。
 13時20分を少し過ぎて何の前触れも無く、いきなり地上2〜30mぐらいの雨雲を突き破り、折り返しの飛行機が滑走路に着陸した。待合室に軽いどよめきが起こった。

 この間何も発表は無かったが、着陸した飛行機には交代乗務員らしき人々が飛行機に乗り込み、滑走路に出ていたコンテナが運び込まれ始めた。そして搭乗待合室では改札係員が定位置に着き、おもむろに
「今まで天候調査中だったが、折り返しや他の空港到着の条件無しでの運行が決定した」
とのアナウンスがあった。遂に運行決定だ。
 ちょうどその時、外が嘘みたいに急に明るくなった。未だ雲は低いものの、空の低い位置ににぶっとい虹が出て、間もなく空の一部が切れて青空まで現れた。

 乗客の優先搭乗が始まった段階で、やっと18時便の予約を解放。「ありがとう」と心の中でつぶやきつつ。ようやくサッポロクラシックも飲める。あっという間に中生1杯、旨すぎる。もう1杯、いや、それは酔っ払いすぎるな。

 離陸時にはまだ風はかなり強いようで、空港周辺の木が頭を振っているのがよく見えた。雲の上に出るまでちょっと揺れたが、ここまでの心配が嘘のように順調に、飛行機はぐんぐん空を昇っていった。間もなく苫小牧〜室蘭の海岸線を見下ろすことができた。白い波が空からでもよく見え、かなり波が高いらしいと思われた。

 

 羽田に着いて飛行機の出口を出て、ようやく帰ってきたという実感が湧いてきた。東京はど晴天であり、真っ青な空と夕方っぽい色の日差しがまぶしい。日中には33℃も出たらしい。
 帰ってきてみれば、当初予定していた中標津便より早い羽田帰着である。昨夜の絶望的状況から、一夜明けてみればこんなに早く東京に着けた。それは昨夜中に女満別便を押さえられたこと、同じく昨夜中に網走に着けたことが直接要因なのだが、そのためにはいろいろな方の助けをいただけたこと、そして詰まるところ自分で帰ることを諦めなかったことが大きな理由だ、と思った。
 「俺が諦めるのを諦めろ!」
と、とある人は言っていた。また、
「強く思い続けてさえいれば、何らかの形でいつか必ず希望は叶うものだ」
と若い頃の私に教えて下さった方もいた。その時は精神論じゃないのかと思ったが、「希望は実現するんじゃなくて自分が実現させるもの」と思うことが、その後の人生で何度かあった。
 普段から願いが強いほど、強い願いへのチャンスや手がかりを見逃さないだろう。自分の気持ちが他人を動かし、助けてくれる場合もある。他人には妨げられたり蹴落とされる場合もあるが、まず自分で強く願うこと、そして他人の共感が、その時に道を繋げてくれるのかもしれない。
 と、東京の生暖かい風の中、鋭い夕陽に照らされてくっきりした風景を眺めながら思った。

 FCYCLEに北海道Tour98をUPして以来、北海道Tourシリーズは毎年続いて20周年。私の北海道Tourも単なる私的な趣味で細々と続けている。しかし北海道Tourは一人で完結しているという訳ではない。北海道ツーリングにより、FCYCLEの尊敬する皆さんを始めいろいろな方のご厚意に出会えている。それもまた、旅ということなのかもしれない。

記 2018/2/19

#13-7へ戻る    北海道Tour17秋 indexへ    北海道Tour indexへ    自転車ツーリングの記録へ    Topへ

Last Update 2018/5/12
ご意見などございましたら、E-Mailにてお寄せ下さい。
Copyright(c) 2002-18 Daisuke Takachi All rights reserved.