H島→(国道XXX)u沢
→(県道XX)H河原
→(M林道)o利
→(県道XX)R王
→(国道XX)K
90km
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2002.5/19
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M線が早朝のK盆地から南下する間に、厚い雲の切れ間から、鋭い直射日光が山間の谷間を照らすようになっていた。トンネルをいくつか抜け、再びF川の谷が開け、H島到着である。
ワンマンの支払いにちょっと手間取って普通列車を降りると、駅前で1時間ぐらい前にFから北上して到着したCさんが、我々を迎えてくれた。
8:35、H島発。F川を渡り、2週間前にも通った県道XX「M街道」でH川の谷に入る。対岸が遠い割には谷には平地と呼べる空間は少なく、何かとりつく島がない比較的広めの川原が続く。谷を挟む山はまだそう高くはないが、5月半ばらしい鮮やかな明るい色の新緑が、山の下から上まで生い茂っている。
道がH川の谷と分岐しN川が始まる辺りで急に谷が狭くなり、ぐいぐいと標高を上げ始める。勢いのいい新緑に包まれた谷に、道に覆い被さるような木陰が増え、登りではあるが涼しさを感じながら走る。
断続する集落の間の道を進み続けると、両側の山々が次第に高くなった。上の方の緑の色が明らかに麓の緑と違っているのがまた何とも鮮やかである。
A倉を過ぎ、谷が更に狭くなるにつれて集落も小さくなり、その間隔は次第に拡がった。
10:30、トンネルを抜けると人造湖の青い湖水が目の前に拡がった。N田到着である。程良い広さの広がりが何か今までの谷に較べて目新しく、湖水の独特の鮮やか過ぎる水色をぼんやり眺めながら、ここでちょっと休憩。

熊の皮が2階の窓から干してある旅館の脇を抜けると、思ったよりも小さいN田の集落が終わる。M山林道への分岐を過ぎ、谷は更に狭くなった。道の斜度がいつの間にかけっこう急になり、覆道が連続し始める。
迫ってきた山肌の切れ間から、間近というか遙か上の方にというか、M連峰の残雪の稜線が少し見えた。残雪の白・岩肌の黒のコントラストに何か異様な明瞭さというか、見たことがないリアリティがあり、その迫力に一行のみんなが息を飲んだ。
やがて話に聞いていたN田側のトンネル前ゲートが見えてきた。ぱっと見には門扉は高く、隙間は無いように見える。が、近づいて行くと左側に…あった。本当に自転車1台分ぎりぎりの隙間が。前輪を持ち上げて中に滑り込み、外光の明かりの中で前照灯を点灯。
いよいよ通行止め区間だ。
トンネルの中は真っ暗で、おまけに凸凹した路面に水たまりがたくさんある。曇りとはいえ、今まで初夏の昼光の中を走ってきたので、弱いライトでは足下がおぼつかず、暗闇に周りを包まれて平衡感覚が次第に無くなってくる。何とも心許ない感じだ。おまけにトンネルが長い。遙か向こう、反対側出口の小さな明かりがなかなか近づかない。
それでも何とか真っ暗なトンネルを抜けると、外は相変わらず谷に張り付く森の中の細道だった。が、自動車が入ってこないというだけで、道には明らかに今までとは何か別次元の雰囲気があった。静かなテンションというか、聞こえない生物の賑わいというか…。

今までにも増して生い茂った木々が頭上に覆い被さり、緑のトンネルを造っていた。谷間に響く小鳥の声が気持ちいい。また、露出した岩からは無数の湧き水が流れ出していた。水と緑に包まれた道を、普通に登れるぐらいのペースで進む。いかにもM連峰に近づいているような気分になった。
D道路と異名を取るだけあって、行く手の谷間のちょっとした広がりには発電所も所々にみられた。視界の広がりの距離感と建物が、何か人間の営みを思い出させて妙に懐かしい。
見上げる切り立った山のかなり上の方に、見るからに頼りないガードレールやスノーシェッドが続いているのが見えた。どうやらあれがYトンネルからの道のようだ。凄い道のように見えるが、あんなに高いところの道がこの道とH河原で合流するのだ。そういえば時々補修工事らしい建設重機の音も聞こえる。
細い道はダートになったり舗装になったり、谷の形に忠実に折れ曲がる度、谷の反対斜面の上の方に見えていた道路が近づいてきた。見上げる対岸の山々も、上の方は明らかに2000m以上の山らしい、荒々しく清らかで浮き世離れした表情になっている。

やがて前方に細い鉄骨トラス橋が見えた。12:45、H河原着。
橋の向こう、対岸にパックハウスの監視小屋が見えた。窓が閉まっているので人はいないようではあったが、ここで見つかると何しろ一巻の終わりだった。用心のため、みんなでそそくさと通り過ぎる。橋の対岸に広場があり、車の姿が見えてぎょっとした。が、よく見ると、長い間放置された車のようだ。
でも、ちょっと離れてMTBっぽいシルエットの自転車と、人影も見えた。

カラマツに囲まれた国民宿舎の前のバス停広場で小休止。「あと標高差500mぐらいです、ゆっくり行きましょう」とDさんが言った。
誰もいないバス停の広場は、そこだけカラマツが切れているためか木漏れ陽の日溜まりができている。
ベンチでしばしおにぎり昼食を取る間に風が出てきたようだった。いつの間にか太陽も姿を消していた。13:00、H河原発。
カラマツの森の中を少し進んだ所で吊り橋を2つ渡り、いよいよM林道に合流する。
N川の吊り橋からは、沢を遡って上の方に、雲を被ってはいたが、残雪のM連峰が聳えているのが見えた。いよいよ間近に見えてきた山の迫力に、みんなが歓声を上げる。吊り橋から見えるH河原の監視小屋にもどうやら人のいる気配がないので、写真を撮ってしばらく山を眺めた。
吊り橋を渡りきっても、またしばらく雲に隠れつつある山の姿を眺めていた。

一通り感動して、峠方面へと向かう緩い坂道を登り始めた。と同時に、水滴がぱらっと落ちてきた。雨だ。
しばらく立ち止まって様子を伺うと、ぱらっと来てからは雨にはならず、薄明るい曇空なりに不安定な天気のようだということになった。
そのまま登り続けると、途中には建設会社の仮設事務所のようなパックハウスが建っている狭い平場があり、遙か下方のN川の河原には中規模程度の生コンプラントがあった。どうやらY県側のM林道補修基地、といった類のもののようだった。
急な岩場に張り付く道のためか周囲に木々が無くなって、視界が急に開けた。100mぐらいの標高差でN川の渓谷が見渡せる。対岸の切り立った山々、その岩に張り付いている逞しい巨木の濃い緑は、何とも清らかで力強く、みんなが思わず眺め入った。
道の周辺は木が全く生えていない岩場なので、渓谷が山を遡る方向へと自分たちのいる道が続いているのも見渡せる。途中には覆道などもあり、その屋根には土砂がすっかり溜まっていた。その先の谷はどんどん山の間を遡ってゆくようである。
とここで再び、突然水滴が落ちてきた。あっと言う間に勢いが強くなる。今度は紛れもなく雨だ。見上げる山々に掛かる白いガスも、急激に勢い良く動き出した。「撤収ー!リベンジは6月2日です!」とDさんが叫んだ。結局、峠まであと標高差370mの所だったが、これじゃダメだと全員が直感したようだった。
みんな後ろを向くと同時に、今まで来た側の空が、峠方向より遙かに暗い色になっているのが見えた。
やばい。絶対にやばい。速攻で戻るしかない。

H河原まで下りきると、とりあえず空の厳しい表情は少しは軟らかくなった。が、依然として夕方のような明るさであることには変わりなく、一刻も早くこの谷を逃げ出す方が良さそうだった。人気のない監視小屋の前で少し休み、結局距離の短いY峠へ抜けることになった。
H河原からY峠へは、木々の生い茂る険しい岩肌に張り付くように、下り基調のアップダウンが続く。そう登っていないはずなのに、見る見るうちに谷が深くなり、行きに通ってきた対岸のN川林道は遙か下になっていった。

雨を浴びて瑞々しい、緑の濃い木々は、道を上下から包んでいた。しかし、岩肌自体が急なので、時々葉が切れて視界が開ける。その度に見渡せるN川の谷、緑の山の間に聳える残雪のM連峰の風景には思わず立ち止まって見入らせられた。立ち止まってCさんの解説を聞きながら山々を眺めていると、山の間を凄い速度で動いて行く雲の間から、いつの間にか時々明るい光が見えるまでに天気は回復していた。
林道は、入り組んだ山肌に張り付く高度のある道によくあるような、空の中の道のようになっていた。高度が上がったというよりむしろ下り基調なのだが、谷がそれ以上に下っているのだ。
14:05、Y神展望台着。
真っ黒な雨雲の中に、残雪のK岳が見えた。いや、見えたと言うより、K岳がこちらをじろっと見たようだった。トンネルを抜けるともう向こうはK盆地なのだが、今までの澄んだ空気、水、残雪の山々、生い茂る緑、一瞬で天候が変わる厳しい表情が何か全部夢のようであり、K盆地の人里のイメージからは非現実的にすら思え、なかなか去りがたい。みんなその気持ちは同じなのか、K岳の厳しい表情に見とれているのか、なかなかその場を去ろうとしなかった。

15:55、Y神発。多少短いトンネルの後に長い尾根越えのトンネルがあって、おまけに不安定な路面によるNHの前後輪同時Wパンクもあり、K側で更に小1時間ほど足止めを食った。
予想通りにY神ゲートで口頭注意を受け、不安になるぐらい下りが続き、曇り空のK盆地の埃っぽい道をちょっと走って、16:55、K着。
記 2002.7/23
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Last Update 2003.12/21