表紙 何度も北海道に持って行っているうちにぼろぼろになってしまった もう1冊買っておけば良かった 「独断と偏見」が時代を感じさせる(笑)が、ベスト20は説得力あり

とらべるまんの北海道

画像は全て
とらべるまんの北海道続版
(1985年7月6日 とらべるまん発行)
より転載

 もしあなたが若いなら、荷物を背中に担いで旅をしよう。
 ファッションブックから抜け出たような格好をして行っても、北海道は面白いところではないのです。夢ゆめ、バッグを片手にサンダルはいて車に乗って、などと考えないことです。いくつになってもできそうな旅は、もっと年をとってからにしましょう。今しかできない若い旅、それがここにはあるのです。
 さあ、自分の足で大地を踏みしめよう、これがとらべるまんの北海道なのです。(とらべるまんの北海道続版 巻頭より)

 「とらべる集団」の方々が、自分で訪れて印象的だった場所を、完全手書き・写真不使用・自費出版という手作りで纏めた、北海道旅行のガイドブックです。通称「とらべるまん」。

見やすい手書き地図、読みやすい手書き文字

 主に団体やグループでの旅行より、リュックを担いで列車やバスを乗り継ぎ、安宿・夜行列車に駅寝や野宿、というような、身軽で気ままな一人旅の観点から纏められています。紹介されている場所も、どこの店の食べ物がオイシイとか宿がいいとかの話ではなく、一人で訪れると北海道の広さ・自然の厳しさをより味わえるような所ばかり。
 しかし、要点を押さえた具体的な解説に素朴で中庸で親しみやすい文章、美しく読みやすい手書き文字、よく練られたわかりやすいイラストは、まだ訪れたことがない場所を豊かに、そして訪れた後にははっきりと鮮明にイメージさせてくれる説得力がありました。何しろもう20年前の本なので、JRが国鉄だったり、北海道ワイド周遊券やもう無くなってしまった宿など、多少現状にそぐわない箇所もあります。しかし、この本程読みやすく「行ってみたい!」と思わせる不思議な力を持つ旅行ガイドは、他に出会ったことがありません。

 正確にはこの本のタイトルは「続 とらべるまんの北海道」。実はこの続版の前に、少し判が大きい元祖?「とらべるまんの北海道」がありました。元祖盤と続版との関係は、サイズの縮小と縮小に伴う全面改訂とのこと。私が持っている「とらべるまん」は続版で、元祖版はどこかの宿で1度しか見たことがありません。
 しかし、元祖版・そして続版を通して、道内のいくつかのYHや旅人宿で売っていたこの本は、その内容の素晴らしさで、口コミで普及していったようです。私が「とらべるまん」に出会ったのは1985年、幌加内町朱鞠内の今は無き「しゅまりの宿」でしたが、1980年代前半ぐらいに、旅人宿などを利用して比較的ディープに北海道を旅行した人の間では、未だにこの本のことが語られることが多いようです。「とほ宿」宿主有志の方で出版された「なまら蝦夷」Vol.1には、この本への熱い思いが綴られていて、とても嬉しい気分になりました。

読者からのフィードバックもあり、座談会形式のまとめがまたわかりやすい

 前述のようにその後20年を経た現在、この本に載っている場所や宿のいくつかは多少様変わりしています。北海道の旅行者の主流は北海道ワイド周遊券による国鉄利用からバイクツーリングにスライドしました。あちこちのダート道道もほとんど舗装化され、国鉄ローカル線のほとんどが廃止されてしまいました。
 しかし、この本で語られている北海道の素晴らしさ、北海道でしか感じることが出来ないものは、あまり変わっていないように思います。

 「とらべるまん」はガイドブックという形になっていますが、「とらべるまん」が教えてくれたこと、それは「自分で考え、自分の感性で楽しむ」ということではないかと思います。そしてそれこそ北海道旅行者に特有の一人旅、そして私自身の「旅」の重要な部分であることに、最近ようやく気が付きました。

記 2005/2/3

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Last Update 2007/1/20
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