John Coltrane &
Johnny Hartman

MCA-5661

John Coltrane - ts
McCoy Tyner - p
Elvin Jones - ds
Jimmy Garrison - b
Johnny Hartman - vocal


 1964年、John Coltraneはなかなか思い通りのリード選びができず、その前後の時期に追求していたColtrane本来のハードな演奏ができない状態が続き、悩んでいたそうです。64年と言えばオレンジ色が有名なImpals!期、翌年の65年にはあの有名な問題作「至上の愛」を録音しています。リーダー不調の一方で、Coltrane Quartetはグループとして調子を上げていた時期でした。
 その結果、64年はスタンダード・バラッド集が録音されたようです。中でも超有名なのは、レギュラー・カルテットだけで録音された「Ballads」です。が、このJohnny Hartmanが加わった「John Coltrane & Johnny Hartman」も、ゲストを迎えたColtrane Quartetの新鮮な気持ちが伝わってくるような、聞き応えのある名盤です。

 まず何と言ってもA面1曲目、McCoy Tynerのイントロから始まるThey Say It's Wonderful。この盤ではこれ以外の演奏が頭に残っていないぐらい、いや、この曲でうっとりしてしまって、その余韻の中で他の曲が進んでいくというぐらい、素晴らしい演奏です。
 イントロから絶好調のMcCoy Tyner、曲の全編に渡って密度があり、それでいてスペイシーなピアノが冴え渡っています。また、ごりっと芯の効いたJimmy Garrisonのベース、デリケートながら華麗なElvin Jonesのブラシ。
 順番が後先になってしまいましたが、Johnny Hartmanの歌がワンコーラス終わったところでリズムが2ビートから4ビートになり、御大Coltraneのソロが始まります。リラックスしていながらねらいを定めて少ない音で空気をつないでゆくようなアドリブに、メリハリが利いてしなやかなバッキングは、ちょっとうきうきするような表情です。

 Coltraneの普段の演奏は、どちらかというとドラマチック・メリハリというよりも、朴訥で武骨で一本調子な傾向がありますが、この曲やB面の各曲などにも見られるようにColtrane Quartetが一体となると、演奏によりダイナミックな表情が加わります。ごりっと硬質なJimmy Galison、目まぐるしく華麗でずっしり重厚なElvin Jonesの強力リズムに乗り、いつもよりクラシカルな表情のMcCoy Tynerとひたすら朴訥なColtraneが楽しい表情の演奏を繰り広げる本作。
 少し暖かくなった春の夜にふと思い出す1枚です。※注

※注 本当は少し暖かくなったときに書き出した文章だったんですが、更新をさぼっている間にもう大分暑くなってしまいました(笑)。

記 2004.5/11

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