(以上#1) 参加各位による記録 山サイおやじのHP/子連れ狼さん |
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岩殿から別の谷へ登り返し、上小野、一色と農村と緩い丘を2つ経由、差田から石廊崎へ向かう。
内陸からもう海岸近くまで来ていて、彫りの深い岩場の高台を通る道の所々で海が見渡せる。すっかり雲が少なくなった青空に鮮やかなマリンブルーの湾と、高く険しく切り立った岸壁。迫力のある風景に、しょっちゅう足が止まる。
特に左右に180度以上開けたあいあい岬ではその展望も見事で、しばし休憩。子連れさんに吊られてみんな売店のアイスクリームを食べつつ、鮮やかな濃紺の海に険しい岩場を眺める。
入り組んだ岩場の誰もいない渚とエメラルドグリーンの浅瀬を眺め、
「あんな渚をプライベートビーチにしたいですねえ」
などと誰ともなくつぶやくが、大体そういう場所では高く切り立った岩が陸地からのアプローチを拒否していて、程良く狭い砂浜には落石の大きな岩がごろごろしていた。
伊豆半島の海岸線の最南部だけあって、道ばたの植生はすっかり南方系である。道を囲む鬱蒼としたウバメヤシの茂み、並木のような道ばたのフェニックス、時々群生するアロエ。低くてぽこぽこした形の周囲の山も、何だかそれっぽい。
閉鎖されたジャングルパークの脇を過ぎ、一度海岸まで下ってから、石廊崎までかなり厳しい登りを再び登り返す。かなりの激坂を登り返して一段落したところで、再びジャングルパークの入口が登場。わざわざ一度港まで下ることもなかったような気はするが、あまり悩まずにそのまま進み、灯台手前に自転車を停める。
ここから先はだいぶ道が細くなる。もう岬の先の太平洋も見えていた。
さんぽさんに「あれは危険だ。行けばわかると思うけど、そのうち誰か落ちるよ、絶対」と言われていたとおり、石廊崎先端は急に細道が下り始めていた。下り自体はいくらも距離は無いが、その細く急な岩場の下りで、手摺りの間隔がすかすかなのである。間違いなく幼児は連れて来たくない場所だ。
岬への手前にある石室神社でお参りを済ませてから、石廊崎の先端で太平洋を眺める。風も無く、ぽかぽか暖かい日差しとすかっと晴れた青空の下、眼前に180度以上拡がった、鮮やかな濃紺の海、遠くに霞む伊豆諸島。
見下ろす海に頭を出す、険しく高い岩場には、普通に考えるとまず考えられない場所に釣り人が取り付いている。しかも、あっちにもこっちにもうようよと。多分朝に釣り船でやって来て岩場に取り付き、必死でよじ登ったのだろう。
中にはかなり狭く高い岩場のてっぺんにいる人も。もし突風が急に吹いたり、めまいを起こしたら、即海中に落下するだろう。何しろあの高さ、私だったら3分で恐怖の限界だ。
しばらく見ていると糸が引き始め、釣り人が立ち上がってリールを回し始めた。竿は折れそうにしなって、見ている方としては海に落ちないか気が気でいられない。つくづく物好きな人がいるものだ、とみんなで感心する。
13:10、石廊崎発。あちこちで岩場の景色に見とれている間に、もう昼過ぎになってしまった。何と無く今日も陽差しが赤っぽくなってきたが、まだ昼食を食べていないので、石廊崎からの短いアップダウンの向こうの大瀬で昼食にする。
道が海岸に降りたところで、道の脇のそれっぽい店に入ったつもりだった。ところが、何と出てきた写真入りメニューは軒並み\3000以上、伊勢海老麺の料理は\6000ぐらいなのである。しまった、看板の「伊勢海老」で気付くべきだった、と後悔した。
早くもこちらの表情を察知して、おばさんが「メニュー以外にも予算で作りますよ」と言ってきた。多分似たような反応をする客は多いのだろう。しかし、我々は人の良さそうなおばさんを前に、躊躇していた。結局そのまま何と無く店を出るわけにも行かず、惰性でメニュー最低額の半額\1500で定食系を作ってもらうことにした。
誰も口には出さなかったが、みんな「しかし\6000の店の\1500だからなあ」と後悔していたと思う。ところが、出てきた料理が堂々たる刺身定食なのである。刺身を鰯など安くても美味しい魚に替えているのだ。その魚の種類が、昨日の回転寿司「ととや」とほぼダブっているのが可笑しい。もちろん実際に食べても美味しく、味噌汁がこれまた出汁が濃厚、しかもお代わり自由なのである。
この店は伊勢海老で勝負しようとして損をしているのかもしれない、と思ったが、こんな南伊豆の先端に車で来るようなお客さんは、むしろこういう高めのお昼を食べて帰って行くのかもしれない。
ちょっと満腹気味の腹で出発。もう2時過ぎ、すでに周囲は赤い光に包まれ、夕方の雰囲気が濃厚である。
大瀬から先、県道18はそれまでの高台から完全に降りて、海沿いの1本道となる。良く晴れた空に濃紺の海、伊豆にしては風も無く、いい気分で岩場と漁村が断続する道を進む。
湊から裏道に入り、賀茂川沿いの桜並木を物色。民宿「太郎衛門」の女将さんが、狂い咲きで桜が咲いていると言っていたのだ。毎年、2月上旬にはすでに桜が咲いていて、2月中〜下旬ともなれば、満開の桜が見事なこの並木、多少でも花を見ることができるかもしれない、と思ったが、結局我々が通った一番下手からは、その気配は伺えなかった。
日野から先は、なるべく悪あがきして国道136沿いの細道へ。最後に下田の手前、島さんの提案で寄った「外国のような」入田浜は、フェニックス(?)が立ち並ぶ入り江の砂浜が、確かにどこかのリゾート地のような雰囲気ではある。この風景には見覚えがあった。10年以上前に社内旅行で近くのコテージにやってきた、その時の風景がこれだったのだ。すでにどの辺りに泊まったかも定かではなく、当時の同僚達もリストラで2,3人しか残っていない。彼らは今頃何をしてるのだろうかとか、こんなに下田から近くだったのだ、等と思った。
15時台だというのにすっかり太陽は低くなっていて、すでに浜辺は日陰になっていた。
15:25、伊豆急下田着。脂が乗っていて美味しい下田の駅弁「鯛の塩焼き弁当」はすでに売り切れていた。ある意味、下田ではこれが楽しみだったのだが…。でもまあ、さっきの昼食で美味しい味噌汁のお代わりで、腹が膨れてしまっていた。勢いで駅弁なんか食べたら、更に腹が膨れてしまうだろう。
列車の時刻はといえば、16時ちょうどにSVOが発車するところである。しかも大宮行きなので湘南新宿ライン経由、時間的も行き先もには申し分無い。ところが、SVOは全車両指定席、その指定券は売り切れてしまっていた。
ということで、熱海までは各停を使うことになった。その各停車内のためにみんなが買ってきたビールは、なぜか揃って「富士山」。昨日見た激晴れの富士山を思い出した。
記 2004.12/22