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4:30。目覚めても何だか身体がまだ眠っている。今日、明日が雨だという夕べの天気予報は聞いちゃいるが、それでも一応前向きな期待はしてみよう、と一度寝て起きた5時半過ぎ、外を偵察に行ってみた。
果たして空はどんより暗く、生暖かく強い風が吹いている。更に霧さえ出ているように見える遠景。一目で雨が降り出すのは時間の問題だ、ということがわかった。
うだうだしながらもう一度寝ようとしたが、眠いようで意外と眠れない。仕方無いので昨日のレポートを書き出しては止め、なんとなく頭のはっきりしないままTVを点ける。と、朝の天気予報を見ることができた。
今日は1日中雨。明日も一日中雨、おまけには更に風が強くなる。明後日は四国全域で曇り、とのことだった。しかし、明後日雨が降らなくても、東京に帰らないといけないので、昼過ぎまでしか走れないのである。今晩の宿は窪川の「四万十の宿」だが、明日雨ならわざわざ輪行移動するより、連泊前提が現実的だ。となれば、仮に明後日走れるとしても、昼過ぎまでに着ける場所と到達経路は結構限られてくる。ましてや天気予報は狂うのだ。
いっそ明日東京に帰ってしまおう。
とりあえず窪川まで輪行である。なあに、まだ朝の6時過ぎだ。急ぐ必要は無い。もう一度風呂でも入るか。いや、風呂は窪川の松葉川温泉までとっておこう。まあ時刻表でも見ておくか…すると、朝の6:36高知発を逃すと、次の普通列車は何とお昼過ぎになってしまうようだった。時計を見ると、6:10。
6:36!あと25分!10分で用意して高知駅まで行って、10分で輪行して、5分で切符を買って…いける!と各作業の所用時間を高速で演算し、まだ眠っている身体を強引にたたき起こし、泡を食って高知駅に向かった。
外は早くも雨が降り出していた。
予定時間内に輪行作業を終え、一度列車に荷物を載せ、改札の駅員さんに「急いでね」と言われながら、売店でお茶とまだ売っていない駅弁代わりのスナック菓子を仕入れ、列車に乗り込んだところで発車のメロディが鳴り出した。
あと5分遅かったら、1日を棒に振るところだった。
雨の中の南高知を、普通列車はのろのろ進む。こちらも居眠りしたりスナック菓子を食べたり、地図で車窓風景を確認したり交換駅で足を伸ばしたり、また居眠りしたり…昨日までと比べてずいぶん気楽である。
8:50、窪川着。早速松葉川温泉のバスを調べると、何と11:05発。あんなに急ぐ必要はなかったような気がするが、ちょっと考えるとお昼の列車では窪川に着くの自体が15時過ぎになってしまうのだ。そもそも、松葉川温泉の営業時間自体が10:30からとのこと。
明日の列車の指定券を仕入れ、朝食代わりのじゃこ天を食べ、うだうだのんびり11時まで過ごし、11:05、窪川発。
大雨の中、バスはいかにも四国らしい細道をクネクネと抜けてゆく。まるで軒先に車体がかすりそうな場所もあるが、うまく通過する。こんな道は是非自転車で走りたい。
11:45、松葉川温泉着。早速温泉に入ると、外は四万十川支流の川と裏山を眺められるようになっている。もちろん周囲は山奥で、民家も温泉旅館も何も見えない。露天風呂の下は6mぐらいの落差で落ち込んで川原になっている。風呂の外縁は1mぐらい幅があり、この外縁には手摺りも何も無い。このため、外縁に座ると、何の邪魔も無く川の風景を楽しむことができる。
新緑に覆われた山と川にはしとしと雨が降り、せせらぎの音に混じってカジカガエルが澄んだ声で鳴いていた。また、セキレイのような鳥も飛び交い、空中で飛ぶ虫をキャッチしているのが見えたりする。施設は新しいが、なかなか粋な温泉だ。
何度か温泉に入ったり、休憩室で居眠りしたり、食堂で食事したり、結局松葉川温泉にはバス出発時刻の17:00までいた。
17:20、松井商店こと「四万十の宿」着。
おばちゃんもおじさんも宿も以前来たときの通り、気さくで家族のような迎え方をしてくれる。今回は同宿に名古屋のバイク乗りの方、謎の?初老の親子がいたが、5年連続で連休も夏休みにも来ているというバイク乗りの方と私、そして初老の親子と、見事に2グループに分かれてしまったのが面白かった。
四万十の宿来訪者の間で評判の、良い香りのお米の謎も、今回知ることができた。地元の「仁井田米」に、香り米として「十和錦」をブレンドしているようだ。あの香りは「十和錦」という香り米のものだったのだ。普通は十和錦を15〜10、または5%程度入れれば充分らしいが、それを何と30%入れている、とのこと。
翌朝は8:50の特急で窪川を出発。高知の「かつおたたき弁当」を買い込んで瀬戸大橋の上で食べ、連休ラッシュの東海道新幹線で一路東京へ。
記 2003.5/9