2005.7/23 夏沢峠 #1-1 |
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茅野→(県道192)栗沢橋→(県道188)神之原 |
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行程に余裕があるとなると果てしなくだらけてしまうのはどういうわけか。おっとり刀で7:03萩山発、八王子発7:38あずさ73号に乗車。
臨時列車のためかがらがらの車内で、車掌さんに小淵沢の弁当売店の位置を聞く。あずさの短い停車時間では、なるべく店の近くでスタンバイしないと、弁当を買って列車に戻ることはできないのだ。
売店位置の情報は得られなかったが、車掌さんは「最近お客さんとのそういうコミュニケーションが無くなった」といたく感激してくれた。「小淵沢は駅蕎麦も美味しいですよ。あそこのは蕎麦の香りがします」とも教えてくれた。中学生の頃列車の写真を撮りに出かけた中央線急行アルプスで中央本線の美しさを語ってくれて、帰ってから封書まで送ってくれた車掌さんのことを思い出した。
結局売店は後ろから3両目の前辺り。待機していた5両目からダッシュで、中学生の時も食べた「高原野菜とカツの弁当」を何とか仕入れることができた。しかし、小淵沢から茅野までわずか13分。買う以上にむしろ食べてしまうのに骨が折れた。
9:49、茅野着。駅東口で自転車組立開始。過去の茅野訪問ではいつも駅西口を利用していたようで、東口は全く印象に無かった。が、ロータリー広場も真新しい東口では、古谷誠章さん設計の茅野市民館が着々と仕上がりつつある。
雲が低く、むっと蒸し暑い。標高800mぐらいじゃ涼しくも何ともない、と改めて思った。10:10、茅野発。蒸し暑い町中から早くも緩い登りが始まる。その町が終わる栗沢橋辺りで、完全な思い違いで1本南の県道188へ。
昔から農業で栄えている、そんな感じの農村が、じりじりとしつこい登りで高度を上げる台地上に続く。コンビニ補給をしたり、リカバリーで台地越えの裏道をつなぐうち、なんだか必要以上に時間が掛かってしまった。
しかし、台地に長々と続く農村や、途中の下槻木で美しい蔵を見ることができたのは、意外な収穫だった。「川原の湯」なんて看板を近くにいた人に聞くと、「銭湯ですよ」とのこと。つい寄ってみたくなる。
下槻木では少し雨がぱらぱらっと来た。少し進むと路面の濡れ方と水溜まりが真新しい。凄い雨が降って止んだばかりのような雰囲気だった。しけった空気の中、何度か台地を横断するアップダウンがあり、やがて高原野菜畑の1本道、唐沢鉱泉への道に合流。
すぐに道の両側に背の高いカラマツ林と別荘地「三井の森」が始まった。いくつかの街区に飲食店、かなり本格的な別荘地のようだ。その別荘地中央、1本道の登り斜度は、緩いものから次第に厳しくなってゆく。
人気のない別荘地を汗水垂らして登り続けていると、あっちとこっちの違いとは何かを思わせられる。まあ比べるだけだ。自分はこちらにどっぷり浸かっているのだし、何もどっちが良いというわけではない。
別荘地が終わると道はいい感じのダートに変わり、すぐに12:00、唐沢鉱泉分岐到着。
森の木々に頭上まで覆われた緑の道をしばらく進む。薄暗い森の中からは鳥の声が、遠くからは遅めのヒメハルゼミやエゾゼミの声が聞こえてくる。深い森の外側が落ち込んだ谷になる辺りから、道の斜度は次第に厳しくなっていった。
森が深いとはいえ、道が斜面を通っているためか、次第に木々の外がちらちら見え始めた。これまでの登りで雨雲を抜けたためか、次第に森の外は明るくなり始めているようだ。標高が上がって、時々感じる程度の風にも涼しさを感じるようになっていた。
沢がウォッシュボードで道を横切る河原本場沢辺りで、道の斜度は一気に増した。前輪が時々浮き始め、そうでなくても目に見えてグリップが悪くなる。こうなると私はもう押しで進むしかない。
とはいえ、きりきりっと登った後は再び斜度が緩くなったり、時には下ったりもする。
森が切れて、何台か自家用車が停まっている広場と、右手にゲートが出現。どうやらこれが桜平か。車はここで終わりのようだ。
立札の「夏沢峠」の方向通りに右手のゲートの脇を抜け、谷底へ。桜平まで車でやってきたのか、道には急に登山客の姿が目立ち始めていた。
谷間の木陰の滝目がけて、三脚+デジタル一眼でばりばりと写真を撮っている人たちもいた。その脇から「ちょっとすいませーん」とGR1で同アングルの写真を撮らせてもらう。お手軽すぎて何か申し訳無く、何か可笑しい。これがGR1の凄さではある。
谷底の沢の向こうからは、けっこう厳しかった今までの斜度を遙かに上回る坂が待ち受けていた。
森の中の急坂はもはや切れることが無い。まあ有名山サイコースなので、あまり楽な道なはずは無いのである。
やはりますます鬱蒼とする森の中、自転車を粛々と押し上げる。
記 2005.7/31