2000.3/20
道志みち・厳道峠・牧馬峠

東村山→(都道16号)小川→(都道17号)府中
→(都道158号)橋本→(都道47号)相原十字路
→(都道506号)東原宿→(国道413号)平野
→(国道413号)久保→(村道)古沢→(県道35号)奥牧野
→(県道76号)馬本→(県道517号)篠原→(県道518号)梶野
→(国道413号)東原宿→(都道506号)相原十字路
→(都道47号)橋本→(都道158号)府中→(都道17号)小川
→(都道16号)東村山   180.4km

赤は本日の経路 灰色は既済の経路

 9:40、道志川の谷を西へ登る国道413号に入ると、いつものように交通量はかなり少なくなり、周囲には森やら畑やらが続くようになった。肌寒い周囲の空気にも何だかきりっと引き締まった落ち着きを感じる。が、けっこう向かい風が強い。
 青山、青野原と小さく静かな集落を国道はバイパスする。まだ国道がバイパスじゃなかった10年くらい昔を思い出しながら、なるべく旧道を走った。
 旧道は、山に沿って少し下りながらカーブを描き森の中の沢を越え、カーブの頂点から少し登って集落の中へと入って行く。苔っぽい石垣が狭くなった道路の両側に現れ、すぐに農家・商店・駐在所が道路際に軒を接してつながり、そして集落を抜けると畑が少し続き、また農家が建ち並んだ後に少し下って大きなカーブで沢を渡る。青山から青野原まではこんな道が続いた。
 もう3月下旬なので明らかに以前よりも太陽光線がかなり強くなっている。畑の中を突っ切るバイパスと違い、交通量の少ない静かな旧道では畑の日なた・集落と谷の木陰が程良いペースで切り替わる。旧道には練習ロードの方もいて、のろのろ登るこちらを追い抜く時に、ちょっとお話しさせていただいた。

道志みちで山中湖へ 帰路は厳道峠、秋山村経由 赤は本日の経路

 やがて坂が続きだし、道は谷の斜面に貼り付いて進むようになった。杉林の中「国道413号最高地点(津久井町内で最高と言うことだと思う)」の看板を過ぎ、ちょっと下ると再び周囲が開け、蛇行する道に旅館・キャンプ場などが点在する月夜野の集落に入る。沢が流れる谷に沿いの大きくカーブする道路際に、商店・旅館などが並んでおり、なかなか山間の雰囲気溢れる集落の風景が続く。更に下って谷底に降りると、県境の両国橋だ。

 約10分ほど休憩し、10:50、両国橋を越え道志村へ入る。すぐに登りが始まる。谷から吹き上げる追い風が強く、坂を登るのが楽なほどだ。道路脇に溜まった杉の落ち葉が吹き上げられ、周囲に舞っている。風で登りが楽なのはいいが、また向かい風になるのは目に見えているので、あまり気分は浮かない。
 谷底から中腹へ少し登ると坂は緩くなって、山の斜面の森の合間に小さな集落・農地が断続するようになる。時々正面に富士山が見える。今まで見えなかった富士山が急に大きく見え出すので、少し驚かされる。
 緩い登りが続く道路の両側にはかなり密に杉が植わっているため、道志川の水面はいつの間にかほとんど見えなくなっているが、杉の隙間からは水面は全く見えない。道がかなり高い場所を走っていることがわかる。谷底ではなく、こんな高い場所に道を造り、昔から人が住んでいたのだ。
 谷を挟む山の中腹を緩い坂で登ったり時々ちょっと下ったりしながら進み続けると、やがて遠くに杉林が切れて台地に畑や農家が点在するのが見えてくる。道志村の中心部だ。これからがまだまだ長いのだが、この道志みちの山中湖までの区間で最も好きな区間だ。

 道路際には集落の名前を示す看板が頻繁に現れる。小さい集落が連続してるということだろう。台地上の集落は谷のかなり上の方にあったのが、小さな集落を縫うように進むうちに谷底の道志川がいつの間にか道路のすぐ下側までやって来た。畑やわさび田の中を抜け、村役場や旅館の建つ辺りを過ぎ、やがて再び畑やわさび田が現れる。わさび田にはまだ水が張られたばかりのようで、こんな所にも春らしさを感じる。
 11:50、ヤマザキデイリーストア道志中央店到着。

道志みちで山中湖へ 帰路は厳道峠経由 赤は本日の経路

 やはり10分ほど休んで出発。
 すぐに道志村の道の駅の脇を通過する。なかなかの賑わいだが、しばらく道志村へ来ない内に、観光シーズンでもないのに、津久井・道志村と何だかえらく交通量が増えたような気がする。そういえばこの道志みち沿道には、以前よりも温泉施設やなんかも増えた。風も強いせいか、今日は全線で道路も埃っぽく、この辺を通る度に感じた山里の風景の透明感は、少し薄れてしまったような気がする。あるいは季節柄乾燥した空気のせいなのだろうか。
 この辺りで1/50000地形図は、「上野原」から「山中湖」に変わり、次第に山伏峠への峠道の趣が色濃く漂うようになる。
 やがて農村が切れて道路の両側は林になり、道路の日影に雪が現れたかと思うと、すぐに雪の塊が増えた。近くの山肌にもうっすらと雪が残っている。

 12:50、山伏峠通過。頂上にトンネルがあり、その他は特に何も無い殺風景な峠だ。こちらも別に特別な感情もなく、トンネルを抜ける。
 トンネルの向こうの下りをちょっと下ると、一直線の道路の両側には冬枯れの樹海が拡がった。正面には巨大にくっきり真っ白な富士山が再び現れた。全体としては薄ら寒い風景だが、富士山の斜面には所々に黒い地肌が見えている。
 樹海の中、道路は緩やかに一直線に下り続け、道路の両側には別荘地・宿泊施設・テニスコートなどが次々現れるようになった。間もなく13:05、山中湖畔の平野に着いた。

 昼食後、13:50、平野発。今度は再び山伏峠から道志みちを逆走する。
 道志みちは標高約1100mの山伏峠からだらだら10数kmかけて約350mの両国橋まで標高を下げる。登りはだらだらだが、単純に下るには程良い程度の勾配が続くので、あまり足を動かさず、ブレーキもかけず、程良い速度を保つことができる。
 道路の両側に雪が目立つ峠区間から道の駅・村の中心部・村役場・温泉「道志の湯」と次々あっと言う間に通り過ぎ、14:40、両国橋に近い久保に到着した。
 今日はこれから厳道峠に向かう。

 この先の道の情報を読みとろうとして1/50000地形図を見ると、ここから厳道峠まではわずかな距離だが、等高線の目は恐ろしく細かいピッチで詰まっている。しかし、なんか等高線の形と道路の形が全く整合していない。どうせ地図の線形はでたらめなのだろう。
 いかにもそれっぽい曲がり角の細いコンクリート簡易舗装の道に入ると、すぐにかなりの劇坂が始まった。道路はけっこう荒れているが、まあスリップまではしないようだ。しかし、ちょっと油断するとすぐに前輪が浮く。農家の庭先の犬に吠えられたり、数10m程度登っては休みながら登るうち、道路脇の風景は農家&畑・寺・林と替わり、いつのまにかすっかり山道になった。
 唐突にダートが始まり、すぐに周囲の林も濃くなった。しばらく意地だけで登っていたが、路面が次第にガレだし、大き目の砂利の上でスリップして乗って登ることが難しくなった。前輪も浮く。しょうがない。あきらめて降りて自転車を押し始めた。進むうちにかなり急峻な山肌のかなり上の方にガードレールがあるのが時々見えるようになった。
 もはや乗って登る気は完全になくなっていた。ガレたダートを押しで進むうち、坂は更に急になり、自転車を押すと言うよりも、引っ張り上げるような感覚になってきた。
 周囲が開けると、先程下から見上げた区間だ。開けると、というより斜面が急なので、木々がまばらになっているだけだった。見上げると、峠のてっぺんに近い部分のガードレールがほとんど見た目には45度くらいの角度で傾斜しているようではある。なんか非現実的で漫画みたいな光景だ。しかし、あそこをこれから登らないといけないのだ。

厳道峠の登り押上げ中 激ダートではないが激坂ダート 振り返ると道志川の谷がちらちら 厳道峠から 写真だとどうしても小さいが、澄んだ空気の山の間にどっかーんと真っ白い富士山

 坂を登りきり、逃げるように曲がり角の先っぽの溜まり場に向かうと、向かい側の丹沢の山の切れ間から、白く雪をかぶった富士山が大きくくっきり見えた。富士山はどこでどういう角度で見ても、さすがにいい形だと思う。おまけに今日の富士山は真っ白に輝いている。
 気温が低いからか、太陽光線はやや赤みが増しているが、空気はあまり霞んでいない。ふと今まで登ってきた坂を見下ろすと、すぐ近くの斜面が見えないほどの急な下り坂だった。
 ぎょっとしながら、往年の道志街道のツーリスト達はこの坂を全部自走で登ったのだろうか、などと考えていた。

 目の前のカーブの向こうは再び杉林が始まっており、そこが峠だった。15:20、厳道峠通過。標高はそう高くないが、なかなか過激な峠ではあった。
 道志村と秋山村との境を越えて下り始めると、峠の向こう側も舗装されているとはいえ、細い急な下りが続いた。道志村側ほどではないが、こちらも充分劇坂の範疇に入るだろう。山の斜面を下りながら、道路はどんどん先へ進んで行く。やがて大きなつづら折れが終わると、道は谷底に降り、農村が始まった。

厳道峠から牧馬峠経由で津久井方面へ 往路は両国橋経由 赤は本日の経路

 15:45、古沢で秋山村の中心を抜ける県道に合流。1年ほど前に通ったことのある道だ。あのときは何とも田舎っぽくてのどかな道だと思っていたが、今日は何だかすごく広い道路という印象だ。しかし、道路は広くても、深くうねる谷間の両岸の集落の風景には、相変わらずいかにも山里らしさが感じられる。
 農家・商店の間を県道は通り抜けて行く。ゴルフ場の脇の坂を登り、馬本で藤野への分岐を通過すると、今度は牧馬峠への道だ。

 陽の光が弱くなって明らかにさっきよりもたそがれている空には、もう薄ら寂しい雰囲気が漂っていた。大久輪の集落の中を抜け、葉の落ちた広葉樹林の中、比較的小さな谷間を登ったり下ったりする。道路が狭いのと坂が断続するので、どうしてもペースはゆっくり気味になるが、まあなかなかこう言う冬枯れの細い峠道というのも雰囲気があって、夕方っぽいが珍しく焦る気持ちが起きない。

 一度下りきった谷間から道は再び登り始め、牧野の辺のちょっとした登り下りの後、篠原の集落を通過すると、地図上ではあとほんの少しで牧馬峠だ。集落の途中から緩やかな坂が続く。小川の反対側には、旧道らしい細い道がこっちの道に並行して続いている。と思ったら、途中でうやむやになっていた。
 地図上では篠原から牧馬峠まで、ほんの少ししかない。こっちは楽勝だと思っていたら、遠くの正面に、いきなりコンクリート舗装の急坂が見え始めた。地図を見直すと、確かに峠の最後の方だけは等高線が詰まっている。峠までそんなに長くはないことになっているが、見上げる尾根の線はけっこうまだまだ上の方にある。地図の感覚よりは明らかに上の方なのだ。確実にこれからあの上まで登らないといけない。

 強引な直線・折り返しが続くしんどいコンクリート舗装区間を登り切ると、木々の間の明るい空の向こうに、朝通った道志川の谷が拡がった。
 もう傾いた太陽が山に隠れ、だんだん辺りは薄暗くなり始めていた。国道413号方面に向かう車が脇を通り過ぎる。峠のこちら側は坂がさっきより緩やかで、林の中を次第に谷底へ下って行く。しかし道路はそう広くなく、転落が恐ろしいので、あまりスピードは出せない。
 坂を下りきって道志川を渡り、反対側の岸の上まで登り切り、16:55、朝に通った国道413号に梶野で合流。

 そのまま津久井・城山・橋本と、朝走った道を黙々と逆走した。
 行きの向かい風はいつの間にか逆向きになっていたようで、相変わらず強くしつこい逆風に悩まされながらの帰り道になった。

記 2000.4/3

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Last Update 2005.2/13
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