2012/8/11 北海道Tour12#3-1 落石→開陽

落石→(道道1123・142)貰人→(町道)姉別 (以上#3-1)
(以下#3-2) →(道道988)北部→(姉別北農免農道)東円
→(道道123)上風連→(道道930・新酪農道・国道243)別海
(以上#3-2)
(以下#3-3) →(道道363・根室東部広域農道・道道994他)茶志骨
→(道道863他)標津→(国道244・335)浜古多糠
(以上#3-3)
(以下#3-4) →(町道)古多糠→(町道・道道1145・国道244)西北標津
→(道道975)武佐→(町道北17他)開陽

 186km  ルートラボ

ニューサイ写真 RICOH GR DIGITAL 4 GR6.0mm1:1.9 A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路

 窓の外は濃霧で灰色一色、下から波の音が聞こえてくる。荷物を積むために外に出ると、やはり想像以上に寒いぞと思っていたとおり、その想像以上に寒い。しかし小雨は上がってくれたようだ。天気予報は今日は曇り、今ここは霧の中だが、道東太平洋岸は年中霧なのだ。今日こそ雨に悩まされずに走れる可能性が高いのだ。

 5:30、落石発。走り始めると霧粒と冷気が顔に当たり、フリースを持ってきて心から良かったと思う。しかしそれにしてもこの寒さ、一昨日まで悩まされていた東京の暑さからは信じられない事態だ。

 初田牛までは、途中1箇所別当賀に集落がある以外はしばらく鬱蒼とした森の中。

 海岸部のためか、ところどころのカラマツ防風林を除くと、広葉樹も針葉樹も密に生い茂るものの木々そのものはそう高くなく、落石を出てすぐの谷以外ほとんどアップダウンも無く、道の線形もほぼ直線基調。

 100mか200mぐらい向こうの霧へ消えて行く景色の、次々現れてこちらに近づく木の形だけが変わるようで、全体的には変わらないようで、ましてや今日の薄暗く濃い霧。

 淡々と景色と時が過ぎ、地図上の位置が少しづつ西へと進んでゆく。

 初田牛で厚床への道道1127を見送り、今日は恵茶人海岸へ向かう。去年の恵茶人海岸では、10年分ぐらいの激晴れをたっぷり楽しめたが、今年は初田牛で視界50〜100mの濃霧。万が一晴れてくれると本当に嬉しいのだが、いや、この辺りではむしろこの濃霧が普通なのだ。

 直線基調だった道が海岸へ向かいつつ右左にカーブを描き、白いような薄暗いような霧の向こうから、20m前後のアップダウンが現れる。いくつか谷を越え、やがて波の音が聞こえ始め、道は恵茶人海岸へ辿り着く。

 しかしやはり霧は晴れやしない。霧に包まれた去年の写真通りの景色が次々と現れ、そして通り過ぎて行く。まあ、わかっていたことが当たり前にそうだっただけのことだ。

 7:40、貰人着。ここから海岸を離れて丘に登り、町道で内陸方面の姉別を目指す。

 緑の草原から丘に登ると、間もなく道の両側はさっきの初田牛までのような森となり、路面は乾き始めた。路面が乾くのは悪い傾向じゃない。

 樹林帯を抜けると、霧の中に牧草地が始まった。根釧台地の牧草地だ。8:10、姉別着。駅前に萬屋があり、店は営業していなくても自販機があることはわかっていたので、ここで朝のコーヒーとする。


 根室本線を越え、国道40を越えると、その度に少しずつ、しかし明らかに霧が晴れてきた。

 この辺りでは毎回そうなのだが、太平洋岸の丘の縁、根室本線、そして国道40で、温度や天気が段階的に太平洋岸から内陸へと変わっていくのだ。太平洋岸の冷たい空気に助けられたこともあるし、内陸で晴れていたのが海岸で急に霧の中になってしまうことも決して珍しくない。今日の内陸方面は、天気予報通りに、そして普段通り、霧が晴れて気温が上がる傾向のようだ。

 天気の変化以上に、辺りの景色には根釧台地の伸びやかな開放感が感じられる。今回もこの感覚に会えて良かった。今日はこれから上風連、別海、標津を経由し、根釧台地最北の古多糠で折り返して開陽へ向かう、根釧台地尽くしだ。昨日が一日輪行になってしまったが、今日だけでも根釧台地を目一杯楽しもう。

 姉別北農免農道は、この辺りにしては盛大なアップダウンが比較的少ない、直線主体の道だ。北部、千代ヶ丘、共生と、霧の中に牧草地と防風林が現れては後ろに去ってゆく。
▼動画1分1秒 姉別北農免農道 北部

 牧草地には時々鹿が現れた。どういうわけか今回は鹿をよく見かける。しかも、過去の例だと、距離を保つようにかなり離れた場所でこちらを伺い、ある時点でささっと走り去っていったのが、今回はけっこう近づいてようやく気づき、泡を食って逃げ出すというパターンが目立つ。そういえば昨日の根室本線でも、列車に鹿が接触しそうになって急停車していた。乗っている列車が鹿に警笛を鳴らすのはそう珍しくないのだが、接触しそうになったのは確か初めてだ。鹿が増えているのかもしれない。

 などと思っていると、困ったことが起こった。フロント側コマンドのクリック機構を舐めてしまったようで、何だかすぐにインナーにギヤが落ちてしまうのだ。応急措置としてレバーのダルマネジを閉める必要があるが、こういうときに限ってラジオペンチが見つからない。バッグの奥に仕舞っているかもしれないし、そもそも重くて装備から外したような気もする。

 旭では根釧台地の私的メインルート、道道123に折り返すように合流。

 もうすっかり内陸部、相変わらず風は涼しいものの、身体が汗ばみ始めている。明らかに海岸部より気温が高くなっている。寒すぎるのもちょっと不安になってしまうので、ひと安心だ。霧ももう完全に晴れたと言える程度に、一直線の道の行く手がよく見えた。

 9:40、上風連着。交差点近くのAコープには数少ない自販機がある。姉別から随分走ったというほどではないものの、別海までまだ多少距離があるので、立ち寄っていくことにした。

 

 気分で覗いた店内で、別海産の牛乳を飲めたのは思わぬ収穫だった。更に職員のおばさんに、ホクレンの無料地図「ZigZag」もいただくことができた。この地図、全道の国道・道道他主要な道路が掲載されているやや大判の地図本で、昔からホクレンで無料で配られている。ツーリングマップルより書き込み情報量は少ないものの、判の大きさから広範囲の一覧性に優れている。道内を4分割して地域毎の分冊となっているが、人気があるのは全部入りで、大体どこのホクレンスタンドでも真っ先に無くなってしまって今までいただけたことは無い。1986年の初北海道自転車ツーリング以来もう長年憧れの一品だったのだ。今回いただけたのは、何とその全部入り版。

 上風連からは新酪農道へ。ここまで通ってきた道道123と平行に、北へ向かいつつ少しづつ平行移動し、結果的に別海への近道となる道だ。

 便利なだけあって道道123と交通量は余り変わらないような気もするが、はじめて通る道なので新鮮な気分だ。便利な経路なのに今まで使ったことが無かったのは、手持ちの古い地形図に載っていないからなのと、道道123でそこそこ以上に楽しかったためだ。今日はGPSに経路を入れているため、地図に載っていない道も分岐ポイントも何の迷いもなくたどることができる。
▼動画1分17秒 新酪農道

 一直線に根釧台地のアップダウンをいくつか越えてゆくと、やや素っ気なく無骨な鉄骨の櫓が登場。そうだ、確か昔からこの辺りに展望台があったはずだ、と気が付いた。

 

 その「新酪農村展望台」は掘り割りの土手に建っていて、周りには商店はおろか、民家すら無い。

展望180° RICOH GR DIGITAL 4 GR6.0mm1:1.9 パノラマ合成
 

 登ってみるとまあ根釧台地の展望は悪くないが、今日の厚い雲の下、多分そのポテンシャルの半分も味わうことはできていないのだろうとも思う。晴れの日にぜひ再訪したい。
▼動画1分3秒 新酪農村展望台 展望360°

 しかし、展望台足下のベニヤに描かれた牛のイラスト看板が何とも微笑ましい。名前は「MOMO」、身長150cm体重1.8t乳頭4本、そして描かれた絵の脚の形など、リアルさと可愛らしさが絶妙に同居している名看板だ。やや色褪せているのが大変もったいない。

 雲の中に青空が現れ始めたのを眺めつつ、新酪農道は国道243に合流。

 交通量の増えた道を少しだけ我慢し、10:35、別海着。

 

 さっきのコマンドトラブルを安易に何とかしようと、町中の自動車工場でペンチを借りるものの、どうやらとりあえずダルマネジをきつめに締めておくぐらいが関の山だということがわかった。つまりバランサー無しのフリクション状態を、ボルトの締め付けだけでごまかさないといけないのだ。かなり強く締めてもレバーはゆるゆるだが、かと言って、締めすぎてボルトをねじ切ってしまうのは絶対に避けたい。
 一方、いつも休憩する交差点ののセイコーマートでは、何と今どきHotChefが無い。仕方なくオリジナルのカップ焼きそばでお茶を濁しておく。ここから標津まで、補給ポイントは全く無いのだ。


 11:15、別海発。やはり北へ、直線基調で少しづつ平行移動しながら標津を目指す。

 別海から北へは、道路もかつての標津線も基本的に中標津へ向かっている。中標津以外の場所へは、何らかジグザグに進まなければならない。

 私の場合、これまで標津へは一度尾岱沼で海岸へ出て、国道244で標津へ向かっていた。手持ちの地図が極端に古くて、台地の農道が殆ど描かれていない状態だったので、標津へ向かう道がわからなかったのと、ツーリングマップルだとやはり大雑把で、道を一度間違うと全然違う場所に出てしまうため、確実な道を選んだ結果だった。今回はルートラボで計画したコースを全部GPSに入れてあるので、それを追っていけばいい。

 話が長くなったが、要するに今日の標津までの経路は、道の少ないこの辺りでは画期的な未済経路なのだ。

 浜中から別海でみられた盛大なアップダウンは、進むに連れ少しずつ、高低差も頻度も少なくなってゆく。海岸が近づいているのだ。

 しかし、何となく広々とした雰囲気自体は、やはり根釧台地の別海北部そのものだ。漠々と捉えどころが無い広がりの中、メリハリの無い曇り空を眺め、一直線の道を突き進んでは1本ずれて、というのを繰り返していると、時間の感覚が無くなっていく。
▼動画1分37秒 根室東部広域農道 もうすぐ標津川

 地図を見ても途切れ途切れでしか道が載っていないので、GPS画面を縮小してみたり、なんとなく川の形と交差する道の位置で判断してみたりするうち、ようやく標津川にたどり着いた。

 国道272から河岸のダートを経由し、13:35、標津着。13時を過ぎてしまった、と思ったが、改めて地図を見直すと、別海からはけっこう距離があるので、まあ順当な到着時刻だ。さっき早昼にしておいて良かった。

 町中のセイコーマートで休憩後、次は海岸沿いの国道244から335で根釧台地最北端の古多糠へ。

 かなり強い向かい風に速度は20km/h以下に落ちるが、古多糠までは10km程度。薄暗く低い雲の下のオホーツク海と、海の向こうの国後島を眺めつつ、粛々と進む。

 向かい風が更に強くなり、進むのにも抵抗を感じ始めたところで、古多糠中心部へ出るっぽい道が登場。内陸へ曲がろうと思っていた一番奥の道ではないので、ややぐるぐる回って一筆書きとしての線はやや乱れ気味になるが、古多糠ポタにはそれも悪くない。


 14:40、古多糠着。知床山脈の山裾に牧草地が広がるこの場所で、長い間一度やってみたかった古多糠ポタ開始だ。
 まずは中央部に1軒だけある万屋の、各戸毎に設けられた新聞立て(新聞配達を省略して各戸が取りに来るのだと思われる)など横目に眺め、一番奥の山裾の道へ登ってゆく。

 牧草地の中に続く高い茂みのダートには、何だか熊が出そうな雰囲気が漂っている。高い茂みは道の周りだけでその奥は開けた牧草地とわかってはいるのだが、昨日「みんな勘違いしているんだけど、熊はもともと山じゃなくて平原の獣なんだよね」と橘さんが言っていたのが頭に残っているのだ。

 ちょっと不安なダートを進むと再び舗装路が登場、辺りも茂みから普通の森となり、再び裾野下手へ。

 古多糠らしい牧草地と畑の中の既済の道に合流し、15:40、古多糠発。

 西北標津から道道975へ。毎年通る根釧台地北部の道にようやく辿り着く。ここまで来れば、開陽まではもう1時間ぐらい。

 さっき海岸沿いで感じた向かい風は、かなり弱くなっているものの、今度は追い風気味にアシストしてくれる。

 ふと気が付くと、朝からずっと低かった雲はやや高くなり、空の中にはようやく日差しっぽい明るさも現れている。近景も広々と、この辺りらしい味わいが一杯だ。

 進むうちに武佐岳や知床山地の裾野が見え始め、今回もまたこの道に来れた、という気分で嬉しくなってくる。
▼動画1分31秒 道道975 武佐岳が現れた

 見覚えのある、というかこの道で楽しみにしている景色の中をてれてれのんびりと、中標津町界、武佐から町道北17へ移ると、期待通りに地平線が見え始めた。

 厚かった雲がすっかり高くなって、もう完全に日差しも現れてきている。景色の見晴らしも良好だ。

 17:05、開陽「民宿地平線」。到着して荷物を下ろしていると、3年連続の宿泊でもう顔なじみの女将さんが、顔を見るなり「今夕陽でてるよ!チャンスだよ!ご飯6時半だよ」と言ってくれた。ならばもう向かうしかない。空荷になって速攻で開陽台へ。

展望0° RICOH GR DIGITAL 4 GR6.0mm1:1.9 パノラマ合成

 期待一杯で17:35、開陽台着。わずか30分の間に、空はもうすっかり曇ってしまっていた。特に夕日方面の雲が厚くなり、景色全体がさっきとは較べものにならないほど薄暗い。しかし、その薄暗い中で視界は比較的広がっていて、空に近い遠景はほんのりと明るい。夕焼けの根釧台地を眺めたかったが、これが今日の開陽台なのだろう。今日をとにかく精一杯楽しみ、明日劇的に晴れるという根拠は無くても明日に期待を掛け、また明日6時頃出発する。その時に天気が悪くても、何も絶望する必要はないのである。
▼動画1分17秒 開陽台からの展望360°

展望0° RICOH GR DIGITAL 4 GR6.0mm1:1.9 パノラマ合成
 

 18:00、開陽台発。開陽台と町道北19の間の道は、上り下りが分離されている。どういうわけか上り側は後で追加された道でかなり斜度に緩急があり、更に開陽台手前で下って登り返しまである。このため、急な部分の登り斜度は軽く10%を越える程になっているが、下りは開陽台のもともとの道で、比較的穏当な斜度の道だ。いつもこれが逆にならないものか、等と思いながら登って下る開陽台である。
 町道北19へ出てしまえば、もう民宿地平線までは5分もかからない。

 

 夕食後は民宿地平線恒例の中標津温泉ツアーだ。今年も温泉を粛々とこなし、毎年楽しみな中札内地鶏をいただく。値段は\800に上がっていたが、ボリュームが更に向上していたのがうれしい。こういうときには生ビールも必須だ。

 更にその後、宿までの帰り道、宿主さんが気を利かせて下さって、温泉ツアーの一行を夜の開陽台に連れていって下さった。濃霧を煌々とライトで照らして分け入り、根釧台地をどんどん登って霧の上に出て開陽台へ。
 展望台手前の駐車場に車が停まり、ライトが消えるとほんとに周囲は真っ暗だ。墨汁のような闇は、しかし10km離れた中標津上空が明るいのはよくわかる。そして目が慣れると、夜空が星でいっぱいなのが見えた。しかし雲も出ているようで、その切れ間に星空が見えているようだった。
 何にしても、明日の朝には期待が持てそうだ。

記 2012/12/9

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Last Update 2013/3/4
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