2003.6/8 転付峠・東俣林道 #2 |
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大野原→(県道36)新倉 |
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105km | ||
みんな疲れているので、富士見峠登り返しの静岡行きはこの時点でなくなり、満場一致で千頭行きに決定する。13:40、二軒小屋を出発。
ここからしばらく続く東俣林道にも、かなり期待があった。去年の5月に「何て山奥なんだ」と思っていた井川湖の、更にその先延々と南アルプスまで遡る大井川上流の道なのだ。
しばらくの間、約1300m〜1100mとけっこう高いはずの標高からは違和感がある、平坦で広く深い谷間が続く。その谷をゆったり流れる大井川に沿って、延々東俣林道のダートが続く。ダートとしては広い道の周囲は、開けたりカラマツ林になったり山の岩肌が露出したりしている。
時々山々の間に残雪の3000m級が見え、思わず立ち止まる。振り返ると2500〜3000m級の緑の山に挟まれた、大井川の大きな谷が続いていた。川の水が絵の具でも流したように青いのは、鉱物の関係だろう。昨日の早川もそうだったが、この辺の岩の色はそんな感じなのだ。
山の斜面は崩落も非常に多いようで、途中には復旧中のような場所があったり、対岸など標高差数百mの規模で山の斜面がすかっと崩れ落ちている場所もあった。そのすぐ隣も、斜面の50m〜100mぐらいの岩の両側が土砂崩れになっていた。岩自体もオーバーハングした状態になっていて、今にも崩れ落ちそうだった。
標高はかなり高いはずなのに、道は下ってるんだか平坦なんだかわからないぐらいの斜度だ。しかも1時間ほど下ってから、意味の無いアップダウンが頻繁に現れた。これでは全然距離が稼げない。さっきの転付峠で疲れてしまっていて、何てことのないちょっとした登りがたまらなくつらい。「何でこんな道造るんだよ」とぶつぶつ言うが、まだ元気なすずさんががんがん先へ引っ張ってくれる。
さっきまでの転付峠の山道があまりに山深かったので、標高にしては広すぎる谷間の風景は、「こんなに谷の広い場所まで降りてきたんだ」という根拠の無い安心感につながってしまっていた。
1時間以上も似たような風景が続き、ようやく地図には載っていない赤石ダムを通過。ダムにありがちな取付部の激坂を下って振り返ると、黒と白の斑になった赤石岳が、奥の真正面、少し厚めの灰色の雲の中に聳えている!
3人とも立ち止まる。「いい加減飽きたよ」と言っていたGASATIさんも思わず歓声を上げていた。
残雪の赤石岳の逞しい風景を眺めてから、地図とGPSの線の形を比較し、現在の位置を確認。と、全体のボリュームからは恐ろしく先に進んでいないことがわかり、更に黙々と第1畑薙ダムへ下り続ける。
吊り橋を渡ると、大井川の河原は、明らかにダム湖一杯に砂利やら流木が溜まったとしか思えない異様な広さの砂利原になった。とにかくやたらとスケールが大きな風景が続いた東俣林道だったが、ほぼ平坦になった道をしばらく進んで、砂利原が湖になって、ようやく現れた東俣林道のゲートをすんなり通過。ここから県道60だ。
16:10、畑薙ダムに到着。
時間的には、もうかなり焦った方がいい時間である。この先井川までで20km。そこから千頭まで更に30kmぐらいはあるのだ。千頭発の大井川鐵道の終電は19:42。なんだかかなり雲行きが怪しい。下手をすると東京まで今晩じゅうに帰れないかもしれないという、そろそろそういう心配が頭をもたげ始めていた。
一方、朝4:20から行動を開始したが、その後休憩のおにぎり程度しか食べていない。みんなそろそろ疲れで表情が無くなってきているようだった。ここでようやく見つけた飲料用の自販機で、糖分を補給できて助かったぐらいだ。
それにしても長い下りである。山サイ研のガイドブックで、林道下りにわざわざ1日費やしている理由が身に浸みてわかった。
ダムの駐車場に停まっていたワゴンの帰り支度の登山客という風情の方に、この先の井川から静岡へ向かうバスの時刻を聞いてみるが、果たしてそんな都合のいいものがあるかどうかすらわからなかった。仕方無い。まだまだ先へ行かないと。
畑薙湖発は16:30過ぎ。程良い幅の舗装路が、巨大なダムの向こうに落ち込んだ谷間から、標高差300mぐらいの高さで延々と続く。
広く深い谷、立ち上がる山々、谷底の湖に大井川。あまり見た記憶が無いほど豪快な風景が、車のほとんど来ない道からよく見渡せる。素晴らしい眺めだが、迫力十分と言うよりも、高さが怖くて早く下ってしまいたい気持ちが強い。
しかし、相変わらず道の斜度は下ってるんだか平坦なんだかわからないぐらいで、行けども行けどもなかなか地図上で進んでくれない。時々結構長い登り返しすらあるのも今まで通りだ。
17:20、見覚えのある白い鉄骨トラス橋がちらっと見えた。と、すぐ長めの激下りトンネルがあってから、下りきると井川湖に到着。湖岸の道を進み、湖を横断する吊り橋の脇で一旦休憩。が、どうせなら商店で休憩するべく、井川の集落へ向かう。
井川ではバスの倉庫を発見。もしや、と思って時刻表をのぞき込むと、静岡行きはあったにはあった。が、16時以降の欄は真っ白。そもそも16時までに着ければ、静岡行きのバスに乗ることはなく、自走で千頭に向かうに違いない。
こうなったら自走で千頭まで何とかたどり着くしかない。ちょっと甘めの菓子やパンで補給して、井川湖発が18:00。
(井川湖 写真は2002.5/3撮影)
井川湖岸の南端、西山平でこっちだと思って進んだ道は、目指す千頭方面への道ではなく、富士見峠への県道だった。再びもとの道まで戻って15分弱、この時間になって痛いタイムロスだ。
気を取り直して戻ると、しばらく細い道が今までと同じように、山の中を大渓谷を見下ろして続いた。ブラインドコーナーが至る所にあるので注意して進むものの、井川まで降りてきたのに車の通行がほとんど無い。今までと同じようにとても雰囲気のいい道ではあった。しかし、多少の登り返しが現れるのまで、今まで下ってきた道の通りである。
渓谷の下の方には、ゆったり蛇行する大井川の川面が見えた。時々井川線の線路が山の中にちらちら見える。
夕方もそろそろ暗くなってくる頃だった。相変わらず元気なすずさんが、ちょい坂でぐいぐい引っ張ってくれるのが助かる。けっこうアップダウンがある県道を、走りを惰性にしないようにとにかくひたすら進む。
井川ダム、第二井川ダム、長島ダムと、ダムごとに2〜300mぐらいの標高差がある渓谷が拡がり、その度に「早く地面に降りたい〜っ」と考え、登り返しに悪態を付く。今日のおきまりのパターンで、もう珍しくも何とも無い。
下っても下っても、どこまでも際限無く山奥の風景が続き、終電までの残り時間を眺めながらなかなか気を揉む。まじでやばいかもしれない。
しかし、最後のトンネルを抜けると、地図通りに急に山の間隔が広くなった。かなり薄暗くなった行く手の谷間に灯りが集まっている。19:20、とうとう千頭着。何とか大井川鐵道の終電まで20分。とりあえず一安心だ。
間髪を入れずに輪行作業を開始する。と同時に、今日中に東京行きの新幹線に乗れるかどうか確認しなくてはいけない。駅員さんが時刻表で調べてくれ、金谷で10分強、静岡で3分の乗り換え時間で、東京着は22:30過ぎぐらいのようだった。岡山発、静岡の次は東京という「ひかり」、理想的だ。新横浜行きのCASATIさんは、その10数分後の「ひかり」がある。
つまり、大井川鐵道の終電に乗れば、その日の内に東京に着けてしまう、ということだった。怖るべし新幹線。
すずさんがビールを仕入れに行くと、もうホームの自販機の電源は落ちているようだ。駅員さんに外の自販機で買うための両替を相談すると、なんと冷蔵庫の中のビールを実費で分けてくれたらしい。そういえば、大井川鐵道のこういう人情味の厚い駅員さんの話を時々聞くような気もする。
約1時間の金谷までの間、あの強烈だった転付峠の山道の話、CASATIさんもメンバーだった10年前のFサイ転付峠OFFの話、次回はまた10年後だろうという話など、いろいろと盛り上がった。
結局、自宅着は23:50。長い1日だった。
後日現像が上がってきたが、フィルム4本を撮りきったと思っていた当日の写真が、実は大半がシャッタートラブルで1本半ぐらいしか写っていない。CASATIさんによると、前回もせっかく撮ったフィルムが冠水して、「また来るように」という神様の思し召しだとみんなで言っていたとか。
記 2003.6/26
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Last Update 2003.9/21