三島

今井浜

河津

下田

日野

一色

妻良

松崎

宇久須

戸田

井田

大瀬崎

多比

沼津

2000.2/11
西伊豆の海岸通り
三島→今井浜

三島→(県道380)沼津
→(国道414)多比
→(県道17)土肥
→(国道136)一色

→(町道)加納

→(国道136)下田
→(国道135)今井浜
約148km


 兎亀の写真好き、アラさん・HiSさん・私の3人の「伊豆撮影Off」アプローチで、伊豆を走ることになった。だったら絶対西側の海岸沿いしかないと思った。自分自身は西側へは一回も訪れたことが無かったが、いろいろな知人が訪れていた土肥・松崎・妻良という地名に前から興味があったからだ。また、かつて東伊豆最南端の下田を訪れたときに、はるばる列車でたどり着いた下田の、そのまた更に奥へ延びてゆく海岸のいかにも南国っぽいエキゾチックな雰囲気にとても魅かれる物があった。

 7:45、三島発。寒い。空は真っ青で、雲一つ見あたらない。真っ白な富士山の全貌が目の前に見える。三島に住んでいる人は、この巨大な富士山の風景を眺めて暮らしているのか、と感心した。
 新幹線口のある三島駅北口から、ガードをくぐって三島の町中の裏道を適当に抜け、沼津までの県道へ出た。時刻表で見ていると三島と沼津は隣駅なので、ほとんど繋がった町かと思っていたのだが、沼津までは意外にも緩やかな下りがしばらく続いた。
 8:05、沼津着。海岸からひとつ岸側の道の国道414号へ移り、一直線に市街地を南下する。

 馬込までは沼津の市街地が連続していた印象があったが、やがて唐突に港の倉庫っぽい建物が現れた。いかにも港町の旧街道という趣が漂い始めた国道は、突然市街地が切れて岬をぐるっと回ると周囲が開け、漁村らしい風景と江浦湾を見渡す湾沿いの一本道となった。
 湾に貼り付く漁村の雰囲気がいい。江浦湾の向こうに浮かぶ淡島・淡島を挟んで連続するその向こうの内浦湾、小さな2つの湾一杯に賑やかに並んだ漁船のアンテナやら三津の賑わい、ヨットの帆。それらが朝の澄んだ空気の中で明るくシャープな太陽光線に照らされていて、何とも楽しい海岸通りの風景だった。

 間もなく8:30、今まで通ってきた国道414号との分岐点、多比を通過。ここから土肥まで、道路は県道17号線となる。三津を通過して内浦湾を回り込み、道路の方向が南から西向きへと変わると同時に、湾の向こうに海から直接立ち上がった富士山を眺めつつ走れるようになった。気温は低いが陽差しは至って明るく、こういう雄大な景色の前では空気が引き締まっているのが気分がいい。
 程良い大きさの内浦湾に沿って拡がる漁村を走り抜けた後も、次々と連続する小さな岬に沿って、小さな漁村の中を道路は海岸線をトレースし続ける。澄んだ空気の中の海の向こうの巨大な富士山、実は意外と見ることができない西伊豆特有の風景だと篠山紀信さんが書いていたのを思い出した。

 西向き区間の最後の漁村、江梨を過ぎると、沼津市と戸田村の境の峠へ向かって登りが始まる。細い道路は海から立ち上がる森の中を地形に沿ってくねくねカーブしながら、次第に標高を上げる。森の中とはいえ木は詰まって生えているという感じではなく、海やら近くの海岸やら進行方向の道路などがよく見えて、暖かい日なたの中楽しい登り道が続く。砂浜の脇に細く小さく突き出した、まるで模型のように小さな大瀬崎のこんもりとしたビャクシン樹林の眺めが何とも楽しい。
 ここから何回かの大きなつづら折れを繰り返すうち、岬の山を回り込み、道は再び南向きになった。ここから西伊豆の南端、妻良まで南下が続くことになる。
 すぐに坂が緩くなって、大きな片斜面の高くもなく低くもない森に囲まれた、何とも漠とした雰囲気の峠に着いた。トンネルを抜けてからだらっとした下りが少しの間続いたが、すぐ海に向かって展望が開け、海から立ち上がる岩山の中腹の標高100m程度の一本道になった。

 長く緩い登り下りをだらだらと進むうち、やがて入り組んだ岩山のはるか下方、ほとんど真下にまっ黄色の畑が見えてきた。菜の花畑である。そうか、さすがに気候温暖な伊豆半島では、もうアブラナが満開なのか。山を回り込んだ道の行く手にも小さな展望台が見えてきた。あそこから菜の花畑を見せようと言う魂胆らしい。地図交換の必要もあり、少し休憩することにした。
 岩山の狭間、展望台からほとんど真下に見下ろす黄色い菜の花は鮮やかで、そのすぐ外側の海とのコントラストが美しい。菜の花畑の真ん中には上から集落の名前の「井田」という文字が読めるように、そこだけ花が植わってない。視線を上げると、岩山・海・富士山の組み合わせがますます見事だ。
 休んでいるうちに風が吹いてきた。向かい風だ。しかもけっこう冷たい。気が付くと、汗だくだった身体がすっかり冷えている。

 南下するにつれて紺色が濃くなる駿河湾の海を眺めながら、明るい陽差しの静かな道を先へ進んだ。
 県道17号は戸田の漁港で一度海岸まで降りるが、すぐにぐいぐいっと何度かのつづら折れを描き、再び高台の地形に沿った道になる。しばらく集落と集落の間の険しい岩山に貼り付いて標高を上げたり下げたり、ひたすら地形に沿ってカーブして進む道が続いた。海岸から立ち上がる岩山は無数に入り組んだひだを描いているが、県道は井田手前の峠を除いてほとんど一つのトンネルもなく、小刻みなアップダウンとともに律儀に地形をトレースし続ける。道路のある斜面は森になっているが、非常に急な斜面のために木々には比較的間隔があり、ジグザグの地形の海岸寄りでは遠くの海がよく見えた。
 やがて道路は急に下り始めた。アップダウンのしつこい道だったが、もともと標高が低いので、すぐに下りきって小土肥の漁村に出た。戸田から進む間に、南下したからか昼になったせいか、空気の冷たさはすっかり消えていた。海岸沿いの道路から、小さな岬の向こうに、明るいお昼の陽差しともやに包まれた土肥の町が見えてきた。

 休憩後、12:30、土肥発。
 土肥から先、海岸沿いの道は国道136号線となる。国道となったせいか道路には車がやや多くなった。
 宇久須・安良里・田子と、山を挟んで点在する漁村を結ぶこの国道136号では、今までの県道17号とは打って変わって、さっきまでのようにしつこい登りやら地形に律儀すぎるくねくねカーブは姿を消し、トンネルが多くなった。
 中位の漁港・小さな農家・トンネルが連続する国道の両脇の風景は、雰囲気は決して悪くなかったが、人里が何となく切れないというかメリハリがない印象があり、自動車のせいで多少埃っぽい。そう急ではないがちょっと長めの登り下りも連続しており、向かい風もけっこう強くなってきたこともあって、何となくただひたすら南下するという気分になっていた。
 時々トンネル脇の旧道へ足を進めると、険しい岩山の斜面に貼り付く、すっかり忘れ去られて時間が止まったような狭く静かな道がそこにあった。旧道には大きな石が転がっていたり、釣人の4WDが時々停まっていた。

 途中のどこの漁村も農村も、明るい早春の昼の光に包まれていた。仁科の町を過ぎると、すぐに松崎の町が海岸線の向こう、半逆光の中に見えてきた。
 13:10、松崎着。松崎では海鮮系の昼食を取ろうと楽しみにしていたが、今までちょっとペースが遅いので、お手軽に道端のモスバーガーに入ってしまった…

 13:40 松崎発。町外れの坂を登り出すと向かい風が更に過激になり、頂上付近の切土区間では、切り土の間から吹き出す風で押し戻されそうだった。しかし、交通量は急に少なくなり、地形に沿って、かなり海岸に近い場所をくねくね進む静かな道になった。
 昼過ぎになり、明るい昼の雰囲気の光の中に次第に赤い色が目立ち始めていた。2度ほど小さな登り下りがあり、いかにも南国のひなびた温泉情緒が漂う雲見の集落の橋を渡ると、小く盛り上がった雲見崎の脇を通過して再び登りが始まる。
 農地の間のだらだらした登りがしばらく続き、さらに低い山の谷間の登りとなる。坂は緩く、山は低く、周囲の森にはメリハリが無く、何かとりつく島がないぼうっとした雰囲気の景色が続く。この雰囲気は西伊豆全体の山の雰囲気というか、海岸沿い道路の風景全般の傾向のように思う。

 間もなくピークを過ぎた道路は例によってだらだらと高台を進んで下って、14:20、妻良通過。
 いつの間にか国道は狭くなっており、小さな漁村の妻良の町中にはひなびた旅館が狭い国道の両側に何軒か並んでいた。妻良は何年か前、会社の隣の部署の部内旅行先だった。行ってきた人が口々に刺身や海老料理のおいしさを語っていたので、記憶に残っている。
 冬の14時過ぎ、もう陽差しは赤っぽく弱々しくて、黄昏の雰囲気が濃厚なせいか物寂しい町の雰囲気には何か心が急かされる物があった。今日は伊豆半島最南端、石廊崎は確実にあきらめないといけないようだ。こんな町で1泊したかったな、とも思う。
 国道は町外れで更に細くなり、自動車がやっとすれ違えるくらいになった。と、唐突に住宅が切れたところから再び急な坂が始まった。
 この辺りから、道は概略南・南東向きから東向きへと進路を変える。海岸沿いだった道が、伊豆半島の南端部を横断して東側へ抜けるわけだが、もう伊豆半島も南端のためか坂はあまり続かない。少し下ったところの石廊崎への分岐の道を眺めて、リベンジを誓った。

 その後、しばらくだらだらと僅かな長い下りが続いた。石廊崎から帰ってきた道路との再合流点の日野の集落では、畑がアブラナでまっ黄色になっており、畑は観光客に開放されていた。夕暮れの一面の菜の花畑の畦道へ自転車を停め、畑の中を散歩する観光客を横目に少し休憩。時々吹く微風も優しく、もはや冬という雰囲気じゃない。
 16:10、下田通過。見覚えのある駅前の賑わいを横切り、夕暮れの海岸を今井浜へ急いだ。長い砂浜が続く白浜、縄地の高台を抜ける国道135号線から望む東伊豆の山々は、曖昧な色の空の中で紫色の影を重ねていて、その風景はそれまでの西伊豆・南伊豆の、漠然としていて何か垢抜けないのどかな南国の雰囲気とは急に変わって、同じ南国の海岸でもリゾート地っぽいというか、すっきりしたわかりやすさを持つ風景だなと思った。わかりやすいというか、見慣れた関東地方の風景だった。
 途中には菜の花畑だけではなく、時々早咲きの桜の花なども見られた。

 17:45、今井浜の一番奥の民宿「船長」着。45分遅れだ。
 部屋に入って行くと、アラさんとHiSさんはもうすっかりできあがっていて、机の上にはコンパクトカメラらしい小さな黒い物体がいくつか見えた。

記 2000.2/19

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Last Update 2003.4/2
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