頸城の夏99
1999.7/17 浦川大杉→松代

室野

松代(菅刈)

兎口

藤原

浦田

菖蒲

菖蒲高原牧場

伏野

旧薬師峠

朴の木

切越

高谷

月影

安塚

浦川大杉

今日の経路(赤表示)と既済経路(灰色表示)

浦川大杉→(県道43)安塚
→(農道・町道・県道13)月影
→(県道61・278)高谷
→(国道405)切越
→(町道)朴の木
→(林道・町道・林道朴の木線)伏野
→(林道)菖蒲高原牧場
→(県道346)菖蒲
→(国道405)浦田
→(県道243)藤原
→(町道)黒倉
→(県道80)室野
→(国道403・253)菅刈


 年に1回の大学時代の所属研究室OB会は、新潟県中頚城郡松代町で行われる。集合は16:00なので、これに毎年自転車を持って行く事にしている。
 今年もその合宿がやってきた。

 6時過ぎに東京を出発すると、新幹線のスピードアップと北越急行の開業で、8時台にはこの頚城地方に着く事ができるのだ。十日町辺りのやたらと濃い霧に今日の天気を心配しつつ、8:44、各駅停車で浦川大杉に到着。
 こっちでは薄陽が射しているが、ものすごく蒸し暑い。雨上がりのせいか、この地方の特有の気候なのか、そういえばこの地方はいつもこの季節、気温に関らずかなり湿度が高いように思う。
 無人駅の駅前広場は、最近の地方の施設らしく、そう広くないながらも小奇麗な建物で、なかなか居心地のいい休憩所・無料レンタサイクルなんかもあった。休憩所の片隅で自転車を組み立て始める。
 駅から少し離れた国道253号沿いの雑貨屋で、2lペットボトルの茶を買い求める。店のおばさんと少し話すが、東京から新幹線で来たと言う話になると、「東京へみんな次々行っちゃってねえ。私はもうあきらめましたけど、仕事があるんだろうねえ。やっぱりいろいろあるからねえ」などと寂しそうなおばさんに、言葉が詰まってしまった。

 9:10、虫川大杉発。
 安塚の町へ向かって県道を南下する。緩い登り・細かいカーブ・県道沿いに農村が少し続き、すぐに安塚に着く。古くからのこの地方の宿場町の趣きのある町で、役場やら商店が田んぼや山の中にかたまっている。
 ここから西へ小さな山を一つ越え、一つ向こう側の谷の横住の集落に出た。小さな川に沿ってやはり南下しながら、県境の山脈に向かって少しずつ標高を上げることにする。
 こちらの谷は、安塚の谷に比べてかなり狭い。とはいえ、周囲の山は低いと言うよりまだ丘に近い雰囲気なので、谷深いと言う印象はない。

 9:50、谷(という名前の集落)を通過。引き続き同じ川沿いの道を、狭い谷に流れる細い川を見下ろしながら進む。真夏の木々が生い茂り、狭くなってきた川に覆い被さっており、木陰の狭い川原は真っ暗なほど陰になっている。
 農家の軒先や、小川やら田んぼやら、土手になっている畑の斜面の草っぱらなど、道路沿いの風景を間近に眺めながらのんびりと走る。トンボやらイナゴやら、キリギリスやチョウ、カミキリやコガネムシなど、様々な昆虫を見ることができた。トンボだけでも、黄色いイトトンボ・羽の黒いハグロトンボ・すばやいシオカラトンボやもう真っ赤なアカトンボ・さらに悠然と空を流すオニヤンマなど、本当にいろいろな昆虫がいる。しかも、数が多い。オニヤンマなんか並走してくる。ちょっと地図交換で自転車を停めると、草の茂みには黒いヒメギスや緑のフキバッタが見える。

 高谷からは、今までの道が突き当たった国道405号に入り、さらに標高を上げる。地形はけっこう急峻なのに、標高の低い場所から高い場所までまんべんなく集落が展開しており、農村の中をひたすら登ると言う風情が続く。
 連続する坂道が集落の中を左右に曲がりながら更に急になり、集落から外れていつのまにか山の中を登るようになり、小さな峠を越えたところで道が2つに別れる。どっちにしてもまた合流する道なのだが、労力を無駄にしないように下らない方を選ぶ。
 小さなダム湖(池)を見下ろしながら、ほとんど平坦になった山腹の道をのんびりと進み、菅沼・朴の木と小さな集落を通りすぎて11:40、これから薬師峠を越えて大島村を目指す分岐に到着。

 それから棚田の間をダート走行10分とススキの茂みの中の砂利道を25分の押しの後、尾根近くの杉林まで登り詰めた細道は突然平坦になった。いよいよ峠だと思った。5分くらい平坦な道が続き、頂上を回り込んだところでいきなり道は行き止りになっていた。

 …絶句。こんなのありか?しかし、地図と道路の向きはなんとなく違う。地図にある道路が実際にはないのは、この辺りに限らずよくありがちな話だとも思った。考えてても始まらないので来た道を戻り始めると今まで登ってきた道が結構な下り坂で、結局降りて下らなければなければならなかった。

 ほとんど真上から照りつけている太陽のせいで、近くのススキの茂みや田んぼ、遠くの杉林なんかのいろいろな緑色はほとんど原色のように鮮やかに見え、日なたと日影の風景のコントラストはやたらと強烈になっていた。
 むっとするような湿気混じりの草の匂い、遠くのセミの声、通りすぎる雲の影、空にいっぱいのアカトンボやらオニヤンマ、汗でびしょびしょの上着、皮膚がちりちりするような太陽光線。「夏ですねえ」とか一人でつぶやいてみて、とぼとぼと坂を下っていった。

 12:45、ようやく朴の木まで戻ってきた。1時間以上のロスだ。しかしあせってみてもしょうがないので、再びさっきの国道まで朴の木の集落の中を国道方面へ戻り始めると、また右側の尾根方面へ道が伸びている。
 こんな道、地図には影も形も無い。しかし、今度のは相変わらず坂は急だが、ちゃんとした舗装道路だ。「朴の木林道」なんて標識も出ている。
 あやしい新たな選択枝にちょっと迷ったが、ピンときた。このヤマ勘があてにならないのだ。わかっているのだが、凄く臭い。行く事にした。
 坂を登っているとまたすぐに「この先工事中」などという標識が出ていた。やばい、また行き止まりか?と一瞬あせったが、別の工事だった。杉林の中、林道は山腹をだらだら登り続け、気が付くと周囲の山の稜線が水平に見える高さにいた。

 結局その高さで林道は更に進み続け、多分さっきのダートの薬師峠なのだろう、と思われる辺りで尾根を越えた。いくつか細いダートと分岐・合流を繰り返すので多少先行き不安だったが、まもなく下りになった。13:10伏野通過。地図で見ると、思惑通りに国道で向かう予定の場所へショートカットを果たした事になる。

 道なりに坂道を標高600m程度まで再び登ると、菖蒲高原牧場まで周囲で一番高い山の中腹を東へ向かう林道に出る。県境の周囲で一番高い山脈の中腹なので、他の山とは同じくらいの高さだ。目の高さに他の山の稜線が走っているのは何とはなしに気分がいい。
 いくつか分岐する林道は、最近の長雨の仕業か土石流によって道路そのものが至る所で分断されているようで、通行止めの標識がけっこういろいろな場所に出ていた。ススキの原っぱ・広葉樹林・杉林の中をのんびりと走る。空はいつのまにか低い雲に覆われており、更に山の上の方をどす黒く覆いはじめた雲を眺めながら登り下りを繰り返しつつ、14:00菖蒲高原牧場に到着。
 ここには小さな食堂がある。昼食にすることにした。2lのペットボトルの中身もあらかた無くなっていた。

 標高が高いので、さすがに下界より涼しい。開けられた窓から見える牧場の風景と、涼しい風にほっとする。牛丼\700を食べながら、今後の行程を落ち着いて考えてみた。と言っても、野々海峠は方面は完全にどす黒い雲で包まれている。時間的にも、もう松代に向かった方がいい時間になっていた。ぼんやり外を見ながら、あと2時間もしない内に着いちゃうんだな、とか考えていた。明日はどこを走ろうか。
 晴れたら、野々海峠〜無茶苦茶に景色のいい深坂峠は確定だろう。

 14:20、菖蒲高原牧場発。国道405号沿いの菖蒲を経由し、大島を目指す。牧場からは少しの間潅木帯をトラバースで抜け、やがて開けた斜面の水田の一本道を下って行く。見下ろしていた周囲の尾根は、やがて水平になり、谷の中へとどんどん降りて行く。
 やがて国道405号線と合流すると菖蒲の集落だ。今度は大島を目指そうとしたところで、途中で通行止めとの標識が出ている。土砂崩れで道路が完全に無くなっているとの事。
 しかたないので、小さな峠を越え、浦田から室野を目指す事にした。200m程度登って、その後は下ると、15:05、浦田着。国道405号線を外れ、室野まで北上を始める。もう松代までは基本的に下りだけになる。
 途中、室野へ向かうのを止め、出来心で曲がってみた松之山までの脇道で、次に曲がる場所を間違えたり通行止めにやられたりして、ちょっとはまってしまった。厚い曇り空の下、必死に松代へ向かう。

 ようやく国道253号に出て、橋を渡るともう松代の町だ。16:10。10分オーバーで済んだ。酒が弱い私にとって、遅刻で飲まされるのは恐怖なのだ。何しろ奴等、未だにイッキ飲みを強制するのだ。たまらん。

 翌日は「曇り後晴」の天気予報が外れ、朝から雨になった。多少後ろ髪引かれる思いはあったが、予定を切り上げ、松代から輪行で帰路に着いた。

記 1999.7/23

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Last Update 2003.4/12
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