The Michel Petrucciani Trio
/Pianism

BLUE NOTE BT 85124

Michel Petrucciani - p
Palle Danielsson - b
Eliot Zigmund - dr


 季節の音楽というものがあります。
 私の場合は先月のStephane Grappelliが5月に10月、春先はCharlie Parker with Strings 「Just A Friends」、お正月はおごそかで完璧なKeith Jarrett 「Koln Concert」。梅雨時はこのMichel Petrucciani/PianismのHere's That Rainy Dayです。

 Michel Petruccianiは1962年生まれ。生まれつきの骨の病気で、身長は1mにも満たないという、演奏家としてはかなりのハンデを背負っていると言っても良いと思います。
 しかし、その演奏は素晴らしいものでした。印象的な彫りの深いメロディが、力強く切れの良いタッチで、ダイナミックに情熱的にスリリングにどんどん盛り上がる、という。以前にブルーノート東京に聴きに行ったときも、アドリブパートが始まった途端、一気にPetruccianiワールドに突入。そんなにジャズに興味があるわけでもなさそうなカップルがたくさんいたのに、全員釘付け状態でした。

 1985年録音のこの作品は、そんなPetruccianiの出世作と言えるでしょう。当時、やはり勢いを上げてきていた新生BLUE NOTEからこの作品が出て、おお、PetruccianiもBLUE NOTEか、という驚きがあったように思います。もちろん内容的にもかなりの力作で、これがPetruccianiの決定盤だ、という扱いがされていた記憶があります。
 Here's That Rainy Dayという曲は、Bill Evans/Aloneの一音入魂の超名演が有名ですが、Petruccianiのこの演奏では、比較的淡々としたアプローチです。アップテンポの曲もバラッドも、情熱ピアノというか熱い演奏が多いこの作品の中で、B面2/3曲目のこの曲でちょっと一息というか…。でも、梅雨のぐずぐずはっきりしない雨の時には、前の4曲がこの曲に至るためのイントロで、この曲が終わって最後に折角だからもう1曲、というように聴けてしまうのです。※注

 この作品で聴けるトリオもなかなかまとまりが良いトリオだったのですが、この作品の後、しばらくPetruccianiの演奏フォームは多彩を極めるようになります。ソロ・フュージョン・色々なミュージシャンとのデュオなど…そしてA.Jackson、S.Gaddとのトリオが絶好調だった1999年、肺炎で短すぎる生涯を終えました。
 季節の音楽なのでこれを紹介しましたが、Petruccianiの演奏は、この作品の頃よりも90年代のものほど調子が上がっているように思います。ソロもデュオもトリオもフュージョンも全部良い。アクが強いと思っている人が意外に多いようですが、ぜひ一度聴いてみて下さい。どんな人でもきっと好きになると思います。

※注 実はAB面とも粒ぞろい。最後の曲などは、Petruccianiファンにはおなじみの、Reginaという情熱マイナーボサノバの傑作です。

記 2003.5/25

今月の一枚 目次へ    Topへ

Last Update 2003.5/25  
ご意見などございましたら、E-Mailにてお寄せ下さい。