塩山→(県道38・町道)石島 |
(以上#2 以下#3) |
合流点から広葉樹林の尾根を巻いたところで、黒平町への下りが始まる。
雲一つ無い真っ青な空の下、右側の視界が一気に開けた。斜面を谷底へと下る明るい茶色のカラマツ林、その谷の中に飛び出す岩山、壁のように立ちはだかる甲信国境の山々。下の方は赤や黄色に紅葉した広葉樹、濃い緑の針葉樹。色とりどりの色彩の中、飯森山に露出した白い岩肌が逞しい。
道は切り立った斜面に張り付き、ぐいぐい下ってゆく。谷間に向かって開ける場所では下を見るのが恐ろしいほどの大展望に言葉を失う。急斜面の森の中では紅葉からの木漏れ陽が眩しく、時々上を見上げると、切り立った山に所々赤や黄色く鮮やかな紅葉が見られた。
この時間になると、そろそろ紅葉目当ての自動車がちらほら現れる。車を止めて谷間に見入る人、ガードレールぎりぎりに三脚を構える人、だいたいみんな集まるポイントは似ているようだ。
乙女高原の辺りで葉が落ち始めていた広葉樹は、標高が下がると次第に黄味の強い緑になってきた。それが鮮やかな黄緑色になった辺りでは、見下ろしていたはずの谷の斜面が正面に眺められるようになっていた。そのまま急降下を続け、11:05、黒平町着。
黒平町からは御岳林道で再び標高差600m程度登り返し、木賊峠に向かう。その前に、森林管理の住み込み事務所みたいな建物の裏庭でちょっと休憩。
まぶしい日差しがぽかぽか暖かく、緑の勢いが良くて秋を感じさせない。が、あまり長居しすぎても身体が冷えるだけなので、おにぎりを腹に押し込んで、再び登り方面へと出発。
暖かく感じるとは言え、5分ぐらいの休憩で身体は再び冷えてしまっているようだった。言うことを聞かない身体と斗いながら、動けるだけの出力で木立の中をのろのろと登る。
木賊峠とその登り下りは、山深い雰囲気というか独特の寂しさと清らかさと拡がりを感じさせる。この雰囲気を味わうのが今日の第3の目的だ。
精進川沿いの少し開けた谷に出ると、正面に白っぽい岩がぼこぼこと異様に隆起した瑞牆山が見え始めた。さっきから少し標高が上がったからか、周囲の広葉樹林は再びやや黄色味が目立ち始めている。
森林浴広場の外れで、いつ来ても通行止めのゲートが閉まったままの御岳林道から分岐。いつか今日みたいに天気のいい日に、ゲートの向こうの御岳林道へも行ってみたいと思いつつ、精進川を渡ってくるっと方向を変えた池の平林道で木賊峠へ向かう。
急斜面に張り付いたコンクリート舗装の林道は、稜線に向かってまっしぐらに登ってゆく。急斜面の常で、適度に疎な木々の間から周囲の景色がよく見え、飽きない登りだ。なかなか厳しい登りが続く分、高度はぐんぐん上がり、すぐに今まで隣だった谷間を見下ろすようになった。密実な山の森には、ところどころ鮮やかな紅葉が目立つ。
練習ロードの方がすごい速さで脇を通過していった。かなり厳しい登りのはずだが、ぐいぐいと一気に見えなくなってしまった。
谷間に沿った一直線の登りがやがて斜面を巻きだし、急角度のつづら折れがいくつかあって、間もなく稜線に到着。
稜線上では斜度が緩い最後の登り区間が少し続く。木々の向こうには、北側に下る斜面に拡がったカラマツの大森林と、その向こうにずらっと並ぶ金峰山から瑞牆山までの甲信国境の山々が眺められた。
そろそろ正午を過ぎ、空の中には少し雲が浮かび始めていた。空の中の雲が緩やかな斜面に拡がるカラマツの森林に、斑模様の影を落としている。
12:35、木賊峠着。峠ではあずまやのある展望広場で休憩しようと思っていた。ここから富士山を、まるで空の中に浮かぶような角度で眺めることができるのだ。以前のオフで、普段眺めている遠くの富士山からは想像が付かない角度と大きさで空に浮かぶ富士山を、逆光の白い光と薄い霞の中でしばらく見つけることができなかったものだった。
と、私が到着すると同時に車が到着。急いで写真を撮っている間にオートバイが2台到着。狭い展望広場がけっこう賑々しい状態になってしまった。これでは何と無くイメージが違う。空も霞っぽくて富士山が白んでいるし、先を急ぐだけのボリュームがまだ残っているので、例によって5分ぐらい休憩して下り始めることにした。
峠下の開けたつづら折れからは、さっき稜線上から眺めた広々としたカラマツの斜面、甲信国境の山々を一望にできる。
甲府から直接登って来れる木賊峠にはやはり自動車が多い。道ばたの広場には何台かワゴン車や乗用車が止まっている。見晴らしのいいつづら折れの折り返しに車を停め、昼食を拡げる老夫婦もいた。
「お邪魔しまーす。ちょっとそこで写真を撮らせて下さい」
「瑞牆山にもう少し陽が当たってるといいんだけどねえ」
なるほど。雲が空にもう少し多くなっていて、確かに瑞牆山辺りが影になっている。
記 2003.10/23
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Last Update 2003.10/30