2002.6/2
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H島→(国道XXX)u沢→(県道XX)H河原 |
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例によってK駅4:33の始発下りに乗り込み、T駅でDさんに合流する。T駅には何とTKさんが来ていた。ランドナーOFFで計画をお話ししたのだが、どうしても今日は都合が付かなかったとのこと。それでSO野からこの時間にT駅に来るのが凄い。
TKさんのお見送りを受け、5:18の各停で出発。
Oで乗り換えた列車は、Sトンネルを抜けてK盆地に出た。朝から湿度が高いようで、全体的に空気が白く霞み、山の上が完全に雲に隠れている。空を眺めて2人とも
「何とも言えない天気だねえ」
という言葉を連発する。前回の無念の撤退が思い出された。
8:15、H島発。
最高28度の天気予報通り、妙に蒸し暑い。暑いので日なたがしんどいのは厄介だが、心なしか空の雲が切れ始めているのはいい傾向ではある。
2週間の間に、新緑はすっかり濃い緑に変わっていた。道路の空中に飛び回る虫の数も全然違う。木々の間の蝶、谷間に響くカジカガエルやハルゼミの合唱が何とも賑やかだ。一方、朝のガスっぽかった空気は、いつの間にかどこかへ行ってしまい、濃い青空が青々とした山の間に拡がっていた。「初夏」という言葉が頭に浮かぶ。
10:15、N田通過。曇りだった前回と違い、見上げるM連峰の残雪の稜線が、コントラストも鮮やかに爽やかな感じだ。
例の通行禁止入口には、原チャリが一台。トンネル入口の通行禁止に途方に暮れているようだった。いかにも原チャリツーリングで気軽に来たら通行止めでした、という感じには見えたが、一応念のため手前でしばらくやり過ごすことにする。待っているとそのうち4WDが2台もやってきて、やはりトンネル柵の手前で停まった。
「どうせ進めないんだから、早く帰れよ」
とDさんと文句を言いながらしばらく待つ。
日なたはもはやかなり鋭い太陽光線が差すようになっていた。

その後も前回と同じく、順当に長大細暗トンネルやダート区間をこなし、Y神への道を見上げ、緑の谷をどんどん標高を上げた。
「今日はいけるねえ」とDさんと話しながら進む。谷に覆い被さる勢いのいい緑が何とも美しい。
前回あんなにたくさんあった水場は何故かことごとく渇水状態だった。途中で美味しい湧水を補給するためにもともと少なかったペットボトルの残量を、気にしながら進まないといけなかった。おまけに暑い。
行く手の空はずっと晴れたままで、逆に青みを増してすらいた。やがて、雲一つ無い青空をバックに、H河原の例の鉄骨橋、その奥にM連峰の頂が姿を現した。
この段階で、今日の成功を確信した。

例によって国民宿舎のバス停広場で軽いおにぎり昼食にする。身体があまり冷えないように、そそくさと12:15、H河原発。用心して前回と同じくゲート先の吊り橋からM林道に合流。でも、今回も小屋は無人だった。
しばらく黄緑色の木々に視界が遮られて、単調な登りが続く。施工業者の作業広場では、前回も確かに見ていたはずの湧水を発見。あまりに勢い良く出ているので沢の水かと思ったが、透明度も味も最上級だった。Dさんはさすがで、ちょっと飲んだ瞬間に「うまい」と言っていた。いい機会なので、ボトルの水を一気に交換する。残量が少なかったので、ちょっと濁り気味の水を我慢して飲んでいたのだ。勢いのいい水に手をかざすと、凍りそうな程冷たい。

少し先で道路からの視界がが一気に開けた。
見渡すN川の谷、遡る谷の奥、遠くに残雪のM連峰が見えた。空気と水の透明度、山々の岩のボリューム、その岩に生える木々の力強さ、透けるような濃いような木々の緑。凄い青濃度の空をバックにかりかりの鋭い太陽光線が色彩のコントラストを上げ、今まで見たどの道の景色よりも段違いに鮮やかで迫力がある。これがM林道か。感動というより驚きに近い気持ちで、目の前の風景をただ眺めていた。
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前回撤退した場所からほんの少し先からは、更に迫力満点の風景が拡がっていた。奥へと続くN川の流れ、立ち上がった岩山に張り付く細道、青々と生い茂った緑、その奥の残雪の山々。見上げる頂の残雪はそのまま谷に伸び、残雪の裾のどこかから勢いのいい沢になっていた。猛々しい岩に濃い緑の針葉樹林、ほとばしる清らかな水。空気も水も、とにかく透明度が違う。

谷の迫力、山の迫力というようなものに、Dさんと私は圧倒されていた。前に進んだり高度が上がったり、カーブを曲がったりする度に周囲の風景との位置関係が変わり、風景は刻一刻と変わった。その度に立ち止まって眺め入っていては、前に進むわけがない。
一方で、今回は来る前にインターネットで情報収集しておいた、林道建設による地滑りの部分もちゃんと確認できた。一度樹木が無くなった道路側の斜面が、保水能力が無くなったために樹木が定着することなく崩壊し続けている。M林道が無ければ自分がここに来ることは無かっただろう。しかし、同時にこの道が、谷を崩し続けているのも事実なのだ。
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やがてN川とK沢の分岐に到着。地図を確認すると、今までの迫力のある谷の雰囲気はそのまま本流のN川方面へ伸びてゆくようだ。こっちも興味をそそられるが、今日は支流のK沢方面へ向かうのだ。この通行禁止の道に忍び込んだ自転車は他にもいるようで、MTBが沢の降り口に見えた。
と、すぐ上のカーブの向こうからワゴンが現れた。
林道の番人か?緊張してDさんと顔を見合わせ、とっさに「H村から今朝やってきた。H村へ帰る途中だと言おう」と言うことにした。
ワゴンには「C小屋」と書いてあるのが見えた。とりあえず行政の人ではなさそうではある。ゆっくり近づいた車が我々の前で停まり、おばさんが声を掛けてきた。
「どこから入ったの?」
「H村です。これからH村へ帰るんです」
「あ、そう。でも向こうはバスがもう動いてるよ。怒られるよ。止めた方がいいよ」
「でも、帰れないんです。向こうじゃないと」
というような会話があった。
下って行くC小屋の自動車を見送り、峠までの最後の区間へ出発。

そこから先は、K沢の谷に道が続いた。道も標高が上がって山は近づき、もはや見上げるという程ではない。沢の水は遠くで見ているだけでわかるぐらい透明で冷たそうだったし、青みの強い広葉樹の緑が強い日差しに透けるのが美しかったが、あと僅かのはずの峠を目指し、ダートと舗装が時々入れ替わるどちらかというと単調な道を、今までの雄大な景色の反動で、黙々と登るようになっていた。
おまけに、峠を目の前にして気圧が下がったために、私は一種の高山病になり、頭がぼうっとし始めていた。まあ1700~1800mを越えると起きる、毎度の現象ではある。足を回すのがつらくてしょうがなかったが、DさんがGPSを見ながら、もうK峠が近いことを教えてくれた。

右手の空の中に白い頂が姿を現した。稜線の形には見覚えがあった。KK山である。山の向こうのH州からよく眺める稜線の形が、こっちから見ると逆になっているのだ。こっち側から眺めるKK山の頂上近くの山肌が真っ白だ。何か堅そうな感じなので、残雪ではなさそうだ。どうやら花崗岩が現しになっているのだ。
KK山の姿を眺めたり撮影したりして小休止。Dさんによると、頂上にあるかもしれないH村営バスの折り返し所でバスの運転手に見つかると、Y県側に帰らなければいけないかもしれないとのこと。まあ峠まで来た訳だから、ここはぜひH村側へ抜けたい。
駄目押しのつもりで、自転車を停めて用心しながらカーブの向こうを偵察、人気がないのを確認して坂の上の次のカーブへ向かう、というのを何回か繰り返した。

ずっと開けていた周囲は、峠の手前で木漏れ陽の針葉樹林になった。
苔生す高い木々の静かな静かな空間に、小鳥の声だけが時々響く。今まで自動車のいない道を走ってはきたが、沢の水音や何とはない風のざわめきが途絶えない道だったので、この静けさと森の深さ、空気の清らかさは本当に別世界だと思った。
14:10、K峠着。ちょうどうまい具合に公衆便所が設けられていたので、用を足す。ちょっと向こうには峠の山小屋が見えた。小屋には人はいたかもしれないが、とりあえず外には出ていないようだった。これ幸いと、人を用心して峠のちょっと手前に停めてきた自転車に戻り、私は速攻で峠を通過。
Dさんは大胆にも山小屋の前の峠の看板でしばらく撮影していた。

峠から続く直線が終わるカーブの外側、木の向こうに、真っ青な空をバックに大きな緑の山肌が見えた。
国境の峠にはありがちではあるが、向こうとこっちで風景は全然違うみたいである。空の中に投げ出されるような巨大な谷を見下ろす道。晴れまくった空に、谷を挟んでカーブごとに表情を変えるM連峰の巨峰。いつもH州やC線から眺めるHS山が全く反対の稜線を描きながら、見下ろす谷底から空の中へ、手前からずっと先の方まで、間近に右側の視界一杯にそびえ立っている。
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今までの山の懐に深く入り込むようなA村側の風景は素晴らしかったが、こっちのH村側は東西に続く山脈を行く、開放的で雄大な空中の道だ。こっちも本当に感動的としか言いようがない。Dさんも私も、道が曲がって山の形が少し変わっただけで、さっきのN川の登り以上に大騒ぎしながら、もう写真撮りまくり状態。下りなのに登りと同じペースである。
道ばたには第1種特別地区の看板が立っていた。国立公園の区域分けだが、見慣れない看板だ。それもそのはず、ここは本当は道を造ってはいけない地域なのだ。確かに普通自転車で通るどの道よりも空気も水も純み、山は深い。
ふと森の中を鹿の影がよぎっていった。路上に猿のたむろする場所もある。やはりこの道は、この山の中に本当はあってはならないはずだったのだ、と思った。
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どこかで出会うかもしれない村営バスには注意しなければならない。そう思って眺めていても路上に轍の跡は無いようだが、それでも村営バスといつすれ違うかはわからない。
途中に山小屋が1ヶ所あり、ここまでバスが走っているのかもしれない、等と想像しながら、人が常駐していそうな小屋の前を全力で通過したりした。

山肌を見渡すカーブの奥の方に、ちょっとした広場を発見。あんな広場の物陰だったら隠れやすい。と思っていたその瞬間。
彼方の下の道から1台のバスが登ってくる!
今まで気を付けていたので、何かのんびり走っているのでちょっとギャップを感じるが、あれが村営バスに間違いない。でも、今なら発見した広場でバスをやり過ごせる。急げば余裕で間に合うだろう。凄く都合がいいタイミングだと思った。こんなもん狙って合わせられるものではない。ツイてるぞ。
広場に着いて、目に入った広場の仮設ハウスの陰に、速攻で回り込んでDさんと隠れた。
やがて下の道からエンジン音が聞こえ、バスがちょうど仮設ハウスの目の前の道に停まった。どうも小屋の前がバス停だったらしい。ちょっと驚いたが、まあいい。早く発車しろ。
ところが、バスが停まったまま発車しない。それどころか客を降ろした後はぐるっと回って広場に乗り入れ、エンジンまで止めて運ちゃんさえ降りてきたのだ!
そんなばかな!
このままじゃ見つかってしまうではないか。Dさんと顔を見合わせ、小屋の脇に身体だけ移動する。が、広場の真ん中まで出て山々を眺めいっている客には、もう自転車は見つかっているだろう。やばい。もう一度よく考えると、そこは村営バスの終点だったのだ。
運転手は客と談笑している。位置関係から言って、もはや確実に自転車は見つかっている。運転手がこっちへ来ないのは、我々が小屋の陰にいると気づいていないからだろう。でも、我々も見つかるのは時間の問題だ。このままここにいても隠れ通せるわけがない。
運転手が何となく小屋の陰になって見えなくなった隙を見て、素早く脱出した。
ダッシュでしばらく下った後、いい加減大丈夫だろうと思ってちょっと速度を落とす。
「この道なら下り基調だから、バスより自転車の方が速いでしょう」
とDさん。まあそりゃそうなのだが、Dさんが言うと何だか下りで激走りをしないといけないように聞こえる。
「見つからずに何とか逃げられたね。…でもばれたのかな…」
「ばれたでしょうね」
等と話しながら、再びのんびりと下る。
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ほんのちょっとの登り返しが何回かあって、林道は山の斜面を丁寧にトレースしながら次第に標高を下げる。行く手には眼下のT川がK川と合流する場所も見えてきた。あそこがM林道の終点かと思うと、ちょっと寂しい。
下るとともにどんどん気温が上がり、木々の緑が濃くなった。さっきまであんなに静かな道だったのが、木漏れ陽で緑色に染まった道の上下からは、いつの間にかハルゼミの大合唱が響きわたっていた。
「蝉時雨のステレオサウンドだ」
とDさん。
鮮やかな木の緑に雲一つ無い青空、ハルゼミの大合唱、見下ろす谷間の大展望。いつまでもこんな道が続いて欲しい、と思った。
唐突にカーブを曲がると、下りが急になった。最後のつづら折れ下り区間に突入したのだ。木々が切れると、今まで南側の山に遮られて見えなかった残雪のM連峰が姿を現した。
間もなく下から登ってきた自動車とすれ違った。運転手は我々を睨み付けていたが、それもそのはず、「管理用」と書かれたパトロール車だったのだ。一気に通過したので、転回する広さがないこの道では、いくら自動車でも下る我々を捕まえられない。ザマミロだと思った。しかし、常時パトロール車が巡回しているのだろうか。ちょっと厳重な管理ではある。

つづら折れを何回か折り返し、谷間の川が間近になってきた。だいぶ高度が下がったところで、唐突にゲートの開いた橋と谷間のゲート小屋が見えた。最後の仕上げだ。Dさんの指示で、橋のちょっと手前の木陰に自転車を停め、管理小屋の様子をうかがう。が、管理小屋には人がいるようだが、何故かゲートは開いている。
ここまで来たら突っ走るしかない。ダッシュで通過だ!気合いでいくぜ!!
と木陰から走り出た途端、小屋から人が走り出してゲートが電動で閉まってゆくのが見えた!
バレてたのだ。
彼らは我々を待ちかまえていたのである。網に飛び込む魚の気持ちを理解したと思った。こうなったらもうとりあえず引っ込みが付かない。逃げ道もあるわけがないので、閉まったゲートの脇に自転車を停めた。
とりあえず謝ったが、結局5分ぐらいゲート脇で説教された。
我々はあくまで
「夜明けにH村ゲートに侵入して戻ってきました。Y県は行ってません。お騒がせしました」
と、申し合わせた内容の通りを話した。
ゲートの番人は2人いた。
「ゲートを抜けるとは大変なことだよ」
「次は警察だよ」
とのこと。一通り紋切り型の説教があったが
「本当にH村を出入り禁止になるよ」
「自転車はブレーキが効かないでしょ。そう、そんなことも通行禁止の原因なんだよね」
とか、急に優しく
「今日はどこから来たの」
とか言い出すのも何か妙だった。事情聴取の後、彼らは電話で誰かに指示を受けていたが、結局、事務的に住所氏名報告&厳重注意&\500徴収ということになったようだった。多分さっきのパトロール車に指示を受けているのだろう。
程なく、まあ無事に放免された。
O川林道を、「S荘」の脇を抜け、M湖の脇をH村道の駅へ向かった。
何か悔しい。怒られたことではない。裏をかいて侵入したと思っていたのに、実はまんまとH村の管理システムに捕縛されてしまったのである。思えばバスの運ちゃんから連絡→パトロール車が出動、確認→終点ゲートで捕縛、ということなのだろう。考えれば考えるほど、何か完璧にしてやられてしまっているではないか。最後まで何かすっきりしない私だが、一方、Dさんは始終にこにこ顔。番人の口上があまりにも予想通りだったからとのこと。
道の駅では大人気のプチクロワッサンを何とか5個確保できた。いろいろあって最後のだめ押しがうまく行ったようで、満足。

16:05、H村道の駅発。I市まで最後のひとっ走りだ。
正面からの逆光と向かい風の中、サイクリングロードをI市へと下る。逆光の雲の中に、今日見えたM連峰の山々みたいな、残雪のC連峰が聳えていた。その山々の姿が、今日のM林道で今までより近づいて残雪のM連峰を見てしまったことにより、自分の中で全然違う物に変わってしまっっているのに気が付いた。あの山の麓にも、今日見たあんな風景がきっと広がっているのだろう。

16:55、I市駅着。
記 2002.7/24
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Last Update 2003.12/21