2001.9/22 奥只見湖・檜枝岐村

小出→(国道352号)糸沢
→(国道121号)湯野上温泉
→(県道329)大内
185km

大内宿

田島

会津高原

中山トンネル

内川

檜枝岐

御池

砂子平

奥只見湖

枝折峠

大湯

小出

下郷

湯野上温泉

本日の経路(赤色表示)と既済経路(灰色表示)


 そろそろ大内宿へ行きたくなってきたので、99年10月のコースと全く同じ奥只見湖から入るコースで大内宿へ行くことにした。

 東京の夜明けは霧雨っぽい雨上がりだったが、新幹線と各停で着いた小出には雨の気配は全く無い。青空の中に雲は多いが、何だか薄日すら差している。いい傾向だ。

 いそいそと自転車を組み立て、8:10、小出発。
 緩い登りの国道352号を、枝折峠へ向かい谷間を東へ遡る。秋の午前中特有の、何だか白っぽくまぶしい太陽光線に向かって走る。逆光の中の景色に意味無く気分が盛り上がる。前回は周囲の田圃の刈り取りが終わった後だったが、今回は「黄金の」とでも言いたくなるような見事な色で稲穂がまぶしく輝いている。思えば7月が暑かった今年は豊作なのかもしれない。びっしりと実った穂が重そうに垂れ下がっている。

 谷を挟む山が高くなるに連れて次第に谷も狭くなり、8:50、みみずく広場通過。すぐに大湯温泉を過ぎ、川の対岸の鄙びた雰囲気の栃尾又温泉を見下ろす辺りまで来ると、いつの間にか周囲は森になっていた。高い杉林の中の細い一本道の傾斜が厳しくなり、いよいよ枝折峠だ。
 枝折峠は、自動車は時間による一方通行、オートバイは全面通行禁止のため、自転車ツーリストのワタクシとしては静かに落ち着いて登れる。
 山肌が切り立っているために視界の開けた峠道からは、周囲から突出した八海山の垂直に切り立ったような岩肌と、岩肌の間の緑が見える。その眺めは何とも猛々しい。新幹線の浦佐を下車して比較的簡単に登れるようで、浦佐駅では中高年ハイカーの下車が多い。
 八海山も見事だが、見下ろす樹海も素晴らしい。峠道の入口辺りには、「ランプの宿」と書かれた看板が立っていたが、あの中のどこかに建っているのだろう。

 峠道は基本的には車1台ちょっと位の道が続くが、時々拡幅されている箇所もある。斜度には細目に緩急があって、ダイナミックな展望と併せて登っていて退屈しない。朝のひんやりした空気の中に今まで登ってきた道が見下ろせたり、小出らしい町の広がりも遠望できたり、なかなか楽しい峠道だ。おまけに自動車が来ないことが、やかましいオートバイが来ないことがこんなに素晴らしいなんて。
 坂が緩くなって稜線の片側に張り付くような箇所が少し続き、10:05、枝折峠通過。つづら折れを少し下ると、北又川で下りが一段落する。川の上流方面に中ノ岳というのか、大きく険しい山が見えた。

 

 そのまま更に少し進み、川が拡がって奥只見湖となり、間もなく銀山平に到着。いつもながら清らかとしか言いようがない中荒沢を渡る。そのすぐ上、間近に立ちはだかる荒沢岳の岩肌も万年雪も何とも荒々しく、何かとんでもない山奥に来てしまった気分になる。
 尾瀬三郎商店の狭い駐車場でちょっと休憩。この先にあったはずの灯りのない300mほどのトンネル対策で、バッテリーライトの電池Boxをいじっていたら、半田付けしたコードがちぎれてしまった。焦って応急処置しているとあっと言う間に時間が過ぎる。10:35、銀山平発。

 人造湖の奥只見湖は元々険しい山間の谷をかなり強引にダム湖にした湖のようだ。湖岸の山々があまりに険しいため、ダムの放流先は今まで登ってきた湯之谷村方面ではなく、湖岸の途中で道が途切れる1本北の谷の田子倉湖というのが珍しい。
 センターラインもない細い国道352は、かなり複雑に入り組んだ岸の線に沿って奥へと進む。銀山平手前でシルバーラインと合流したからか、細くカーブの多い道にはやや自動車は増えていた。オートバイも現れる。狭い道は谷側で舗装路面上の沢の流れを渡り、湖側では時々ブラインドコーナーになり、ほとんど平坦なのだがなかなか気が抜けない。
 湖水は何故かいつ来ても信じられないほどの濃い青で、湖面から立ち上がる険しい山々の白い岩肌に緑とで、独特の山深い風景を作っている。

 平坦区間が終わると、100m・280m・260mと3回のアップダウンで、深く切れ込んだ2つの谷を渡る。恋ノ又沢なんて沢の名前もあって、なかなかロマンチックだ。見上げる開けた谷間、上流方面の山々はもう本当に険しく清らかで、山々自体にも沢にも空気にも、何か漂うテンションというか、ある意味別の世界というか、人間を寄せ付けないような神々しさすら感じられる。

 最後の登り返しを下ると、正面の湖岸が少し開けているのが見えた。12:10、作場平通過。ここで奥只見湖に沿って走る区間が終わり、そのまま只見川に沿って更に山奥へ、福島県境を目指す。
 標高が上がったためか、道路脇にはカラマツが目立つようになっていた。カラマツ林が切れると小さな畑に数軒の集落、尾瀬へ向かう山小屋があり、またカラマツ林になる。何か北海道の十勝辺りの山の方の景色にちょっと似ている風景だ。林の向こうに只見川の沢音を聞きながらこの繰り返しを何度か経て、12:30、県境着。

 只見川の橋の上に自転車を停める。手前は新潟県北魚沼郡湯之谷村、すぐ向こうは福島県南会津郡檜枝岐村だ。只見川の上流方面、あの山の間が尾瀬ヶ原辺りか、と思う。尾瀬ヶ原から流れ出す只見川の川原、緩やかな登りで尾瀬ヶ原へと続く樹海、尾瀬ヶ原とすぐつながっている空気。青みの強い緑・透明な水・透明な空気、薄陽の中の風景全てが何か不思議な透明な印象がある。今日楽しみにしていた風景の一つだ。

 12:45、県境発。県境を越えたからと言って景色や雰囲気が変わるということも無く、右前方に岩肌も露な燧ヶ岳を眺めつつ、尾瀬ヶ原への入口、御池へと向かって足を進める。
 檜枝岐村に入って御池への登りが始まってから、辺りはブナ主体の広葉樹林になった。ブナの青みの強い緑、苔やらしみやらで複雑な表情の幹が美しい。標高1200mを越えた辺りから何か紅葉が始まっているのに気が付いた。空気もどんどん冷たくなっている。

 燧ヶ岳の姿が右前方から次第に横になり、燧ヶ岳から続く沼山峠辺りの斜面が見えても、しばらくブナ林の中に坂道が続いた。しかし何度かの谷と尾根の繰り返しの後、斜度が唐突に緩くなり、林の向こうに尾瀬登山口休憩所・御池ロッジの屋根が見えてきた。
 14:05、御池着。前回よりも1時間以上稼いでいる。前回断念した大内宿への自走到着が見えてきた。
 標高は約1510m程度か。冷えた身体に缶コーヒーで暖を取って、15:15、御池発。

 やはり背の高いブナ林の中、直線下りがしばらく続き、その後は細かいつづら折れで燧ヶ岳の山腹を一気に下る。つづら折れ区間では道が急に狭くなっているため、自動車が詰まっていた。道の脇を減速しながら、抜かせてもらう。
 やがて下方に檜枝岐川の河原が見えてきた。白い河原に広葉樹林が何本か生えているのがいかにも高山の河原らしい。ここで標高1100m。川の奥には尾瀬周辺の山々がそびえ立っていた。

 つづら折れ区間が終わり、道は普通の国道程度に広く立派になったが、ここから先も檜枝岐川の谷間をまだまだ下る。周囲の山々はそう高い印象は無くカラマツ林の谷間は比較的狭いので、下りに任せてひたすら進むという感じである。今まで遅かったので、こういうところで時間を稼がないといけないのが何か情けない。役場や温泉民宿が並ぶ檜枝岐の中心部を抜け、いくつものスノーシェッドを抜け、伊南村に入って伊南川と名前の変わった川沿いにまだ下る。次第に谷間に畑や田圃が現れ、15:10、内川着。標高は730m、かなり下ってきた。
 ここで国道352は舘岩村方面へと方向を変える。

 今までより多少開けた谷間に田圃が拡がる舘岩村の国道352は、緩い登り基調で中山トンネルへと向かう。道ばたの気温表示板を見ると、10℃。寒すぎる。今まで寒かった理由がようやく納得できた。
 舘岩川の谷間は狭くなって道と川だけになったり、広くなって田圃の中の1本道になったり、やがて正面に開けた山の斜面が見えてきた。たかつえスキー場だ。この時点で16:00。

 前回は国道の中山トンネルを通ったので、今回は旧道の旧中山峠へ向かおうという考えがあった。時間的には何か行けそうな気がしていた。標高差も国道とは実は150m程度、時間的にもそうロスは無さそうだ。何より国道のトンネルに入口の長いスノーシェッドは嫌だ。
 ということで旧道へ足を進めると、アプローチの坂の途中、たかつえスキー場への道との分岐に「台風15号による崩落のため中山峠全面通行禁止」との表示が。行って戻ってのタイムロスはこの時間もう許されない。しょうがないので国道を行かざるを得ない。

 標高が上がったからか、カラマツ林主体に変わった林の中を国道は進んでいった。そう雰囲気は悪くないとは思うが、いかんせん今日は今までの道が素晴らしすぎた。やがて記憶通りの閉鎖的なシェッドに長い中山トンネルを抜け、田島町へ。
 そのまま下って会津高原を通過し、更に下って17:10、田島着。町のコンビニで休憩するが、空を見上げると、秋の釣瓶落としの夕方がすでに始まっていた。急がないと。

 17:25、田島発。下り基調に任せてひたすら下る。下郷に着いたときには、もうかなり辺りは暗くなっていた。この時点で17:50、あと約10km以上。湯野上温泉からは5km弱、標高差約280mだが登り返しもある。ナイトランを覚悟して、ヘッドライトを点灯し、安全のためあまり急がずにゆっくりと進むことにした。

 湯野上温泉からは国道121を離れ、大内宿へと向かう谷間の道、県道329へと乗り換える。全く灯りのない谷間の道、現金な物で、時々通る自動車のヘッドライトが何とも有り難く安心する。
 真っ暗な寒い登り道の行く手、狭い谷間が開けて道が平坦になり、やがて視界の彼方にぽつぽつ灯りが見え始めた。まあペースも到着時間も予想が付いていたが、本当に安心した。18:50、大内宿「大和屋」着。

(写真は翌日撮影)

 宿には私の他に若夫婦が1組だけ。夕食は山の物主体で以前通り量はたっぷり。キノコのおつゆが素晴らしく美味しい。紅葉の時期まで夏と秋の狭間で一時的に客の少ない時期だそうで、いそいそと忙しそうだった宿のおばさん達は今日はいなくて、おばあさんが一人に息子さんらしいおじさんが一人だけ。

 夕食が終わって風呂へ入ったらもうくたくただった。が、明日の予定を決めないといけない。
 というか、漠然と適当に会津の山間の農村を経由して、その後は前回と同じく野沢から入って徳沢・鹿瀬の最高に雰囲気のいい阿賀野川沿いの細道、国道459へ向かえばいいかなと思っていたが、今日走っているうちに、1日奥会津ポタ・ラストは喜多方でラーメン、というアイデアが浮かんだのだ。これはいける。
 このアイデアの鍵は、どこまで行けてどこで戻るか、どういう見所ができるかにあると思った。布団の前で1/50000を何枚も広げてしばらく検討後、大内ダムから破線で描かれている市野峠を越え、会津盆地に一度降りて今度は博士峠で昭和村へ向かい、時間を見て矢の原湿原・三島村、大回りで会津宮下へ抜けるというコースをひねり出した。これなら過去とのコース重複が少ない。喜多方では渋狙いで「食堂松」に行くしか無い、というラストの演出まで一気に決まった。
 ただし、問題は初っぱなの市野峠が舗装かどうか、2番目の時間的にリカバリーの利かない博士峠で崩落通行止めがないかどうかだった。まあこれは悩んでも仕方が無い。明日の朝、宿のおじさんにでも聞こう。

 記 2001.9/24

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Last Update 2003.2/15
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