Heavy Metal Be Bop/Brecker Brothers

BMG VICTOR BVCJ-5029

Randy Brecker - el-tp,key
Michael Brecker - el-ts
Barry Finnerty - el-g,guitorganizer,vocal
Terry Bozzio - ds,vocal
Neil Jason - el-b
Sammy Figueroa - perc
Rafael Curz - perc


 2007年1月13日、テナーの巨匠Michael Breckerが亡くなりました。まだ57歳、若すぎる死だったと思います。
 あまり健康が良くないという話は聞いていたので以前から心配していましたが、ちょうど出張と残業に明け暮れていた私がそれを知ったのは、週末深夜のTV番組でした。画面に「マイケル・ブレッカー」という文字が見えて、これから何が報じられるのか、まさか…という不安が的中してしまいました。

 Michael Breckerといえば、一般にはJohn Coltraneの音楽を継承し発展させたなどとか、あるいはジャズ・フュージョンの牽引役とか、あるいはジャズの枠を越えた様々な音楽への参加等が語られるでしょう。でも、Michael Breckerの音楽で一番素晴らしかったのは、どんな演奏でも一音吹けばMichael Brecker独特の世界という程のオリジナリティ、更にそれがかつて無かった程とにかくもうファンキーで格好良かったことだと思います。
 その音楽歴を語る上でまず絶対外せないのは、兄のRandy Breckerとの1974年結成、Brecker Brothersでしょう。
 一般的には圧倒的超絶技巧の超高密度で繰り出されるファンキーな味わいのメカニカルでタイトな音楽、と具合にに理解されているこのBrecker Brothers、Randy・Michaelとも曲・アドリブ両方でその音楽性に密接に関わっていて、ジャズ史屈指の名コンビだったと思います。1981年に一度解散してから1990年代に再結成、現在に至るまで時々思い出したように活動を行っていました。基本的にはフュージョン系のバンドといえますが、時にはタキシードで4ビートのアコースティック・ジャズを演奏することもありました。
 その作品中とにかく1枚ということだと、このHeavy Metal Be Bopを挙げる人は多いことでしょう。無茶苦茶格好良い曲想に無茶苦茶強力なアンサンブル、そして無茶苦茶格好良いソロと、もうBrecker Brothersの魅力がたっぷり詰まった一枚だと思います。特に有名な曲はSome Skunk Funkですが、他の曲も全部素晴らしい演奏ばかり。フュージョン系で一番格好良い曲は何かと言われれば、私は躊躇無くこのSome Skunk Funkと、同じくこの作品中のInside Outを挙げます。
 この2曲を作曲したのが前述のRandy Brecker。メカニカルで少し乾いたクールな表情でいながら、やはり同時に無茶苦茶ファンキーで非常に格好良いい曲想とアドリブを得意とする、ジャズ史上屈指の名作曲家・名プレイヤーだと思います。

 本作は、エレクトリックジャズ、ポップ、ディスコと次々作風を変えたBrecker Brothersの作品群中でも、重厚な音とタイトなアンサンブル、メカニカルなアドリブが渾然一体で、まさにHeavy Metal Be Bopというタイトルそのまま、一番ロック寄りの重厚な音楽であることはよく知られています。
 2007年の今となっては、本作でみられるこのロック乗りリズムと派手なエフェクター用法は、作品毎にエレクトリックジャズ、ポップ、ディスコと作風を変えつつそれらを消化し、自分たちの音楽に取り込んで洗練、発展させたBrecker Brothersの、音楽の引出しの一つとして捉えられるのではないかと思います。特にSome Skunk FunkとInside Out、近年に至るまでBrecker Brothersのトレードマークとなった2曲では、本作とその後のBrecker Brothersの進化として聴き比べることができます。

記 2007/1/13

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Last Update 2007/7/22
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