Tommy Flanagan
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Tommy Flanagan - p |
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/Super Session |
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去る2004年5月、超人ドラムのElvin Jonesが亡くなりました。日本のファンとも相思相愛で来日回数も多く(確か奥さんまで日本人)、寂しい気持ちになった人も多いと思います。
Elvinの輝かしいキャリアの中でも印象深いのは、「ポリリズムの極致」とも賞賛された1960年代John Coltrane Quartetでの演奏でしょう。お馴染みドガンバタンドガンバタンドガバタドガバタに代表される超人的・圧倒的なその音世界は、Coltrane Quartetサウンドの重要な部分を担っていました。その後現在に至るまで、音楽性・テクニックで、誰もが認めるジャズ史最高クラスのドラマーでした。
さて一方、Tommy Flanagan(2001年11月没)と言えば、どちらかというと渋めで上品なピアニスト、主役というより名脇役、という印象を持つ人が多いと思います。
このTommy FlanaganとElvin Jonesの2人はあまり直接関連づけて語られることは多くないように思いますが、実は2人ともデトロイトを同郷とするミュージシャンで、Tommy Franaganの初リーダー作、1957年録音「Overseas」で既に競演していた、昔からの親友です。音楽的にも、Tommyの上品で素朴でダイナミックに盛り上がるメリハリの効いたピアノと、Elvinの強力で華麗で緩急自在の表情豊かなドラムは、お互いにしっくりとよく馴染む組み合わせだったと思います。
1957年の「Overseas」はメンバー・曲・気合いと3拍子そろった超名作。日本のファンは昔からこの作品を愛聴してきました。しかし、スエーデン録音だったこともあってか、米国ではこの作品の知名度も評価も今ひとつでした。
この2人に目を付けてもう一度組み合わせたのが、70年代enjaレーベルのプロデューサーHorst Weber。そして作られたのが、George Mrazがベースの1977年2月録音「Ecrypso」、Red Mitchellがベースの1980年2月録音「Super Session」です。
ちなみに2人とも、この作品以前から、そしてその後もずっとデュオやトリオでTommyと共演していた、Tommy Franaganお気に入りのベーシスト。メロディアスで活きの良いGeorge Mraz、そして重厚なRed Mitchellを迎え、2枚はそれぞれ傾向は少し違いますが、両方ともすかっと勢いのいい作品になっています。
2人の約20年ぶりの共演となった「Ecrypso」は、「Overseas」からの2曲をはじめ、Charlie ParkerやSonny Rollins等ジャズメンの曲で固められています。急速調でキー高めのOleoで元気一杯に始まり、ミディアムマイナーのDenzil's Best、バラッドのA Blue Time、そして再び気合いたっぷりのアップテンポ曲Reluxin' At Camarilloと続き、B面もイケイケ状態で最後まで一気に突き進みます。選曲も曲順も演奏も力強くドラマチック、構成美すら感じさせるほどの完璧さ。Eivinの強力で華麗なドラム、George Mrazの明快で腰が強いベースとともに、Tommy Franaganの本性がよく捕らえられています。あるいは「Overseas」を凌ぐ傑作と言えるでしょう。
一方「Super Session」は、ジャズオリジナル主体にスタンダード曲も入っていて、重厚で硬質な音のRed Mitchellを反映してか、どちらかというと落ち着いた演奏です。かといって大人しいだけの作品ではなく、3人が会話するかのように訥々とした語り口から一気にドラマチックに盛り上げる瞬間が何度もあります。リラックスしていながら弾みの豊かな演奏がたまらなく魅力的。ジャズ的にフォーマルで気合いたっぷりの「Ecrypso」と普段着の「Super Session」という感じでしょうか。
隠れた名コンビのElvinとTommy、これらの作品を聴いているといかにも息が合っていて、今頃天国で仲良く毎日セッションしているのではないか、等と思わせられます。
記 2004.7/15