塩山→(県道38・町道)石島 |
(以上#2 以下#3) |
すっかり明るい茶色に色付いたカラマツの森の中、林道は一目散に下ってゆく。辺りがざわつくかさわつかないかぐらいの少しの風で、はらはらとカラマツの細かい葉がゆっくり木漏れ陽の中を落ちてゆく。今日の第4の目的である、秋ならではの風景だ。
カラマツの森はやがて広葉樹林の渓谷になった。頭上に覆い被さる紅葉の木々に、何度も足が止まる。
最後に荒れ気味のコンクリート舗装で怖いぐらいの激下りが続き、13:00、通仙峡着。ここから本屋釜瀬林道林道となり、再び約300m登り返しとなる。
通仙峡の下手方面は、程良い密度の森に渓流が増富温泉まで続く。透明度の高い渓流の美しさに加え、谷間の涼しい空気は夏は天国のようで、秋には鮮やかな紅葉を作る。このためか、今までと同じように狭い道であるにも係わらず、通仙峡から瑞牆山荘へ登ってくるこの道には車が多い。
金山の蕎麦屋から先、谷間から離陸するようにつづら折れでぐいぐい登って行く辺りでは、茶色に色付いたカラマツの向こうに姿を現す異形の瑞牆山は何度見ても印象的だ。この風景を見るためにこの道に来ると言っても過言ではない。
急に傾斜が緩くなり、辺りが広葉樹林になり、そう広くない道ばたに停まる自動車が目立ち始めると、もう瑞牆山荘だ。
13:40、瑞牆山荘着。この瑞牆山荘にはレストランが併設されていて、「名物」というシチュー等も食べられる。今日は先へ行っておく方がいいので、ソフトクリームで我慢兼カロリー補給とすることにした。
と、これがどういう混ぜ物をしているのか、或いは本当に卵黄か乳脂肪分が濃いのかわからないが、非常にこちっとした濃厚なソフトクリームである。美味しい。瑞牆山荘のソフトは要チェックだ。
瑞牆山荘からは黒森へ向かう。この先信州峠を経て、川上村から野辺山へ出るためだ。初めてここに来た99年、まだダートだった瑞牆山荘からの下りも、もう全舗装になってしばらく経つ。カラマツの森の中を一気に下り、やがて周囲が一気に開け、13:55、黒森着。
ここで後ろを振り返らないといけない。振り返ると、期待通りに青空の中に瑞牆山の雄姿を拝むことができた。
黒森から信州峠は標高差200mちょいだが、この期に及んでまだ10%連続の登りである。瑞牆山荘から下る間に、例によって身体は冷え切っており、しばらく力が入らない状態でとろとろ登る。いいのだ、それを口実にゆっくり登れば、もうまとまった登りは最後だし。
広葉樹の中のつづら折れで急斜面を登ると、周囲は開けてもう一度瑞牆山が眺められた。14:35、信州峠着。稜線の浅い切り通しに細い県道が通っているだけの、あまりにもそっけない峠だ。例によってあまりうだうだせずに川上村へと抜けることにする。
川上村側はもうかなり拡幅が進んでいて、峠手前の数百mだけに細く荒れた舗装が残っている。山梨県側は、黒森から先峠まで狭い道が続くが、長野県側の全区間拡幅は時間の問題だろう。
北海道の道のような高原野菜畑の一直線を一気に下り、14:50、川上村原着。ここで今度は野辺山方面へと分岐する。
野辺山までは、川上村の谷から台地の縁を再び登りになる。でも、もう今までのような峠道ではなく、あくまで台地の縁をじりじり登る程度の登りだ。
坂を登り切ってからは、八ヶ岳裾野の広々とした畑の中を進む。ここまで来ると何と無く登り基調ではあるような気もする程度の道で、もはやほとんど平坦と言っていい。八ヶ岳の麓、拡がりを感じる風景が先の見えた安心感とシンクロして、何ともいい気分でのんびり走る。これが今日第5の目的。
15:25、野辺山着。線路際の平坦な道でJR最高地点の脇を通り過ぎ、清里まで国道141を一気に下り、清里から小海線に沿った静かな林道へ足を向ける。甲斐大泉の手前で一旦40mほど登り返すものの、もうこの先は小淵沢まで下る一方だ。
森の中の別荘地を抜けるこの道は、泉ラインという名前が付いているようだ。時々南東への展望が開け、すっかり雲の増えた空の中に、さっきの木賊峠や水ヶ森林道よりだいぶ小さくなった富士山が浮かんでいるのも見えた。
別荘地を過ぎ、甲斐小泉から農村地帯の細い一本道をどんどん下り、16:20、小淵沢着。もうすっかり夕方で、南アルプスに雲がかかっていた。
列車待ちの時間の間、中学生の頃からいつも楽しみにしている小淵沢の名物駅弁「高原野菜とカツの弁当」を食べていい気分に。これが今日最後の目的。
記 2003.10/23
Last Update 2003.10/25