2004.10/23
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(以上#1) |
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峠手前では、道は山肌を巻きながらぐいぐい登る。前方には、この峠を訪れた人には有名な「だましの峠」が何回か登場する。尾根を巻いて向こうに消える道に、あそこが峠かと思ってしまうのである。
13:00、ぶどう峠着。上州側はごつごつと険しさを感じる風景だったが、峠を回り込んだ信州側は、なだらかに視界の彼方へ下ってゆくカラマツの谷である。
あまり身体が冷えないうちに、おにぎりを腹に押し込み、峠を出発。
紅葉の山腹を谷底へ急降下、その先は相木川沿いのカラマツの森林だ。朝晩めっきり冷え込むようになり、今日も日中これだけ気温が低いのに、まだカラマツの紅葉は始まっていない。普段はこんなに寒くはないのだろう。妙なところで今日の寒さと曇りに恨めしさを感じる。
薄暗い森の中、時々速度を抑えるぐらいでするするっと下ってゆくと、少し谷間が拡がって集落に出た。斜面の畑、家並み、周囲の里山部分はすっきりと整った風景だ。この季節にして既に少し寒々しさを感じる、佐久の山間らしい雰囲気である。「白岩」の地名に地図を見ると、まだまだ先が長そうだ。
相木川沿い、断続する集落の間をどんどん下る。谷の先に小海方面の拡がりを感じられる位まで降りたところで、14:00、川又着。ここで県道2へ分岐、馬越峠を経由して川上村に向かう。
昨日までの大雨で増水している南相木川に沿って、集落が断続する谷を遡る。程良く狭い谷間の道は広いが、交通量は少なく、比較的落ち着いて走れる。空にはますます雲が増え、もはや朝の青空が信じられないぐらいに薄暗くなってきていた。峠から下ってはきたが、まだ1000m程度の標高のせいか気温も低い。やはり今日は厚着で正解だった、と思った。
役場のある中島の盆地状の広がりを抜け、記憶通りの10%の坂でぐいっと高度を上げる。曇り空の下、畑、森、山の形も谷間の雰囲気もすっきりした佐久の山間、やはりこの季節だと少し寒々しさを感じる。
湖というより池のような立岩湖の先、「川上村」の標識に従って曲がると、本格的登り区間だ。取付部のカラマツ林を過ぎ、その上の立原の集落の中でも、まだ厳しい登りが続く。
畑と農家の間から、紅葉に彩られ始めた周囲の山々が見えた。行く手の馬越峠もよく見える。下から眺めると何だかとても近くにあるように見える。
しかし、その先には、広葉樹林に前回の記憶通りしばらく登りが続いた。
15:50、馬越峠着。
雲はそう低くないが、相変わらず、いや、更に空は暗い。この季節の16時前、晴れていても夕方ムードに違いない。気温も低く、峠から見下ろす下界の高原野菜畑も薄暗く、気分はぱっとしない。
おにぎりだけ食べて、下り始めると、カラマツの間に先の高原野菜畑がちらちら見え隠れする。
千曲川の谷間、大深山で県道88に合流。
県道106を経由し、野辺山方面へ足を進める。八ヶ岳の裾野の、広々と北海道のような高原野菜畑森の中、淡々と進む。
16:25、野辺山着。雲が厚いせいで辺りはもうすっかり夕方の暗さである。
甲斐小泉ですっかり真っ暗になった。小淵沢への静かな農村の細い下り、時々道を間違っていないかどうか心配になった。まあそれでも何回か通っている道、唐突に小さな町らしい灯りが現れたと思ったら、目の前の土手の下が中央本線。
その300mぐらい向こうに、駅の灯りが見えた。
18:00、小淵沢着。ここまでずっと名物駅弁「高原野菜とカツの弁当」を希望に進んできたが、生憎本日の弁当はすべて売り切れとのこと。仕方無い。
そのまま電車の時刻をチェック。と、18:05に特急あずさが出てしまう。時計を見ると、あと3分。間に合わない。その後は19:15のスーパーあずさである。1時間以上後になってしまうが、まあ腐ってもスーパーあずさである。これで手を打とう。
のろのろ自転車を解体していると、アナウンスがあった。18:05発予定の特急あずさは、長野県の地震でまだ松本を出発していないとのこと。余程大きな地震だったのだ。最近連続した台風、大雨の崩落を心配しているのか、とも思った。
結局、あずさがやって来たのは、19時20分過ぎ。
車内では、地震の影響で、上越新幹線と上越線が全面ストップとのこと。この時点で、長野県より新潟県の方が地震の影響が大きかったことを知った。上越新幹線が全面ストップというのも珍しい。まだそんな程度の認識だった。
帰宅後、母からの「無事、心配無い」という留守電に驚き、テレビを付け、ようやく新潟中越地震を知った。
記 2004.10/31